令和2年度(第115回)医師国家試験問題|午後41問〜午後60問
第115回国家試験 C36
32歳の経産婦(2妊2産)。1年前からの不正性器出血を主訴に来院した。病期Ⅰの子宮頸癌と診断され、4週後に広汎子宮全摘術とリンパ節郭清術が予定された。予測出血量は800mLである。 血液所見:赤血球 390万、Hb 10.1 g/dL、Ht 31%、白血球 5,200、血小板 30万。血液生化学所見:総蛋白 6.4 g/dL、AST 32 U/L、ALT 29 U/L、フェリチン 5 ng/mL(基準 20~120)。血液型は AB型RhD(-)である。 現時点の対応として誤っているのはどれか。
第115回国家試験 C37
50歳の男性。職場の定期健康診断を受けた結果、高血圧を指摘された。 その結果を踏まえたトータルヘルスプロモーションプラン〈THP〉に含まれないのはどれか。
第115回国家試験 C38
75歳の男性。慢性C型肝炎による肝硬変、食道静脈瘤の存在が指摘されていたが、高血圧症と脂質異常症とともに特に治療は受けていなかった。吐血し意識を失った状態で倒れているところを家族が発見した。搬送先の病院で内視鏡的食道静脈瘤結紫術を施行したが止血に至らず、死亡した。 この患者において死亡診断書のⒶに記入すべき疾患はどれか。
第115回国家試験 C39
65歳の男性。3日前からの眼痛を主訴に来院した。20歳ころに右眼を強く打撲したが、その後問題なく生活していた。半年前から右眼の視力低下を自覚し、1か月前からほとんど見えなくなったが、仕事の都合で医療機関を受診できなかった。 全身所見に異常を認めない。視力は右眼前手動弁、左 1.0。眼圧は右 53 mmHg、左 15 mmHg。右眼の眼底は透見不能である。右眼の前眼部写真を別に示す。 行うべき治療はどれか。
第115回国家試験 C40
旅客機が着陸に失敗し、機体が大破した。空港の救急車・消防車の他に、周辺の消防署に応援が要請された。救命救急センターに患者を搬送するため、ドクターへリも現場に向かっており、まもなく到着する予定である。 ドクターヘリで搬送する場合、優先すべき患者はどれか。
第115回国家試験 C41
25歳の女性。3か月前に虫垂炎で入院した際行われた腹部超音波検査で腎臓の異常を指摘され、母の腎臓病が遣伝していないか心配で検査を希望して来院した。母は58歳で、遺伝性腎疾患のため1か月前から透析している。母方祖父も60歳から同病で透析をしており、5年前に脳出血で亡くなった。父からの家系に同病の人はいない。 身長 160 cm、体重 51 kg。血圧 110/70 mmHg。脈拍 80/分、整。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、腫瘤は触知しない。 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血反応(-) 。腹部造影CTを別に示す。母と同病であると診断された。近く、結婚予定で挙児希望がある。パートナーの家系に同病の人はいない。 この患者の子どもが同遺伝性腎疾患を有する確率はどれか。
第115回国家試験 C42
59歳の男性。肺がん検診で胸部異常陰影を指摘され来院した。胸部エックス線写真及び胸部単純CTを別に示す。 病変の発生部位として正しいのはどれか。
第115回国家試験 C43
71歳の男性。尿失禁を主訴に来院した。2年前から夜間に尿意で目が覚めてトイレに行くようになり、3か月前からその頻度が増えてきた。高血圧症で内服治療中である。 身長 172 cm、体重 69 kg。体温 36.4 ℃。脈拍 80/分、整。血圧 140/80 mmHg。 下腹部に弾性軟の腫瘤を触知する。直腸診で4cm大の弾性硬の前立腺を触知し、圧痛を認めない。腹部超音波検査で膀胱内に大量の尿貯留を認める。 治療として適切なのはどれか。
第115回国家試験 C44
1か月の男児。健康診査のため母親に連れられて来院した。在胎 40週、出生体重 2,990 gであった。周産期に異常はなかった。母親に今後の予防接種のスケジュールについて聞かれたため作成した標準的なスケジュール表を別に示す。 スケジュール表内の(※)にあてはまるワクチンはどれか。
第115回国家試験 C45
38歳の男性。易疲労感を主訴に来院した。2年前に転職してから外食と飲酒量が増え、体重が10kg増加している。最近になり易疲労感が出現したため受診した。 身長 172 cm、体重 84 kg。血圧 146/88 mmHg。 尿所見:蛋白(-)、糖(-)、ケトン体(-) 。血液生化学所見:総蛋白 8.0 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、AST 32U/L、ALT 48U/L、尿素窒素 22 mg/dL、クレアチニン 1.0 mg/dL、食後時間血糖 252 mg/dL、HbA1c 8.2%(基準 4.6~6.2) 、総コレステロール 248 mg/dL、トリグリセリド 252 mg/dL。 患者への説明として適切なのはどれか。
第115回国家試験 C46
36歳の男性について救急車から現場対応の指示を求められた。7月の暑い日の午後1時頃、昼食後に屋外清掃作業に従事していたところ、突然呼吸困難を訴えたため同僚が救急車を要請した。 現場到着後、救急救命士が診察にあたったところ、意識レベルはJCSⅠ-2。体温 37.5 ℃。脈拍 114/分、整。血圧 70/42 mmHg。呼吸数 36/分。SpO₂ 80% (リザーバー付マスク 10L/分酸素投与下)。外傷は認めない。顔面は蒼白で口唇に高度の浮腫を認める。頸静脈の怒張を認めない。心音に異常を認めず、心電図上でも頻脈以外の異常を認めない。喘鳴聴取。顔面部、胸腹部、背部および四肢の皮膚に膨疹が多発していた。既往に食物アレルギーを指摘されたことがあり、医師から自己注射薬の処方を受けているという。 救急救命士に口頭指示すべき処置はどれか。
第115回国家試験 C47
34歳の男性。右下腿の外傷のため救急車で搬入された。5時間前に倉庫で荷物運搬の作業中に、崩れた荷物に右下腿を挟まれて受傷した。救急隊による救出までの間、長時間挟まれていたという。 意識は清明。体温 36.2 ℃。心拍数 96/分、整。血圧 85/40 mmHg。呼吸数 32/分。SpO₂ 95 % (room air)。右下腿に腫脹と変形を認めるが、皮膚の損傷はない。足部の感覚と運動に異常を認めない。その他の部位に外傷はない。 尿所見:赤色、蛋白(−)、糖(−)、ケトン体(−)、潜血3+。検査所見:血液所見:赤血球 400万、Hb 13.9 g/dL、Ht 54%、白血球 11,000(桿状核好中球 20%、分葉核好中球 50%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 8%、リンパ球 20%)、血小板 38万。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 4.6 g/dL、総ビリルビン 1.3 mg/dL、AST 125 U/L、ALT 60 U/L、LD 570 U/L(基準 120〜245) 、ALP 343 U/L(基準 115~359)、CK 6,350 U/L(基準 30~140)、尿素窒素 10.2 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、尿酸 7.6 mg/dL、血糖 98 mg/dL、Na 137 mEq/L、K 5.1 mEq/L、Cl 100mEq/L。CRP 0.84mg/dL。動脈血ガス分析:pH 7.30、PaCO₂ 25 Torr、PaO₂ 105 Torr、HCO₃⁻ 12 mEq/L。右下腿エックス線写真で、腔骨および排骨の骨幹部骨折を認めた。 今後起こり得る病態として最も注意すべきなのはどれか。
第115回国家試験 C48
78歳の女性。原因不明の発熱が続くため入院した。原因精査が進められる一方で病状は悪化し、入院7日目に敗血症性ショックで死亡した。担当医は家族に病理解剖の説明をし、承諾を求めることにした。 家族への説明として正しいのはどれか。
第115回国家試験 C49
72歳の男性。食事指導と生活指導を受けるために来院した。10年前から高血圧性腎硬化症による慢性腎臓病で通院している。1日30分程度のウォーキングと健康体操を継続している。食欲と体調は良好で、喫煙や飲酒習慣はない。薬剤はサイアザイド系降圧利尿薬1剤が処方されている。 身長 170 cm、体重 66 kg。 血液検査、血液生化学検査では貧血や低蛋白血症を認めず、血中電解質と酸塩基平衡の異常も認めない。eGFR 40 mL/分/1.73m²、尿蛋白 0.08 g/gCr(基準 0.15未満) 。3日間の食事記録では、摂取量がエネルギー 2,100〜2,200 kcal/日、蛋白質 48〜52 g/日、食塩 5.2〜5.8 g/日であった。 食事と生活に関する説明、指導として適切なのはどれか。
第115回国家試験 C50
70歳の男性。膵頭部癌のため膵頭十二指腸切除術を施行され、術後安定していた。術後3日目に呼吸困難と意識の混濁が認められた。 体温 37.5 ℃ 、心拍数 118/分、整。血圧 122/84 mmHg。呼吸数 30/分。SpO₂ 95%(マスク 5L/分酸素投与下)。心音は奔馬調律で、呼吸音は両肺にwheezesを聴取する。両下腿に浮腫を認めた。 血液所見:赤血球350万、 Hb 8.8 g/dL、Ht 28%、白血球 13,100、血小板 21万。血液生化学所見: AST 99 U/L、ALT 31 U/L、LD 659 U/L(基準 120〜245) 、クレアチニン 1.4 mg/dL、血糖 128 mg/dL、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉2,920 pg/mL(基準 18.4以下)。CRP 2.2 mg/dL。胸部エックス線写真を別に示す。 治療薬として適切なのはどれか。
第115回国家試験 C51
4歳の男児。鼻出血を主訴に母親に連れられて来院した。朝から鼻出血があり、夕方になっても止まらないため心配した母親に連れられて受診した。2歳ころから出血を繰り返しており、いつも止血するまでに 3~4時間要した。関節内出血や筋肉内出血の既往はない。父親に同様の出血傾向がある。 身長 104cm、体重 15.4kg。体表に出血斑を認めない。 血液所見:赤血球312万、Hb 10.2 g/dL、Ht 31%、白血球 8,900、血小板 18万、出血時間延長、PT-INR 1.0(基準 0.9-1.1)、APTT 48.4秒(基準対照 32.2)。 最も考えられるのはどれか。
第115回国家試験 C52
72歳の女性。悪心を主訴に来院した。3年前に後腹膜の径10cm の腫瘤を開腹生検して濾胞性リンパ腫と診断された。癌薬物療法を受けて寛解を得たがその1年後に腫瘍の急速な再増大を認め、再発と診断された。薬物療法を受け、腫瘍は縮小したが消失はしなかった。薬物療法の中止を希望し在宅療養中であった。2か月前から腰痛が出現しNSAIDを内服したが増悪するため、悪心に対する対策を行った上でオピオイドの内服をはじめ腰痛は消失した。1か月前から下肢浮腫が出現し、1週前から腹部膨満感、腹痛とともに食欲不振が出現したという。昨晩から悪心も出現したため受診した。 意識は清明であるが顔面は苦悶様である。身長 156 cm、体重 41 kg。体温 37.5 ℃。脈拍 96/分、整。血圧108/68mmHg。眼瞼結膜は貧血様である。両鼠径に2〜5cmの腫大したリンパ節を多数触知する。腹部は著明に膨隆して腸蠕動音は減弱している。両側下肢に浮腫を認める。 血液所見:赤血球 345万、Hb 9.2 g/dL、Ht 28%、白血球 9,000、血小板 9.5万。血液生化学所見:総蛋白 5.2 g/dL、アルブミン 2.7 g/dL、総ビリルビン 0.6 mg/dL、AST 24 U/L、ALT 13 U/L、LD 1,120 U/L (基準 120〜245) 、尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン1.7 mg/dL、尿酸10.2mg/dL。腹部単純CTを別に示す。 最も適切な対応はどれか。
第115回国家試験 C53
1歳6か月の男児。健康診査のため母親に連れられて来院した。 上手に歩くことができるが、①スキップはできない。なぐり書きはできるが、② まねをして○を描くことができない。単語を話すが、③2語文はなく、④自分の名前は言えない。お気に入りの絵本をめくるが、⑤興味あるものの指さしはない。 下線部のうち発達の異常が疑われるのはどれか。
第115回国家試験 C54
68歳の男性。膀胱全摘術後の患者である。腹部の写真を別に示す。この患者について正しいのはどれか。
第115回国家試験 C55
20歳の女性。頭髪や眉毛を抜くことを主訴に来院した。頭痛のために受診した内科で、精神科の受診を勧められ受診した。小学3年生の時から頭髪や眉毛を抜くことが癖になり、現在では頭髪はほとんどなくウィッグ(かつら)を装着している。スクールカウンセラーの面接を受けたことはあったが、社会人になって中断している。自分でも何とかしたいと思っているが、これまで精神科を受診する勇気が無かったという。食欲と睡眠の障害は認められず、日常生活に大きな支障はみられない。Hamiltonうつ病評価尺度は12点(0点~7点:正常)である。 この患者の評価に適切な検査はどれか。2つ選べ。