令和元年度(第114回)医師国家試験問題|午後41問〜午後60問
第114回国家試験 C36
58 歳の男性。ショッピングセンターの駐車場でエンジンがかかったまま停車している自家用車を不審に思った買い物客により、運転席で死亡しているのを発見された。救急隊が現場に到着した時には既に硬直がみられたため病院には搬送されず、死因等究明のため司法解剖された。 身長 170 cm、体重 90 kg。背面に死斑が高度に発現し、硬直は全身の諸関節で強い。外表に創傷はない。脳は 1,750 g で浮腫状である。胸郭・脊椎に骨折はなく、左右胸膜腔に液体貯留はほとんどない。心囊に破裂はない。心重量は 610 g で冠状動脈に内膜肥厚・血栓はなく、心筋には異状を認めない。大動脈は Valsalva 洞から左鎖骨下動脈起始部の下 15 cm の高さにかけて、内外膜間が解離し、両端部の内膜および中膜に亀裂がある。肺と肝臓はうっ血しているが、臓器表面に異状はない。死後解剖前に撮影した胸部 CT及び解剖時に心囊を切開した際に撮影した写真を別に示す。 最も考えられる病態はどれか。 《画像:掲載不可》心嚢に血液が溜まっている開胸画像
第114回国家試験 C37
1歳の女児。咳嗽を主訴に受診した。数日前から咳嗽と鼻汁があり、夜間咳嗽が増強したため両親に連れられて救急外来を受診した。オットセイが吠えるような咳だという。 身長 80.0 cm、体重 10.0 kg。体温 38.2 ℃。心拍数 120/分、整。血圧90/58 mmHg。呼吸数 28/分。SpO₂ 96 %(room air)。胸骨上窩、鎖骨上窩に陥没呼吸を認める。両側胸部に軽度の吸気性喘鳴を認める。アドレナリンの吸入を行ったが症状が改善しない。 次に必要な対応はどれか。
第114回国家試験 C38
68 歳の男性。労作時の呼吸困難を主訴に来院した。2年前から階段の昇降ですぐに呼吸困難が出現するようになったという。1年前から食欲もなく、半年間で体重が 4kg 減少したため、心配になり受診した。喫煙歴は 30 本/日を 45 年間。3年前から禁煙している。 身長 165 cm、体重 47 kg。胸部エックス線写真で両側肺野に著明な透過性亢進を認め、胸部 CT で両肺に低吸収域を認めた。呼吸機能検査で閉塞性障害を認め COPD と診断された。 栄養療法の方針として適切でないのはどれか。
第114回国家試験 C39
82 歳の男性。歩行困難を主訴に来院した。IgA 腎症による慢性腎不全で 14 年前から1回 4時間、週3回の血液透析を受けている。2年前から歩行速度が低下し、最近は横断歩道を渡りきれないことがある。階段昇降も両手で手すりにつかまらないと困難で、通院以外の外出を控えるようになったという。体重は1年前から5kg 減少し、このまま歩けなくなることを心配して受診した。 身長 167 cm、体重 47kg(透析直後体重 46 kg)。脈拍 72/分、整。血圧 138/72 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。浮腫はない。徒手筋力テストで両下肢とも4である。その他、神経診察に異常を認めない。両足背動脈は左右差なく触知する。 血液所見:赤血球338 万、Hb 11.0 g/dL、Ht 33 %、白血球 5,200、血小板 14 万。血液生化学所見:総蛋白 6.8 g/dL、アルブミン 3.6 g/dL、AST 22 U/L、ALT 18 U/L、LD 178 U/L(基準 120〜245)、CK 38 U/L(基準 30〜140)、尿素窒素 72 mg/dL、クレアチニン7.8 mg/dL、尿酸 7.4 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 101 mEq/L、Ca9.2 mg/dL、P 5.6 mg/dL。CRP 0.1 mg/dL。 歩行困難の原因として考えられるのはどれか。
第114回国家試験 C40
9歳の男児。毎年学校で行われる体力測定において、有酸素運動能力の指標である往復持久走(20 m シャトルラン)の折り返し数が7歳時をピークに低下していることが学校医に報告された。6歳:20 回【19.2】、7歳:26 回【28.6】、8歳:24 回【38.5】、9歳:19 回【48.0】(【】内は全国平均回数 )。身長の伸びはよく、体重の減少もない。本人に確認したところ毎年全力で走っているとのことである。 学校医として適切な対応はどれか。
第114回国家試験 C41
59 歳の女性。健康診断で便潜血反応陽性を指摘され来院した。下部消化管内視鏡検査が施行され、上行結腸癌と診断された。CT 等の画像検査で明らかな転移はなく、右半結腸切除を行うこととなった。 身長 156 cm、体重 48 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 108/60 mmHg。呼吸数 12/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 血液所見:赤血球 398 万、Hb 12.5 g/dL、Ht 39 %、白血球 4,900、血小板 14 万。血液生化学所見:総蛋白 6.6 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、総ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 16 U/L、ALT 18 U/L、LD 184 U/L(基準 120〜245)、ALP202 U/L (基 準 115〜359)、クレアチニン 1.0 mg/dL、Na 141 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 101 mEq/L。 周術期管理で正しいのはどれか。
第114回国家試験 C42
48 歳の男性。健康診断で白血球増多を指摘され来院した。1か月前から左腹部の膨満感を自覚していた。 体温 36.3 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 126/74 mmHg。表在リンパ節を触知しない。脾臓を左肋骨弓下に5cm 触知する。 血液所見:赤血球450 万、Hb 13.8 g/dL、Ht 45 %、白血球 46,000(骨髄芽球1%、前骨髄球3%、骨髄球5%、後骨髄球 10 %、桿状核好中球 15 %、分葉核好中球 54 %、好酸球%、好塩基球5%、リンパ球5% 、血小板 37 万。血液生化学所見:総蛋白 6.9 g/dL、アルブミン 4.8 g/dL、総ビリルビン 0.7 mg/dL、直接ビリルビン 0.1 mg/dL、AST 20 U/L、ALT 27 U/L、LD 350 U/L(基準 120〜245)、尿素窒素 18 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、尿酸 6.8 mg/dL。腹部 CTを別に示す。 治療方針を決定するために最も重要な検査はどれか。
第114回国家試験 C43
76 歳の男性。腹部膨満感と腹痛を主訴に来院した。3か月前に急性単球性白血病(FAB 分類 M5)と診断され、数種類の異なる薬物による抗癌治療を受けた。しかし現在まで一度も寛解に至っていない。1週前から腰背部痛が出現したためNSAID を内服したが効果は不十分で、昨夜からは腹痛も出現し次第に増悪して自立歩行不能となったという。 意識は清明だが顔面は苦悶様である。身長 171 cm、体重 54 kg。体温 37.1 ℃。脈拍 88/分、整。血圧 118/78 mmHg。眼瞼結膜は貧血様である。胸骨右縁に収縮期駆出性雑音を聴取する。四肢に皮下出血を認めない。 血液所見:赤血球 282 万、Hb 8.0 g/dL、Ht 26 %、白血球 52,400(骨髄芽球 74 %、桿状核好中球%、分葉核好中球 12 %、好酸球1%、好塩基球1%、リンパ球 10% 、血小板 10 万。血液生化学所見:総蛋白 5.1 g/dL、アルブミン 2.8 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、直接ビリルビン 0.2 mg/dL、AST 34 U/L、ALT 37 U/L、LD 1,350 U/L(基準 120〜245)、尿素窒素 19 mg/dL、クレアチニン 1.3 mg/dL、尿酸 9.8 mg/dL。腹部超音波検査と腹部 CT で、広範囲に腸間膜リンパ節と後腹膜リンパ節の腫大が認められ、それによる消化管への圧迫と浸潤が疑われた。 現時点でまず考慮すべき治療はどれか。
第114回国家試験 C44
2歳の男児。生来健康であったが、発熱を主訴に母親に連れられて来院した。診察時に母親が離れても 泣しない。体温 38.2 ℃。心拍数 110/分、整。血圧 98/62mmHg。呼吸数 30/分。SpO₂ 98 %(room air) 。毛細血管再充満時間は2秒以内。 自発的に開眼しており光をまぶしがるが、視線が合わず追視をしない。 この患児に疑われるのはどれか。
第114回国家試験 C45
84 歳の女性。腹痛のため救急車で搬入された。2日前から排便がなく腹痛と腹部膨満感を自覚するようになった。今朝から症状が強くなったため救急車を要請したという。 意識は清明。体温 37.5 ℃。心拍数 98/分、整。血圧 148/94 mmHg。呼吸数 22/分。SpO₂ 97 %(鼻カニューラ3L/分酸素投与下) 。腹部は膨隆し腸雑音はやや亢進し、打診で鼓音を認める。左腹部に圧痛を認めるが反跳痛はない。腹部エックス線写真を別に示す。 まず行うべき対応はどれか。
第114回国家試験 C46
32 歳の経産婦(2妊1産) 。妊娠 12 週。出生前診断について相談するため、遺伝カウンセリング外来に夫婦で来院した。これまでの妊娠経過に異常を認めない。28歳の時に出産した子供が Down 症候群であった。無侵襲的出生前遺伝学的検査<NIPT>について知りたいという。 説明として適切なのはどれか。
第114回国家試験 C47
42 歳の男性。健康診断で異常を指摘されたため受診した。既往歴、家族歴に特記すべきことはない。喫煙歴は 20 本/日を 13 年間。飲酒はビールを 500 mL/日。 身長 167 cm、体重 78 kg、腹囲 104 cm。体温 36.4 ℃。脈拍 68/分、整。血圧138/76 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。 血液生化学所見:総蛋白 7.5 g/dL、アルブミン 4.2 g/dL、総ビリルビン 0.6 mg/dL、AST 45 U/L、ALT 52U/L、γ-GT 130 U/L (基準 8〜50) 、尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン 1.0mg/dL、尿酸 7.9 mg/dL、空腹時血糖 130 mg/dL、 HbA1c 6.8 % (基 準4.6〜6.2) 、トリグリセリド 250 mg/dL、HDLコレステロール 33 mg/dL、LDLコレステロール 142 mg/dL。 まず行うべきなのはどれか。
第114回国家試験 C48
67 歳の女性。健康診断で胸部エックス線写真の異常陰影を指摘され、精査目的に来院した。喫煙歴は 25 本/日を 47 年間。 体温 36.4 ℃。脈拍 64/分、整。血圧124/76 mmHg。呼吸数 16/分。SpO₂ 97 %(room air) 。胸部 CT で異常を認めたため、気管支鏡下に擦過細胞診を施行した。胸部エックス線写真、胸部 CT及び擦過細胞診の Papanicolaou 染色標本を別に示す。 診断はどれか。
第114回国家試験 C49
29 歳の女性(1妊1産)。分娩後1日で入院中である。妊娠 38 週0日で骨盤位のため帝王切開分娩となった。術中出血量は 800 mL で術中術後の経過は順調であった。術後の初回歩行を開始したところ、突然の呼吸困難と胸痛とを訴えた。 意識は清明。身長 154 cm、体重 77 kg。脈拍 104/分、整。血圧 128/76 mmHg。呼吸数 26/分。SpO₂ 92 %(room air) 。呼吸音に異常を認めない。 最も考えられるのはどれか。
第114回国家試験 C50
78 歳の女性。糖尿病で地域基幹病院の外来に月1回通院している。本人が食事の準備や部屋の掃除などに不安を感じている。独居であり、家族は遠方に住んでいるため日常的な協力は難しい。 自宅での日常生活支援を希望している時に、本人が相談する施設として適切なのはどれか。
第114回国家試験 C51
35 歳の初妊婦(1妊0産)。妊娠 33 週6日。妊婦健康診査のため来院した。これまでの妊娠経過に異常を認めていなかった。 脈拍 96/分、整。血圧 126/68 mmHg。尿所見:蛋白(-) 、糖(ー) 。子宮底長 29 cm、腹囲 94 cm。内診で子宮口は閉鎖している。胎児推定体重 2,120 g、羊水指数<AFI>18 cm。胎盤は子宮底部に位置している。職業は事務職である。明日から休業を申請するという。 この妊婦の休業を規定する法律はどれか。
第114回国家試験 C52
28 歳の初産婦(1妊0産) 。妊娠 40 週0日午前0時に破水感があり、規則的な子宮収縮が出現したため、午前1時に来院した。妊婦健康診査で特に異常は指摘されていなかった。来院時、児は第1頭位で胎児心拍数は正常、腟鏡診にて羊水流出を認め、内診で子宮口は3cm開大していた。午前5時、子宮収縮は5分間隔、内診で子宮口は6cm 開大、児頭下降度は SP±0cm、大泉門は母体の右側、小泉門は母体の左側に触知し、矢状縫合は骨盤横径に一致していた。午前時、子宮収縮は3分間隔、内診で子宮口は9cm 開大、児頭下降度は SP+2cm であった。内診で得られた児頭の所見①〜⑤ を別に示す。 正常な回旋をしているのはどれか。
第114回国家試験 C53
75 歳の男性。脳梗塞の既往があり、通院中である。①右半身に軽度の麻痺ががあり、②利き手は右手だが左手で食事を摂取している。③杖をついて屋外歩行は可能。④短期記憶は問題なく日常の意思決定は自分で行える。主治医は⑤要介護1と考えた。この患者が介護保険を申請することになった。 下線部で主治医意見書に記載が求められていないのはどれか。
第114回国家試験 C54
58 歳の男性。1週前から両眼の視力低下を自覚し来院した。これまでに医療機関を受診したことはなかったという。喫煙歴は 20 本/日を 26 年間。 血圧 170/90mmHg。血液生化学所見:尿素窒素 23 mg/dL、クレアチニン 1.2 mg/dL、空腹時血糖 160 mg/dL、HbA1c 8.2 % (基準 4.6〜6.2) 、トリグリセリド 190 mg/dL、HDLコレステロール 25 mg/dL、LDLコレステロール 148 mg/dL。視力は右 0.1(0.4×-3.0 D)、左 0.2(0.7×-2.5 D)。眼圧は右 15 mmHg、左 13 mmHg。両眼の眼底写真、蛍光眼底写真、光干渉断層計<OCT>像および光干渉断層血管撮影写真を別に示す。眼底写真では点状・斑状出血、硬性白斑および軟性(綿花様)白斑を両眼に認める。光干渉断層血管撮影写真では毛細血管の減少を両眼に認める。 診断はどれか。
第114回国家試験 C55
78 歳の男性。排尿障害を主訴に来院した。2年前から尿勢の減弱を自覚していたという。3か月前からは頻尿および残尿感が出現し、昨日から症状が強くなり受診した。内服薬はない。 意識は清明。身長 165 cm、体重 63 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 80/分、整。血圧 148/86 mmHg。呼吸数 16/分。下腹部に膨隆を認める。 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血1+、沈渣に赤血球 5 〜 9 /HPF、白血球 5 〜 9 /HPF。血液所見:赤血球 476 万、Hb 13.8 g/dL、Ht 39 %、白 血 球5,200、血小板 24 万。血液生化学所見:尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン 4.4mg/dL、Na 137 mEq/L、K 5.0 mEq/L、Cl 114 mEq/L。腹部超音波像を別に示す。 まず行うべきなのはどれか。