平成29年度(第112回)医師国家試験問題|午後-79問〜午後-60問
第112回国家試験 A41
55 歳の女性。呼吸困難を主訴に来院した。1年前から左頸部の腫瘤を自覚していた。2か月前に呼吸困難が出現した。次第に増悪したため自宅近くの診療所を受診したところ、胸部エックス線写真で胸水を指摘され、左鼠径部にもリンパ節腫大を指摘されたため、紹介されて受診した。 身長 151 cm、体重 70 kg。体温 36.8 ℃。脈拍 92/分、整。血圧 130/102 mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 94 %(room air)。呼吸困難の原因は胸水貯留であると考え、入院の上、胸腔穿刺を行い胸水を排液した。呼吸困難は一時的に改善したが、 穿刺1時間後に強い呼吸困難と泡沫状の喀痰がみられ、SpO2 92 %(鼻カニューラ2L/分 酸素投与下)となった。 穿刺2時間後、症状はさらに悪化し、SpO2 85 %(マスク8L/分 酸素投与下)となったため気管挿管を行った。来院時と胸腔穿刺1時間後の胸部エックス線写真と胸部CTとを示す。 この患者に最も有効な呼吸管理はどれか。
第112回国家試験 A42
27歳の女性。突然起こる動悸や息苦しさを主訴に来院した。約1か月前、出勤時の電車内で突然、動悸と冷や汗が出始め次第に呼吸が荒くなり、「このまま窒息して死んでしまうのではないか」という恐怖感に襲われた。途中の駅で電車を降りたところ、症状は約 10 分で軽快した。以後も電車の中と自宅で1回ずつ同様の症状があった。心電図を含めた精査を行ったが、異常を認めない。どのような場所にいても「また症状が起きるのではないか」という心配が続いている。 このような心配が持続する症状はどれか。
第112回国家試験 A43
38 歳の女性。不妊を主訴に来院した。4年前に結婚し挙児を希望しているが、妊娠はしていない。6か月前に子宮卵管造影検査を受けたが、異常はなかった。5年前から月経痛があり、1年前から月経中に市販の鎮痛薬を服用している。月経周期は 38〜90 日、不整。持続は5日間。過多月経はない。 身長 164 cm、体重 54 kg。体温 36.8 ℃。脈拍 68/分、整。血圧 110/56 mmHg。腹部は平坦、軟。内診では、子宮は前傾後屈で正常大、可動性不良。Douglas窩に有痛性の硬結を触知する。右卵巣に有痛性の囊胞を触知する。経腟超音波検査では右卵巣囊胞の内部エコーは均一である。左卵巣に異常を認めない。右卵巣の経腟超音波像を示す。 治療として適切なのはどれか。
第112回国家試験 A44
54歳の男性。頭痛と視力低下とを主訴に来院した。2年前の冬にRaynaud現象が出現し、1年前に指先に潰瘍が出現したため皮膚科を受診し、全身性強皮症の診断を受けた。仕事が忙しくて半年間病院を受診していなかったが、頭痛と急な視力低下が出現したため来院した。脈拍 92/分、整。血圧 218/120 mmHg。四肢に皮膚硬化を認める。 尿所見:蛋白1+、潜血+。血液所見:赤血球 250 万、Hb 7.5g/dL、Ht 24 %、網赤血球 3.0 %、白血球 8,200、血小板5万。血液生化学所見:総蛋白 6.9 g/dL、総ビリルビン 2.0 mg/dL、AST 28 U/L、ALT 35 U/L、LD 610U/L(基準 176〜353)、尿素窒素 52 mg/dL、クレアチニン 4.5 mg/dL。眼底検査で視神経乳頭の浮腫を認める。末梢血塗抹標本で破砕赤血球を認める。 この患者で認められる所見はどれか。
第112回国家試験 A45
79歳の男性。胸部エックス線写真の異常陰影を指摘されて来院した。精査のために行った胸腹部造影3D-CTを示す。 この疾患に対する手術に際し、最も注意すべき合併症はどれか。
第112回国家試験 A46
60歳の女性。関節痛を主訴に来院した。週間前に 38 ℃台の発熱が出現したが、自宅近くの医療機関で解熱薬を処方され、数日で解熱した。1週間前に手指、手関節を中心とした多発関節痛が出現し、持続するため受診した。3週間前に同居している5歳の孫に発熱と顔面紅斑が出現していたという。体温 36.5 ℃。脈拍76/分、整。血圧 128/76 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。両手関節に圧痛を認める。 尿所見:蛋白(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 320 万、Hb 9.8g/dL、Ht 31 %、白血球 2,900(桿状核好中球 10 %、分葉核好中球 57 %、好酸球2%、好塩基球1%、単球3%、リンパ球 27 %)、血小板 12 万。血液生化学所見:AST 68 U/L、ALT 72 U/L、γ-GTP 98 U/L(基準8〜50)。免疫血清学所見:CRP0.5 mg/dL、リウマトイド因子(RF)陰性、抗核抗体 40 倍(基準 20 以下)、CH50 25U/mL(基準 30〜40)、C3 45 mg/dL(基準 52〜112)、C4 12 mg/dL(基準 16〜51)。 診断のために追加して聴取すべき情報として最も重要なのはどれか。
第112回国家試験 A47
25歳の男性。激しい頭痛のために救急車で搬入された。3年前から短時間の動悸を1日2、3回自覚するようになった。半年前、健診で血圧高値を指摘され、その頃から動悸が頻回に出現するようになり、頭痛、前胸部痛および手指の蒼白を伴うようになった。今朝から激しい頭痛があったため救急車を要請した。既往歴に特記すべきことはない。喫煙歴はなく、飲酒は機会飲酒。家族歴として母親に甲状腺髄様癌の罹患歴がある。 身長 174 cm、体重 52 kg。体温 37.5 ℃。心拍数 120/分、整。血圧 240/124 mmHg。四肢の冷感を認める。項部硬直や jolt accentuation を認めない。腹部超音波検査で左側腹部に径 12 cm の腫瘤影を認める。心エコー検査と頭部 CT とに異常を認めない。高血圧緊急症を疑い、カルシウム拮抗薬の点滴静注を行ったが、その後も頭痛と収縮期血圧が 200 mmHg 以上の高血圧および頻脈が持続している。 この時点の対応として正しいのはどれか。
第112回国家試験 A48
70歳の男性。健診で検査値の異常を指摘されたため来院した。1年前に脳梗塞の既往がある。 心音と呼吸音とに異常を認めない。肝・脾を触知しない。 血液所見:赤血球 468 万、Hb 13.9 g/dL、Ht 42 %、白血球 12,300(桿状核好中球 30 %、分葉核好中球 45 %、好酸球1%、好塩基球1%、単球6%、リンパ球 17 %)、血小板 253 万。染色体は正常核型である。末梢血塗抹 May-Giemsa 染色標本と骨髄生検の H-E 染色標本とを別に示す。 最も考えられるのはどれか。
第112回国家試験 A49
45歳の男性。歩行困難を主訴に来院した。2週間前の起床時に右足背に痛みを自覚し、その後、右足関節の背屈が困難になった。5日前から左手の示指と中指に痛みを伴うびりびり感が出現し、昨日から左足関節の背屈も難しくなったため受診し、入院となった。 意識は清明。身長 180 cm、体重 72 kg。体温 37.8 ℃。脈拍92/分、整。血圧 150/72 mmHg。呼吸数 14/分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。脳神経に異常を認めない。筋力は上下肢とも近位筋は正常、遠位筋では左右差のある筋力低下がみられた。四肢の腱反射は全般的に低下し、Babinski 徴候は陰性。左正中神経領域と右浅腓骨神経領域とに痛みを伴う感覚低下が観察された。小脳系に異常を認めない。髄膜刺激症候はない。 尿所見:蛋白1+、潜血1+、沈渣に赤血球 10〜20/1視野。血液所見:赤血球 352 万、Hb 11.8 g/dL、Ht 32%、白血球 12,500(桿状核好中球 10 %、分葉核好中球 63 %、好酸球1%、好塩基球1%、単球2%、リンパ球 23 %)、血小板 18 万。血液生化学所見:総蛋白 6.6g/dL、アルブミン 4.2 g/dL、尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン 1.7 mg/dL、血糖 96 mg/dL、HbA1c 5.2 %(基準 4.6〜6.2)、Na 136 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl99 mEq/L。免疫血清学所見:CRP 6.2 mg/dL、抗核抗体陰性、MPO-ANCA 62U/mL(基準 3.5 未満)、PR3-ANCA 3.5 U/mL 未満(基準 3.5 未満)。胸部エックス線写真で異常を認めない。入院翌日の夜に下血があり下部消化管内視鏡検査を施行したところ、上行結腸に潰瘍を認め、生検を行った。生検組織の H-E 染色標本を示す。 最も考えられるのはどれか。
第112回国家試験 A50
55歳の女性。黄疸を主訴に自宅近くの医療機関から紹介されて受診した。1年前に血便と腹痛が出現し、大腸内視鏡検査によって潰瘍性大腸炎と診断された。まず副腎皮質ステロイドを投与されたが、効果不十分のため6か月前から抗 TNF-α抗体製剤の投与が開始された。1か月前の前医受診時には血便と腹痛はなく、肝機能検査は正常で黄疸もなかったが、1週間前に黄疸が出現した。飲酒は機会飲酒。この6か月間で抗 TNF-α 抗体製剤以外、新たに開始された薬剤はない。母親と兄がB型肝炎ウイルスのキャリアである。 意識は清明。身長 152 cm、体重 45 kg。体温 36.3 ℃。脈拍 64/分、整。血圧 116/60 mmHg。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に軽度の黄染を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛を認めない。下肢に浮腫を認めない。 血液所見:赤血球 325 万、Hb 11.6 g/dL、Ht31 %、白血球 4,300、血小板 17 万、PT-INR 1.2(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白 6.3 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、総ビリルビン 4.7 mg/dL、直接ビリルビン 3.5 mg/dL、AST 1,236 U/L、ALT 1,202 U/L、ALP 352 U/L (基準115〜359)、γ-GTP 75 U/L(基準8〜50)。1年前の大腸内視鏡検査施行時にはHBs 抗原陰性、HCV 抗体陰性であったという。 診断を確定するために最も重要な血液検査項目はどれか。
第112回国家試験 A51
16歳の男子。呼吸困難のため救急車で搬入された。本日、昼食にパンを食べた後、体育の授業で長距離走をしている最中に全身の痒み、蕁麻疹と呼吸困難が出現したため、養護教諭が救急車を要請した。学校の部活動でサッカーをしているが、練習中や試合中に同様の症状を呈したことはない。また昼食で食べたパンはこれまでにも頻繁に食べているが、同様の症状を呈したことはない。 意識は清明。心拍数102/分、整。血圧 92/62 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 99 %(マスク5L/分 酸素投与下)。前胸部に膨疹を認める。喘鳴を聴取する。適切な治療の後、症状は改善した。 この患者の今後の生活指導として適切なのはどれか。
第112回国家試験 A52
41歳の男性。生石灰が主成分の薬品を用いた作業中に薬品を顔面に浴び来院した。矯正視力は両眼とも眼前手動弁。生理食塩液で持続洗眼を 10分間行って、涙液の pH を試験紙で測定したところ9であった。前眼部写真を示す。 次に行うべき対応はどれか。
第112回国家試験 A53
23歳の初産婦。妊娠 38 週日に陣痛発来のため入院した。これまでの妊娠経過は順調であった。午後0時に10分間隔の規則的な腹痛を自覚して受診した。 来院時の内診で子宮口は3cm開大、児頭下降度はSP±0cm、卵膜を触知した。経過観察をしていたところ午後3時に破水し、内診で子宮口は5cm 開大、児頭下降度は SP+2cm、2時方向に小泉門を触知した。この時点での胎児心拍数陣痛図を示す。 現時点での対応として適切なのはどれか。
第112回国家試験 A54
32歳の男性。左大腿の腫瘤を主訴に来院した。3か月前に径6cmの左大腿の腫瘤に気付き様子をみていたところ、増大して径10cm となったため受診した。これまでの健診で異常は指摘されていない。 意識は清明。身長 172 cm、体重 78 kg。体温 36.3 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 126/78 mmHg。胸腹部に異常を認めない。左大腿近位内側に弾性硬の腫瘤を触知するが、発赤、腫脹および圧痛はない。皮膚との可動性は良好だが、深部との可動性は不良である。血液生化学所見に異常を認めない。左大腿近位 MRI の T1 強調像と T2 強調像とを示す。 最も可能性が高いのはどれか。
第112回国家試験 A55
35歳の男性。アジ、イカなどの刺身を食べた後に出現した上腹部痛を主訴に来院した。生来健康である。 意識は清明。身長 170 cm、体重 66 kg。体温 36.1 ℃。脈拍 64/分、整。血圧 118/78 mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、心窩部に圧痛を認めるが、反跳痛と筋性防御とを認めない。便通に異常はない。緊急上部消化管内視鏡像を示す。 この疾患について正しいのはどれか。
第112回国家試験 A56
35歳の男性。腰痛を主訴に来院した。約半年前から左陰囊の腫大を自覚していたが、特に受診はしていなかった。1か月前から腰痛が出現したため受診した。 既往歴に特記すべきことはない。血液所見に異常を認めない。血液生化学所見:LD1,672 U/L(基準 176〜353)、hCG 1,962 mIU/mL(基準 1.0 以下)、α-フェトプロテイン(AFP)915 ng/mL(基準 20 以下)。来院時の陰囊の写真、肺野条件の胸部CT及び腹部造影CTを別に示す。 この患者にまず行うべきなのはどれか。 《陰嚢の写真は掲載不可》陰嚢の腫脹発赤の写真。
第112回国家試験 A57
48歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。同行した家人によると、3年前からかかりつけ医で2型糖尿病の内服治療を受けている。喫煙歴はないが、毎日缶ビール500 mLを1、2本程度飲むという。昨日は糖尿病の薬を普段通りに内服し、夕食時に缶ビール3本に加えて日本酒2合を飲んで就寝した。朝になっても起きてこないので家人が様子を見に行ったところ反応がおかしかったので救急車を要請した。 意識レベルは JCSⅡ-20。身長 170 cm、体重 81 kg。体温 35.7 ℃。心拍数 92/分、整。血圧 156/98 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 99 %(room air)。家人が持参してきていたお薬手帳を示す。 血糖に加えて、まず確認すべき血液検査項目はどれか。
第112回国家試験 A58
56歳の男性。4か月前から物忘れが目立ち始め、2か月前から怒りっぽくなったため心配した家人に連れられて受診した。 意識は清明。身長 172 cm、体重 56kg。体温 36.2 ℃。脈拍 68/分、整。Mini-Mental State Examination(MMSE)は 13点(30 点満点)で、検査中に数回にわたって「もうやめろ」という発言があった。瞳孔径は両側1mm で対光反射は消失、輻湊反射は保たれており、Argyll Robertson瞳孔を呈している。その他の脳神経に異常を認めない。筋力低下はない。腱反射は四肢で亢進し、Babinski徴候は両側陽性。感覚系と小脳系とに異常を認めない。髄膜刺激症候は陰性。 血液所見と血液生化学所見とに異常を認めない。脳脊髄液所見:初圧 270 mmH2O(基準 70〜170)、細胞数 58/mm3(基準0〜2)(単核球 100%)、蛋白 210 mg/dL(基準 15〜45)、糖 72 mg/dL(同時血糖 118 mg/dL)。 脳脊髄液の検査項目で追加すべきなのはどれか。
第112回国家試験 A59
60歳の男性。動悸を主訴に来院した。以前から時々脈が欠けるのを自覚していたが、症状が強くないので様子をみていた。2日前に熱めの湯船につかったところ、いつもとは違う持続する動悸を自覚した。動悸は突然始まり、脈を確認すると規則的ではなくバラバラに乱れて速く打つ感じだったという。洗い場の座椅子で休んでいたところ、約2分で症状は改善した。めまいや冷汗、眼前暗黒感などの症状は伴わなかった。このような症状は初めてで、その後繰り返すことはなかったが、家族が心配したため受診した。 既往歴に特記すべきことはない。体温 36.6 ℃。脈拍 68/分、整。血圧 142/88 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 98 %(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。 入浴時に生じた動悸の原因として最も可能性が高いのはどれか。
第112回国家試験 A60
68歳の男性。白血球数増加の精査を目的に来院した。 4年前から風邪をひきやすくなった。右頸部に径1.5cmのリンパ節1個と左肘部に径2cm のリンパ節1個とを触知する。脾を左肋骨弓下に4cm 触知する。 血液所見:赤血球 302 万、Hb9.2 g/dL、Ht 30 %、白血球 30,500(桿状核好中球3%、分葉核好中球3%、単球6 %、リンパ 球 88 %)、血小板19万。血液生化学所見:IgG 320 mg/dL(基 準960〜1,960)、IgA 34 mg/dL(基準 110〜410)、IgM 46 mg/dL(基準 65〜350)。末梢白血球表面抗原は CD5、CD20及びCD23が陽性である。血清蛋白電気泳動でM蛋白を認めない。末梢血塗抹May-Giemsa染色標本を示す。 最も考えられるのはどれか。