平成30年度(第113回)医師国家試験問題|午後-99問〜午後-80問
第113回国家試験 A21
69歳の女性。1か月前から徐々に右眼の視力低下を自覚したため来院した。視力は右 0.2 (0.4 × -0.5 D)、左 0.6 (1.2 × -0.75 D)。眼圧は右 13 mmHg、左 14 mmHg。右眼の眼底写真及び光干渉断層計<OCT>像を別に示す。 予想される自覚症状はどれか。
第113回国家試験 A22
50歳の男性。地震によって倒壊した家屋に半日間下敷きになっているところを救出され、救急車で搬入された。左下肢に広範な挫滅とうっ血を認める。意識は清明。心拍数 100/分、整。血圧 102/50 mmHg。血液検査結果は現時点で不明である。 直ちに行うべき治療として最も適切なのはどれか。
第113回国家試験 A23
68歳の男性。嗄声を主訴に来院した。右声帯固定を伴う喉頭腫瘍が存在し、右頸部にリンパ節転移が認められた。生検の結果、扁平上皮癌と診断され、放射線治療、喉頭全摘術および右頸部郭清術を施行した。術後の頸部の写真を別に示す。 正しいのはどれか。
第113回国家試験 A24
45歳の女性。発熱、咳嗽および呼吸困難を主訴に来院した。1週間前の7月初めに咳嗽が出現し、3日前から37 ℃台の発熱があり、昨日から呼吸困難も伴ったため受診した。3年前から毎年6月初旬から8月にかけて同様の症状を起こし、昨年も入院加療している。3年前から築25年のアパートに暮らしており、室内には趣味の観葉植物が多くあるという。 両側胸部に fine crackles を聴取し、胸部エックス線写真ではびまん性散在性粒状陰影を認める。Trichosporon asahii 特異抗体が陽性である。 この患者で認められる可能性が低いのはどれか。
第113回国家試験 A25
18歳の女子。普段と様子が違うことを心配した母親に連れられて来院した。昨日、以前から付き合っていた男性と別れることになったとつらそうな表情で号泣しながら帰宅した。2時間後に母親が声をかけると「お母さん、いつものお菓子作ってね」と普段と異なる幼児的な甘えた態度で訴えた。本人が帰宅した時のつらそうな様子について母親が尋ねても「何のこと」と答え、全く記憶していなかった。 神経診察を含めた身体診察に異常を認めない。血液検査、脳画像検査および脳波検査で異常を認めない。 この患者について正しいのはどれか。
第113回国家試験 A26
32歳の女性。めまいを主訴に来院した。今朝、耳掃除をしていたところ、子どもに後ろから抱きつかれ、右耳に耳かき棒が入った。聴力低下とぐるぐる回るめまいを自覚し、症状の改善がないため受診した。右耳鳴も持続している。右鼓膜に小さな孔を認め、聴力検査で右耳に軽度の聴力低下を認める。気導骨導差 10 dB。側頭骨CTで明らかな異常を認めない。 数日以内に出現した場合、緊急手術が必要となるのはどれか。
第113回国家試験 A27
60歳の男性。血尿を主訴に来院した。3か月前から時々血尿を自覚していたが、自然に消失していたため医療機関を受診していなかった。2日前から血尿が持続するため受診した。喫煙は20 本/日を40年間。飲酒は日本酒を1合/日。 身長 165cm、体重 62 kg。血圧 128/78 mmHg。尿所見は沈渣で赤血球多数/HPF、白血球 5〜10/HPF。膀胱鏡像を別に示す。 適切な治療はどれか。
第113回国家試験 A28
3歳の男児。生後1か月ころに心雑音を指摘され、心エコー検査で診断、経過観察されていた。シャント疾患の精査のために施行された心臓カテーテル検査の心腔内酸素飽和度を以下に示す。 上大静脈:82.5 %、下大静脈:87.8 %。右心房:92.9 %、右心室:91.3 %、肺動脈:92.8 %。左心房:98.9 %、左心室:98.5 %、大動脈:98.4 %。 最も考えられるのはどれか。
第113回国家試験 A29
73歳の男性。健診で胸部エックス線写真の異常陰影を指摘されて受診した。65歳から高血圧症で内服治療中。喫煙歴は 20 本/日を 50 年間。気管支内視鏡下擦過細胞診で腺癌と診断された。FDG-PET では腫瘤に一致して集積を認める。他の部位には異常集積を認めない。胸部エックス線写真 正面及び胸部CTを別に示す。 治療方針を決定するために行うべき検査はどれか。
第113回国家試験 A30
62歳の男性。血尿を主訴に来院した。1週間前に家族から顔が黄色いと言われ、同時期に血尿に気付いた。3日前から尿の赤みが増し、倦怠感もあるため受診した。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。 脈拍 84/分、整。血圧 132/80 mmHg。眼瞼結膜は貧血様であり、眼球結膜に黄染を認める。胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血 3+、沈渣でヘモジデリンを認める。血液所見:赤血球 176万、Hb 7.0 g/dL、Ht 19%、網赤血球 7%、白血球 7,800 (桿状核好中球 10%、分葉核好中球 70%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 6%、リンパ球 12%) 、血小板 22 万、PT-INR 1.3 (基準 0.9〜1.1) 、APTT 37.7 秒 (基準対象 32.2)、血漿フィブリノゲン 377 mg/dL (基準 200〜400)、FDP 26 μg/mL (基準 10以下)、D ダイマー 9.7 μg/mL (基準 1.0以下)、アンチトロンビン 65% (基準 80〜130)。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 3.6 g/dL、総ビリルビン 8.2 mg/dL、直接ビリルビン 1.1 mg/dL、AST 35 U/L、ALT 28 U/L、LD 1,987 U/L (基準 176〜353)、ALP 234 U/L (基準 115〜359)、尿素窒素 29 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、血糖 84 mg/dL、Na 143 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 104 mEq/L。 この患者で予想されるのはどれか。
第113回国家試験 A31
78歳の男性。特別養護老人ホームの入所前検査で梅毒血清反応に異常がみられたため受診した。梅毒を罹患し治療を受けたことがある。RPR 1倍未満 (基準 1倍未満)、TPHA 640 倍 (基準 80 倍未満)。明らかな皮疹を認めない。 対応として適切なのはどれか。
第113回国家試験 A32
生後11 日の新生児女児。2日前から嘔吐を繰り返し哺乳力が低下したため、両親に連れられて来院した。在胎 39 週、出生体重 3,180 g、Apgar スコア 9点(1分) 、9点(5分)で出生した。完全母乳栄養であるが、来院の3日前までの哺乳力は良好で、1日2回の黄色顆粒便を排泄していた。出生した産科診療所から新生児マススクリーニングで異常を認めたと本日、家族が連絡を受けた。来院時は活気がなく、泣き声は微弱であった。 身長 52 cm、体重 3,230 g。体温 36.3 ℃。心拍数160/分、整。血圧 60/30 mmHg。呼吸数 50/分。SpO2 96 %(room air)。毛細血管再充満時間4秒と延長している。全身の色素沈着と軽度の黄染とを認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、右肋骨弓下に肝を 1.5 cm 触知するが、脾は触知しない。腸雑音に異常を認めない。大泉門は径 1.5 cm でやや陥凹している。陰核の肥大を認める。診断のため血液検査を施行することとなった。 異常高値を呈する可能性の高い検査項目はどれか。
第113回国家試験 A33
38歳の女性。前胸部のつかえ感を主訴に来院した。2年前から食事摂取時に前胸部のつかえ感を自覚していたが、1か月前から症状が増悪し十分な食事摂取が困難になったため受診した。既往歴に特記すべきことはない。 意識は清明。身長 155 cm、体重 44 kg。 血液所見:赤血球 398 万、Hb 12.9 g/dL、白血球 6,300、血小板 19 万。血液生化学所見:総蛋白 7.1 g/dL、アルブミン 4.2 g/dL、総ビリルビン0.9 mg/dL、AST 22 U/L、ALT 19 U/L、LD 195 U/L (基準 176〜353)、クレアチニン 0.8 mg/dL、血糖 88 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.3 mEq/L、Cl 100 mEq/L。上部消化管内視鏡像及び食道造影像を別に示す。 この患者でみられる可能性が低いのはどれか。
第113回国家試験 A34
57歳の男性。ふらつきを主訴に来院した。2週間前に発作性心房細動に対し、ジソピラミドの投与を開始された。治療開始後、動悸発作の頻度は減少したが、ふらつきを時々感じたため昨日受診し、Holter 心電図を装着した。本日、結果を解析した検査室から異常所見の報告が担当医に入り、担当医は患者に連絡し、受診を促し患者が来院した。 意識は清明。脈拍 76/分、不整。血圧 112/62 mmHg。呼吸数 16/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経診察に異常を認めない。Holter心電図を別に示す。 現時点の対応として適切なのはどれか。
第113回国家試験 A35
25歳の女性。意識障害のため救急車で搬入された。本日朝、自宅で突然の頭痛を訴えた直後に呼びかけても反応がなくなったため、家族が救急車を要請した。 意識レベルは JCSⅢ-100。体温 36.8 ℃。心拍数 92/分、整。血圧 160/92 mmHg。呼吸数 16/分。舌根沈下のため気管挿管を行った。SpO2 98 % (リザーバー付マスク10 L/分酸素投与下) 。瞳孔径は右 3mm、左 4mm、対光反射は左で消失している。 入院時の頭部 CT及び脳血管造影像を別に示す。 まず行うべきなのはどれか。
第113回国家試験 A36
42歳の男性。空腹時の意識障害を主訴に来院した。30歳ころから空腹時に意識が遠くなる感覚があり、ジュースや飴などを摂取して症状が改善することを経験していた。内視鏡検査前の絶食時に意識消失発作を生じたため血液検査を受け、低血糖(46 mg/dL)が判明した。母親に尿路結石破砕術歴、母方祖母に下垂体腺腫の手術歴がある。 身長 170 cm、体重 89 kg。脈拍 88/分、整。血圧 140/92 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。左腰背部に叩打痛を認める。 血液生化学所見:総蛋白 8.2 g/dL、アルブミン 4.4 g/dL、AST 42 U/L、ALT 62 U/L、尿素窒素 19mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、Na 142 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 102 mEq/L、Ca 13.2 mg/dL、P 2.3 mg/dL、空腹時血糖 54 mg/dL。インスリン 42 IU/L (基準17 以下)。 診断のために有用でないのはどれか。
第113回国家試験 A37
8か月の男児。最近笑わなくなったことを心配した両親に連れられて来院した。在胎 39週 3日、出生体重 3,240 g、Apgar スコア 8点(1分) 、10点(5分)で出生した。あやし笑いを2か月で、定頸を3か月で、お坐りを7か月で獲得した。1か月前から笑うことが少なく表情が乏しくなり、次第に坐位が不安定になってきた。2週間前から頭部を前屈するとともに四肢を一瞬屈曲する動作を10秒程度の間隔で20回ほど繰り返すことが、毎日見られるようになった。この動作の後には泣くことが多い。 可能性が高いのはどれか。
第113回国家試験 A38
62歳の男性。右顔面全体の動きにくさを主訴に来院した。3日前から右耳に痛みがあった。今朝、洗顔時に眼に水が入り、食事中に口から食べ物がこぼれることに気付いたため受診した。右耳介および外耳道内に小水疱を認める。口腔、咽頭には明らかな異常を認めない。発熱はなく、血液所見に異常を認めない。 随伴する可能性が高いのはどれか。
第113回国家試験 A39
17歳の女子。失神を主訴に受診した。2週間前のジョギング中に気分不快となり、その場にしゃがみこんだ。その後、意識が遠くなり、1分程度意識を消失した。1週間前にもソフトボールの試合中に、2分程度意識を消失した。その翌日、心配になり自宅近くの診療所を受診し、心電図異常を指摘され紹介受診となった。 意識は清明。身長 147 cm、体重 48 kg。体温 36.0 ℃。脈拍 76/分、整。血圧126/64 mmHg。呼吸数 18/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸動脈に血管雑音を聴取しない。頸静脈の怒張を認めない。心音にⅣ音を聴取する。胸骨右縁第3肋間にⅢ/Ⅵの収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。下dに浮腫を認めない。両足背動脈を触知する。神経診察に異常を認めない。 血液所見:赤血球 456 万、Hb 14.5 g/dL、白血球 8,900、血小板 17 万。心エコー図を別に示す。 患者への説明として適切でないのはどれか。
第113回国家試験 A40
78歳の男性。血痰を主訴に来院した。1か月前から1日数回の血痰が出現したため受診した。発熱や咳嗽は自覚していない。6か月前の健診では特に異常を指摘されていない。喫煙歴は 20 本/日を 58 年間。 体温 36.7 ℃。脈拍 64/分、整。血圧122/78 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 97 %(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。血液検査および胸部単純 CT で異常を認めない。喀痰細胞診の Papanicolaou 染色標本を別に示す。 次に行うべき検査はどれか。