平成27年度(第110回)医師国家試験問題|午後61問〜午後80問
第110回国家試験 D28
78歳の男性。前胸部痛を主訴に来院した。胸痛は1時間前に朝食の準備をしていたところ突然生じ、前胸部から咽頭部、両頸部にかけての締め付けられる痛みで現在も持続している。高血圧症と脂質異常症で5年前から内服治療を継続している。意識は清明。身長166cm、体重72kg。体温36.8℃。脈拍40/分、整。血圧120/60mmHg。呼吸数18/分。SpO2 99%(room air)。心電図を別に示す。心電図検査の後から、突然の一過性の意識消失発作を繰り返すようになった。この時の心電図モニターの波形を別に示す。直ちに投与すべき薬剤はどれか。
第110回国家試験 D29
20歳の男性。持続する前胸部痛を主訴に来院した。2か月前から前胸部痛があった。自宅近くの診療所を受診したところ、胸部異常陰影を指摘されたため紹介されて受診した。身長175cm、体重62kg。体温36.3℃。脈拍60/分、整。血圧106/78mmHg。呼吸数14/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。12誘導心電図に異常を認めない。胸部エックス線写真と胸部造影CTとを別に示す。血液検査で有用性が低いのはどれか。
第110回国家試験 D30
2か月の乳児。意識障害のため救急車で搬入された。在胎 40週、3,100 gにて出生した。出生後からこれまで哺乳力は良好であった。30分前にけいれんが起こり、その後ぐったりしたため母親が救急車を要請した。来院時、自発運動は乏しいが痛み刺激には反応する。 身長 60 cm、体重 5.0 kg。体温 37.0 ℃。脈拍 128/分、整。呼吸数 36/分。SpO2 98%(マスク 5L/分 酸素投与下)。眼球結膜と皮膚とに黄染を認める。 血液所見:赤血球 435万、白血球 11,200、血小板 21万、PT 65%(基準 80~120)、APTT 60秒(基準 32.2)、ヘパプラスチンテスト低下。血液生化学所見:総ビリルビン8.5mg/dL、直接ビリルビン 3.5 mg/dL、AST 58 U/L、ALT 34 U/L。頭部CTで多発性の脳出血を認めた。 考えられる疾患はどれか。
第110回国家試験 D31
34歳の女性。労作時の息切れと易疲労感とを主訴に来院した。1か月前から、階段昇降時に息切れと疲労感とを自覚するようになった。その後、症状が続くため心配になって受診した。 意識は清明。体温 36.1 ℃。脈拍 64/分、整。血圧 110/76 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 97%(room air)。左の鎖骨上窩に径 1cmのリンパ節を3個触知する。胸部の聴診でⅢ音を聴取するが、呼吸音に異常を認めない。眼所見と神経学的所見とに異常を認めない。 血液所見:赤血球 512万、Hb 14.6 g/dL、白血球 3,900、血小板 28万。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、AST 27 U/L、ALT 42 U/L、LD 151 U/L (基準 176~353)、CK 37 U/L(基準 30~140)、クレアチニン 0.9 mg/dL、Ca 9.8 mg/dL、P 4.5 mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.1 mg/dL、抗核抗体陰性、ACE 41.2 U/L(基準 8.3~21.4)、可溶性IL-2受容体 726 U/mL(基準 550以下)。胸部エックス線写真で両側の肺門リンパ節の腫脹を認める。心電図は洞調律で心拍数 68/分、不完全右脚ブロックを認める。心エコーで左室拡張末期径64mm、左室駆出率 34%、左室壁厚は中隔、後壁とも 9 mmで心室中隔基部の菲薄化を認める。左の鎖骨上リンパ節の生検組織のH-E染色標本を別に示す。 この患者で、心不全の治療とともに行うべきなのはどれか。
第110回国家試験 D32
26歳の女性。2週前から動悸が続くことを主訴に来院した。階段昇降時に息切れが出現する。喘息の既往はない。体温37.3℃。脈拍120/分、整。血圧158/60mmHg。頸部に弾性硬のびまん性の甲状腺腫を認める。甲状腺に圧痛はない。心音に異常を認めない。赤沈15mm/1時間。血液所見:赤血球420万、Hb 13.0g/dL、Ht 42%、白血球6,000。血液生化学所見:TSH 0.1μU/mL (基準0.2~4.0)、FT4 4.6ng/dL (基準0.8~2.2)、TRAb 1.0IU/L (基準1.0以下)。CRP 0.2mg/dL。心電図は洞頻脈。胸部エックス線写真で心胸郭比は42%、肺野に異常を認めない。99mTcO4-甲状腺シンチグラムを別に示す。治療薬として適切なのはどれか。
第110回国家試験 D33
救急隊から患者受入要請があった。傷病者は30歳の男性。マンホールに入って作業を開始し、数分してから意識を失って倒れた。同僚が命綱を引っ張って救助したが意識はない。救急隊の接触時、意識レベルはJCSⅢ-300。体温36.0℃。脈拍80/分、整。血圧120/80mmHg。呼吸数8/分。SpO2 100%(リザーバー付マスク10L/分酸素投与下)。けいれんや不随意運動はないという。作業現場は乾燥しており着衣に液体や固体による汚染はない。倒れた原因を現場で調査中である。患者の病院到着時にまず行うべきなのはどれか。
第110回国家試験 D34
35歳の男性。1か月前の職場の健康診断で血液検査の異常を指摘されて来院した。自覚症状はないが、最近は仕事が忙しく睡眠不足気味であった。既往歴に特記すべきことはない。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。血液所見:赤血球478万、Hb 14.7g/dL、Ht 45%、白血球7,300、血小板21万。血液生化学所見:総蛋白7.5g/dL、アルブミン4.2g/dL、ハプトグロビン45mg/dL(基準19~170)、総ビリルビン2.9mg/dL、直接ビリルビン 0.5 mg/dL、AST 21 U/L、ALT 16 U/L、LD 290 U/L (基準176~353)、ALP 238 U/L(基準115~359)、γ-GTP 22 U/L(基準8~50)、クレアチニン0.7mg/dL、尿酸5.9mg/dL、血糖98mg/dL。HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。腹部超音波検査で異常を認めない。対応として適切なのはどれか。
第110回国家試験 D35
51歳の男性。左の下腹部から側腹部にかけての痛みを主訴に来院した。昨日、仕事中に左背部に軽度の痛みが出現したが30分ほどで軽快した。本日午前8時ころ、出勤途中の電車の中で、突然、左の下腹部から側腹部にかけての強い痛みが出現したため受診した。来院の途中に悪心と嘔吐があった。意識は清明。体温36.3℃。血圧158/94mmHg。顔色は蒼白で冷汗を認める。腹部に反跳痛を認めない。左の肋骨脊柱角に叩打痛を認める。尿所見:蛋白1+、糖(-)、潜血3+、沈渣に赤血球15~30/1視野、白血球1~4/1視野。血液所見:赤血球460万、Hb 14.6g/dL、Ht 46%、白血球8,300、血小板22万。血液生化学所見:総蛋白7.1g/dL、アルブミン3.8g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、AST 35IU/L、ALT 32IU/L、LD 186IU/L(基準176~353)、γ-GTP 45IU/L(基準8~50)、尿素窒素23mg/dL、クレアチニン1.2mg/dL、尿酸8.6mg/dL、血糖92mg/dL、Na 136mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 109mEq/L、Ca 9.2mg/dL。CRP 1.2mg/dL。腹部超音波検査で左水腎症、左腎結石および左尿管結石を認める。腹部単純エックス線写真と腹部単純CTとを別に示す。この患者で予測される結石成分はどれか。
第110回国家試験 D36
56歳の女性。右耳の聴力低下と歩行障害とを主訴に来院した。4年前から右の聴力低下を自覚し、次第に増悪していた。半年前からは歩行障害を自覚し次第に増悪してきたため受診した。意識は清明。体温36.2℃、脈拍72/分、整。血圧132/78mmHg。呼吸数18/分。右耳の聴力低下を認め、Weber試験では左に偏位し、Rinne試験は左右ともに陽性である。右小脳性運動失調を認め、腱反射は正常でBabinski徴候は認めない。骨条件の頭部CT、頭部造影MRI及び手術により摘出した組織のH-E染色標本を別に示す。診断はどれか。
第110回国家試験 D37
58歳の男性。左眼の視野狭窄を主訴に来院した。喘息と閉塞性動脈硬化症に対し内服治療中である。視力は右0.1(1.2×-3.5D)、左0.1(0.9×-4.5D)。眼圧は右24mmHg、左29mmHg。角膜は両眼とも清明で平滑である。前房は深く、清明である。両眼の眼底写真と視野検査の結果とを別に示す。治療として適切な点眼薬はどれか。
第110回国家試験 D38
72歳の女性。左股関節痛と歩行困難とを主訴に来院した。3年前から左股関節痛を自覚し、最近、痛みが強くなり跛行を伴うようになってきたため受診した。股関節部に外傷歴はない。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。身長152cm、体重65kg。体温36.2℃。脈拍72/分、整。下肢長は右75cm、左73cmである。股関節エックス線写真正面像を別に示す。最も考えられる疾患はどれか。
第110回国家試験 D39
23歳の女性。右下腹部痛のため救急車で搬入された。2時間前に右下腹部痛が突然出現した。病院到着時には右下腹部痛の強さは発症時に比べ半減していた。意識は清明。体温36.7℃。脈拍92/分、整。血圧110/82mmHg。呼吸数14/分。SpO2 96%(room air)。内診で右付属器に径6cmの腫瘤を触知し圧痛を認める。子宮と左付属器とに異常を認めない。尿妊娠反応は陰性である。経腟超音波像を別に示す。この患者への対応として適切なのはどれか。
第110回国家試験 D40
68歳の男性。労作時の前胸部圧迫感を主訴に来院した。半年前から早足で歩くときなどに前胸部圧迫感を自覚していた。症状は咽頭部から顎にかけての詰まる感じを伴うが、安静により3分程度で良くなるので医療機関は受診していなかった。3週前から軽労作でも症状が生じるようになり、生活が制限されるようになってきた。今朝8時には、朝食後に症状が出現し10分程度続いた。同時に一過性の眼前暗黒感も生じたため受診した。 意識は清明。身長 168 cm、体重 68 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 76/分、整。血圧 150/88 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 98%(room air)。胸部の聴診でⅡ音の奇異性分裂、Ⅲ音およびⅣ音を認め、胸骨右縁第2肋間を最強点とするⅣ/Ⅵの収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部に異常を認めない。 血液所見:赤血球443万、Hb 14.4g/dL、Ht 41%、白血球 4,800、血小板 14万。血液生化学所見:総蛋白 7.2 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、総ビリルビン 1.2 mg/dL、AST 56 U/L、ALT 48 U/L、LD 222 U/L (基準 176~353)、ALP 356 U/L(基準 115~359)、γ-GTP 50 U/L(基準 8~50)、アミラーゼ 118 U/L(基準 37~160)、尿素窒素 18 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL。Na 138 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 102 mEq/L。CRP 0.3 mg/dL。胸部エックス線写真で左第1弓の軽度の突出を認める。心電図は心拍数78/分の洞調律で左室高電位の所見を認める。呼吸機能検査で異常を認めない。 次に行うべき検査はどれか。
第110回国家試験 D41
75歳の女性。物忘れを主訴に夫に連れられて来院した。2年前から物忘れが目立つようになり、何度も同じことを尋ねるようになった。買い物で同じ物を買ってくることがあり、そのことを指摘しても適当にはぐらかすようになった。また料理も簡単なものしか作らなくなり、心配した夫に連れられて受診した。大学卒業後、市役所に勤務し、60歳で定年退職した。その後、地域の婦人会活動を活発に行っていたが、最近は外出することがほとんどない。既往歴に特記すべきことはない。診察時、疎通性は比較的良好であるが、時間と場所の見当識障害がみられる。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは11点(30点満点)である。その他の神経学的所見に異常を認めない。血液生化学所見に異常を認めない。頭部MRIで両側海馬の萎縮を認める。この患者に対する治療薬として適切なのはどれか。
第110回国家試験 D42
29歳の女性。3か月前から無月経となったため来院した。2年前と6か月前とに稽留流産のため子宮内容除去術を受けていた。内診で子宮の大きさは正常で可動性は良好である。経腟超音波検査で卵巣に異常を認めない。乳汁分泌を認めない。基礎体温は二相性である。妊娠反応は陰性である。子宮卵管造影像を別に示す。患者は早期の妊娠を希望している。適切な治療はどれか。
第110回国家試験 D43
72歳の女性。咳嗽を主訴に来院した。1か月前から咳嗽が出現し、自宅近くの診療所で投薬を受けたが改善しないため受診した。喫煙は20本/日を50年間。身長150cm、体重50kg。体温36.5℃。脈拍72/分、整。血圧104/80mmHg。呼吸数18/分。SpO2 94%(room air)。呼吸音は右側でやや減弱している。血液所見:赤血球422万、白血球8,800、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白6.8g/dL、アルブミン3.2g/dL、総ビリルビン1.1mg/dL、AST 28IU/L、ALT 16IU/L、ALP 320IU/L(基準115~359)、γ-GTP 23IU/L(基準8~50)。来院時の胸部エックス線写真、胸部造影CT及び気管支鏡下に行った穿刺細胞診を別に示す。PET/CTでは胸腔内以外に異常を認めない。適切な治療はどれか。
第110回国家試験 D44
23歳の男性。行動の異常を心配した家族に連れられて来院した。6か月前に大学を卒業し就職した。3か月前から遅刻が目立つようになり、休みがちとなった。1か月前からは、1日中自室に閉じこもるようになった。1週前から誰かと話しているような独り言がみられ、さらに「誰かに見張られている」「数人が自分の悪口を言い合っている」とおびえるようになった。夜間眠らず、部屋の中を動き回るようになったため家族に連れられて受診した。意識は清明。神経学的所見に異常を認めない。血液生化学所見に異常を認めない。治療薬として適切なのはどれか。
第110回国家試験 D45
70歳の男性。傾眠状態と見当識障害のために、かかりつけの診療所から紹介されて来院した。4か月前から食道癌に対して抗癌化学療法を行っており、1か月前からはバソプレシン拮抗薬も併用していた。この数日は全身倦怠感と食欲不振があるため、かかりつけの診療所で点滴を受けていたが、傾眠状態と見当識障害が出てきたため紹介されて受診した。問いかけに応答はできるが反応は遅く内容は必ずしも適切でない。身体所見に異常を認めない。尿所見:比重1.012、蛋白(-)、糖(-)。血液生化学所見:アルブミン3.9g/dL、尿素窒素11mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、尿酸1.3mg/dL、血糖90mg/dL、Na 119mEq/L、K 4.0mEq/L、Cl 87mEq/L、Ca 9.6mg/dL。この患者にまず行うべき対応はどれか。
第110回国家試験 D46
77歳の男性。易転倒性と認知症とを主訴に来院した。1年前から歩行速度が遅くなっていた。1か月前から転倒や物忘れも出てきたため、心配した家族に連れられて受診した。意識は清明。体温36.4℃。脈拍72/分、整。血圧148/82mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98%(room air)。Mini-Mental State Examination(MMSE)は22点(30点満点)。上下肢の筋力と腱反射とに異常を認めない。病的反射と感覚障害とを認めない。歩行はすり足、小刻みで、歩隔は広い。頭部MRIのT1強調冠状断像を別に示す。治療として適切なのはどれか。
第110回国家試験 D47
55歳の女性。数日前から右耳痛があり、今朝から右顔面神経麻痺とめまいが出現したため来院した。身長160cm、体重52kg。体温36.8℃。両側の鼓膜に異常を認めない。血液所見:赤血球420万、白血球6,000。CRP 0.3mg/dL。オージオグラムでは右耳に中等度の感音難聴を認める。初診時の右耳介の写真を別に示す。その他に神経症状を認めない。患者への説明として正しいのはどれか。