平成29年度(第112回)医師国家試験問題|午後-99問〜午後-80問

第112回国家試験 A21

78歳の男性。4日前に肺癌のため右上葉切除術およびリンパ節郭清術を受けて入院中である。術後経過は順調だが、胸腔ドレーンはわずかな空気漏れがあり排液はやや血性のため留置している。昨日からせん妄症状がみられている。本日午後9時に患者は就寝していたが、2時間後には覚醒しており胸腔ドレーンが抜けていた。呼吸音に変化はみられず、直ちに胸部エックス線撮影を行ったが、日中に撮影した画像と比較して変化はみられない。SpO2 99%(鼻カニューラ2L/分 酸素投与下)であり、胸腔ドレーン抜去前と比較して低下はみられない。 行うべき処置はどれか。

第112回国家試験 A22

75 歳の男性。頭部の皮疹を主訴に来院した。皮疹は3か月前に同部位を打撲した後に出現し、徐々に拡大して、わずかな刺激で出血するようになってきた。頭部の写真を示す。 この疾患について正しいのはどれか。

第112回国家試験 A23

71歳の女性。発熱と下腿浮腫とを主訴に来院した。65歳時から2型糖尿病のため自宅近くの医療機関に通院中である。これまで網膜症は指摘されていない。1か月前から37℃台の微熱があり、両側の下腿浮腫を自覚するようになった。かかりつけ医で血尿と蛋白尿とを指摘され、精査のために紹介されて受診した。 体温37.6 ℃。脈拍92/分、整。血圧146/88 mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98% (roomair)。心音と呼吸音とに異常を認めない。両側の下腿に浮腫と網状皮斑とを認める。左下腿の温痛覚の低下を認める。 尿所見:蛋白3+、潜血3+、沈渣に赤血球50〜100/1視野、白血球10〜20/1視野、赤血球円柱を認める。血液所見:赤血球324万、Hb10.0 g/dL、Ht31%、白血球10,300 (桿状核好中球20 %、分葉核好中球 52%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 3%、リンパ球22%)、血小板 22万。血液生化学所見:総蛋白 6.0 g/dL、アルブミン 2.3 g/dL、尿素窒素 40 mg/dL、クレアチニン 2.5 mg/dL、血糖 98 mg/dL、HbA1c 5.8 %(基準4.6〜6.2)、Na 138 mEq/L、K 5.0 mEq/L、Cl 100 mEq/L。免疫血清学所見:CRP 6.5 mg/dL、リウマトイド因子<RF>陰性、抗核抗体陰性、MPO-ANCA 84 U/mL(基準 3.5 未満)、PR3-ANCA 3.5 U/mL未満(基準 3.5 未満)。胸部エックス線写真で異常を認めない。腎生検のPAS染色標本を示す。 この患者でまず行うべき治療はどれか。

第112回国家試験 A24

69歳の男性。全身倦怠感と食欲不振とを主訴に来院した。2年前に進行胃癌のため胃全摘術を受けた。その後受診をしなかったが、3か月前から倦怠感を自覚し、最近食欲不振が増強して食事摂取量が平常時の1/3以下となったため、不安になり受診した。 身長170cm、体重45kg。体温36.2℃。脈拍80/分、整。血圧130/70mmHg。呼吸数14/分。胸部エックス線写真で多発肺転移を認め、腹部CT及び超音波検査で多発肝転移と軽度の腹水貯留とを認めた。悪心、嘔吐、呼吸困難および疼痛を認めず、患者と家族は在宅医療を希望している。 今後の方針として適切なのはどれか。

第112回国家試験 A25

25歳の男性。歩行障害を主訴に来院した。13歳ごろから、重いカバンを持ったときやタオルを強く絞ったときに手を離しにくいことに気付いていたが、運動は問題なくできていた。20歳ごろからペットボトルのふたを開けにくいと感じるようになった。半年前から歩き方がおかしいと周囲から指摘されるようになったため受診した。父方の従兄弟に同様の症状を示す者がいる。 意識は清明。身長172cm、体重62kg。体温36.2℃。脈拍92/分、整。血圧112/72mmHg。呼吸数24/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側の側頭筋と胸鎖乳突筋は軽度萎縮している。両下肢遠位筋は萎縮しており、筋力は徒手筋力テストで3である。四肢の腱反射は低下しており、病的反射を認めない。 血液所見:赤血球 493 万、Hb 14.2 g/dL、Ht 44 %、白血球 5,900、血小板 16 万。血液生化学所見:総蛋白 6.8 g/dL、アルブミン 4.1 g/dL、AST 40 U/L、ALT 49U/L、LD 282 U/L (基準 176〜353)、CK 528 U/L(基準 30〜140)、血 糖 103mg/dL、HbA1c 6.2 % (基準 4.6〜6.2)、Na 142 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 103mEq/L。CRP 0.2 mg/dL。この患者の母指球をハンマーで叩打する前後の写真を示す。叩打後、この肢位が数秒間持続した。 この所見はどれか。

第112回国家試験 A26

67歳の女性。不眠を主訴に来院した。1か月前から夜になると両足に虫が這うような不快な感覚を自覚していた。この不快感は安静にしていると増強するが、足を動かすことで軽減する。かかりつけ医からは経過をみるように言われたが良くならず、足を動かしたい欲求が強く寝つけなくなり受診した。 四肢の筋トーヌスは正常で筋力低下を認めない。腱反射は正常で、Babinski徴候は陰性である。感覚障害と小脳性運動失調とを認めない。歩行に支障はなく、日常生活動作にも問題はない。血液生化学検査では血清フェリチンを含めて異常を認めない。 適切な治療薬はどれか。

第112回国家試験 A27

30歳の女性。下腹部痛を主訴に来院した。3日前、左下腹部の痛みで目覚めた。その後、同じ強さの痛みが持続したため本日(月経周期の 17 日目)受診した。今朝から痛みは軽減している。悪心と嘔吐はない。 4週間前に受けた婦人科健診では子宮と卵巣とに異常を指摘されなかったという。最終月経は17日前から5日間。月経周期は 28 日型、整。 身長 160 cm、体重 52 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 108/68 mmHg。呼吸数 18/分。腹部は平坦、軟で、筋性防御を認めない。内診で左卵巣に軽い圧痛を認める。子宮と右卵巣には異常を認めない。 血液所見:赤血球 380 万、Hb 10.4 g/dL、Ht 31 %、白血球 5,800、血小板 16 万。血液生化学所見:総蛋白 7.3 g/dL、アルブミン4.3 g/dL、総ビリルビン 0.3 mg/dL、AST18 U/L、ALT 16 U/L、LD 195 U/L(基準 176〜353)、尿素窒素 18 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL。CRP 0.3 mg/dL。妊娠反応陰性。左卵巣の経腟超音波像を示す。 適切な対応はどれか。

第112回国家試験 A28

25歳の女性。呼吸困難を主訴に来院した。5日前から 38 ℃前後の発熱、咽頭痛、上腹部痛および食欲低下があり、3日前に自宅近くの診療所で感冒に伴う胃腸炎と診断され総合感冒薬と整腸薬とを処方されたが症状は改善しなかった。昨夜から前胸部不快感が出現し、本日、呼吸困難が出現したため受診した。既往歴に特記すべきことはない。妊娠歴はない。最終月経は2週間前。 意識は清明だが表情は苦悶様。体温 36.8 ℃。脈拍 92/分、整。血圧 72/48 mmHg。呼吸数 36/分。SpO2 82%(room air)。四肢末梢の冷感を認める。口唇にチアノーゼを認める。頸静脈の怒張を認める。心音にⅢ音とⅣ音とを聴取する。呼吸音は両側で wheezes と coarsecrackles とを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 血液所見:赤血球 482 万、Hb 14.1 g/dL、Ht 41 %、白血球 14,200、血小板 17 万。血液生化学所見:総蛋白 6.4 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、総ビリルビン 1.1 mg/dL、AST 519U/L、ALT 366 U/L、LD 983 U/L(基準 176〜353)、CK 222 U/L (基準 30〜140)、尿素窒素 23 mg/dL、クレアチニン 1.0 mg/dL、血糖 199 mg/dL、Na 128 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 99 mEq/L。CRP 2.1 mg/dL。心筋トロポニン T 陽性。動脈血ガス分析(room air):pH 7.32、PaCO2 20 Torr、PaO2 55 Torr、HCO3 10 mEq/L。仰臥位のポータブル胸部エックス線写真、心電図及び心エコー図を示す。 最も可能性の高い疾患はどれか。

第112回国家試験 A29

3歳の女児。3歳児健康診査で眼位異常を指摘されて来院した。視力は右 0.1(0.4×+1.0D)、左 1.0(矯正不能)。調節麻痺薬点眼による屈折検査では右+4.5D、左+3.0 D であった。神経学的所見に異常を認めない。眼位の写真を示す。 まず行うべき対応はどれか。

第112回国家試験 A30

5歳の男児。頭痛と嘔吐とを主訴に両親に連れられて来院した。1か月前から徐々に歩行がふらつくようになった。1週間前から頭痛と嘔吐が出現した。頭痛は早朝起床時に強いという。嘔吐は噴射状に起こるが、嘔吐後、気分不良はすぐに改善し飲食可能となる。 意識は清明。体温 36.2 ℃。脈拍 92/分、整。血圧 116/78mmHg。呼吸数 20/分。CT検査のできる総合病院への紹介を検討している。 緊急度を判断するために当院でまず行うべき検査はどれか。

第112回国家試験 A31

64歳の女性。右眼の充血と複視とを主訴に来院した。2週間前から症状を自覚していた。意識は清明。体温 36.4 ℃。脈拍 76/分、整。血圧 124/82 mmHg。呼吸数 16/分。右外転神経麻痺を認める。右眼窩外側縁で血管性雑音を聴取する。両眼部の写真、頭部 MRI の T1 強調像及び右内頸動脈造影側面像を示す。 適切な治療はどれか。

第112回国家試験 A32

7歳の女児。3歳でオムツが取れたにもかかわらず、下着が常に少し濡れていることを主訴に来院した。本人は「お漏らしはしていない」と言う。静脈性尿路造影では両側に完全重複腎盂尿管を認める。膀胱鏡検査で右側に2個、左側に1個の尿管口を認める。 尿失禁の原因はどれか。

第112回国家試験 A33

60歳の女性。血便と腹痛とを主訴に来院した。以前から便秘がちで、最後の排便が5日前であった。2日前から腹痛を伴うようになり、新鮮血の排泄が数回あったために受診した。脂質異常症と糖尿病とで治療中である。 体温 36.7 ℃。脈拍92/分、整。血圧 126/84 mmHg。眼瞼結膜に貧血を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腹部に圧痛を認める。 血液所見:赤血球 430 万、Hb 13.1g/dL、Ht 39 %、白血球 8,700、血小板 19 万。CRP 1.2 mg/dL。下部消化管内視鏡検査を施行した。S状結腸の内視鏡像を示す。 対応として適切なのはどれか。

第112回国家試験 A34

2歳の男児。入浴中に左右の陰囊の大きさが違うのに気付いた母親に連れられて来院した。痛がることはないという。外陰部の外観と右陰囊にペンライトを当てたときの写真を示す。 母親に対する説明で正しいのはどれか。 《陰部画像:掲載不可》透光性のある陰嚢腫大

第112回国家試験 A35

68歳の男性。右頰部の腫脹を主訴に来院した。1年半前に右上顎癌と診断され、上顎部分切除術と放射線治療とを行い腫瘍は消失した。2週間前から右頰部が腫脹し、軽度の疼痛と違和感とを自覚した。これまでに副鼻腔炎の既往はない。喫煙は20 本/日を 48 年間。飲酒は機会飲酒。 身長 165 cm、体重 48 kg。体温 36.8 ℃。尿所見に異常を認めない。血液所見:赤血球 430 万、白血球 7,800、血小板 15 万。CRP 0.5 mg/dL。顔面の写真及び頭部 MRI の水平断像と冠状断像とを示す。 最も考えられるのはどれか。

第112回国家試験 A36

10歳の女児。血便を主訴に父親と来院した。6日前に家族と焼肉を食べに行った。3日前から水様下痢が出現し、昨日からは血便になり激しい腹痛を自覚するようになったため受診した。 身長 135 cm、体重 32 kg。体温 37.2 ℃。脈拍 84/分、整。血圧 120/70 mmHg。血液所見:赤血球 250 万、Hb 8.2 g/dL、Ht 25 %、白血球 9,000(桿状核好中球 10 %、分葉核好中球 70 %、リンパ球 20 %)、血小板 8.0 万。末梢血塗抹 May-Giemsa 染色標本を示す。 この患者が合併しやすいのはどれか。

第112回国家試験 A37

49歳の男性。高熱を主訴に来院した。3日前からの発熱、咳嗽および膿性痰のために受診した。既往歴に特記すべきことはない。 意識は清明。体温 39.5 ℃。脈拍 116/分、整。血圧 128/82 mmHg。呼吸数 24/分。右肺に coarse crackles を聴取する。血液所見:白血球 19,200(桿状核好中球4%、分葉核好中球84%、単球2%、リンパ球10%)。 血液生化学所見:AST 48 U/L、ALT 42 U/L。CRP 19.8mg/dL。腎機能は正常である。胸部エックス線写真で右下肺野に浸潤影を認める。急性肺炎と診断し、入院させてスルバクタム・アンピシリン合剤の投与を開始することにした。 1日の投与量を同一とした場合、この患者に対する投与方法として最も適切なのはどれか。

第112回国家試験 A38

46歳の男性。全身の痒みを伴う皮疹を主訴に来院した。3か月前から大腿、陰部および手に痒みを伴う皮疹が出現した。自宅近くの診療所で抗ヒスタミン薬と副腎皮質ステロイド外用薬とを処方されたが効果はなく、皮疹が徐々に拡大してきたため受診した。高齢者施設の介護職員。受診時、陰部を含む全身に鱗屑を伴う丘疹が多発していた。陰部と手背の写真及び手掌のダーモスコピー像を示す。 対応として適切なのはどれか。 《陰部画像:掲載不可》鱗屑を認める陰部画像

第112回国家試験 A39

56歳の男性。肝臓の腫瘤性病変の精査のため入院中である。C型肝炎の経過観察中に行った腹部超音波検査で肝臓に腫瘤性病変が見つかったため入院した。入院後に腹部造影 CT を施行したところ、入院時 1.1 mg/dL であった血清クレアチニン値が造影検査後日目に 3.0 mg/dL に上昇した。入院後に新たな薬剤投与はなく、食事は毎日全量摂取できており、体重は安定していた。体温、脈拍、血圧、呼吸数ともに正常範囲で、排尿回数も5、6回/日で変わらなかった。 造影検査後2日目の検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)、沈渣に赤血球1〜4/1視野、白血球1〜4/1視野。血液所見:赤血球 302 万、Hb 10.4g/dL、Ht 31 %、白血球 4,600、血小板 16 万。血液生化学所見:総ビリルビン 1.4mg/dL、直接ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 45 U/L、ALT 62 U/L、LD 360 U/L(基準 176〜353)、ALP 380 U/L(基準 115〜359)、γ-GTP 110 U/L(基準8〜50)、尿素窒素 43 mg/dL、クレアチニン 3.0 mg/dL、尿酸 8.8 mg/dL、Na 136 mEq/L、K 5.2 mEq/L、Cl 100 mEq/L、Ca 8.2 mg/dL、P 6.2 mg/dL。CRP 0.3 mg/dL。腹部超音波検査では両腎に水腎症を認めない。 対応として正しいのはどれか。

第112回国家試験 A40

67 歳の男性。右上下肢の脱力を主訴に来院した。2週間前から右手で車のドアを開けることができない、歩行時に右足を引きずるなどの症状が徐々に進行したため受診した。 意識レベルはJCSⅠ-3。体温 36.2 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 142/80mmHg。呼吸数 16/分。右片麻痺を認める。 頭部造影MRI及び定位的脳生検術によって左前頭葉病変から採取した組織の H-E 染色標本と抗CD20抗体による免疫組織染色標本とを示す。FDG-PETでは脳以外に異常集積を認めない。 治療として適切なのはどれか。