平成28年度(第111回)医師国家試験問題|午後61問〜午後80問

第111回国家試験 D28

23 歳の男性。めまい、右難聴および右耳鳴りを主訴に4日前から入院中である。5日前に海外旅行から帰国した。4日前の起床時に右耳でパチンという音がした直後から急に浮動感、右難聴および右耳鳴りが出現した。様子をみていたが軽快しないため同日の午後に受診した。 来院時、純音聴力検査で右軽度感音難聴を認めた。頭位変換眼振検査で左向きの水平自発眼振を認めた。右外耳道を加圧すると右向き水平眼振を認めた。即日入院となりベッド上安静で副腎皮質ステロイドと抗めまい薬が投与されたが症状は改善せず、悪心と嘔吐とを伴うめまいは増悪している。本日の純音聴力検査では聴力がさらに低下しており右高度感音難聴を認める。入院時と本日(入院4日目)のオージオグラムを別に示す。 診断はどれか。

第111回国家試験 D29

37 歳の男性。陰茎の疼痛と排膿とを主訴に来院した。1か月前から陰茎先端部に疼痛と硬結とを自覚していた。徐々に疼痛は増強しており、2、3日前からは発赤を伴うようになっている。今朝、下着に膿が付着し悪臭も伴うようになったため受診した。喫煙は 20 本/日を 10 年間。飲酒は機会飲酒。独身。不特定多数の相手と性交渉があった。真性包茎であり、包皮の発赤および排膿を認める。包茎に対して背面切開術を行い、包皮を翻転した写真を別に示す。亀頭部に硬結を認める。 最も疑われるのはどれか。 ≪陰部画像:画像公開不可≫ カリフラワー様の腫瘤形成や浅いびらんを認める陰茎。

第111回国家試験 D30

4か月の乳児。嘔吐、血便および活気不良のため母親に連れられて来院した。2日前の朝から便がゆるく哺乳不良であった。昨日の朝に自宅近くの診療所を受診し安静を指示されていた。今朝から嘔吐が続き顔色も悪く、ぐったりして血便がみられたため夕刻に受診した。 呼びかけには眼を開けるが、すぐに閉じてしまう。体温 37.8 ℃。脈拍 160/分(微弱)、整。血圧 70/50 mmHg。呼吸数 40/分で浅い。SpO2 96%(マスク 2L/分酸素投与下)。毛細血管再充満時間3秒と延長している。栄養状態は良好。顔面は蒼白。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は膨満し、筋性防御を認める。 血液所見:赤血球 426万、Hb 12.3 g/dL、Ht 35%、白血球 16,000 (桿状核好中球 17%、分葉核好中球 53%、好酸球 1%、好塩基球 0%、単球 6%、リンパ球 23%)、血小板 17 万。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dL、アルブミン 3.6 g/dL、尿素窒素 20 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、Na 135 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Cl 98 mEq/L。CRP 10 mg/dL。急速輸液を開始した。腹部超音波像を別に示す。 次に行う治療はどれか。

第111回国家試験 D31

55 歳の女性。関節リウマチの治療のため来院した。半年前から両側の手指、手関節および膝関節の痛みを自覚していた。自宅近くの医療機関で活動性の高い関節リウマチと診断され、治療のため紹介されて受診した。肝機能に異常を認めない。HBs 抗原と HBs 抗体は陰性である。抗リウマチ薬を投与することとした。 投与前に追加して、まず測定すべきなのはどれか。

第111回国家試験 D32

6か月の乳児。呼吸不全のため来院した。生後5か月から咳嗽が出現しており、昨日から多呼吸も出現するようになったため救急外来を受診した。 身長 66.5 cm、体重 5.3 kg。体温 37.2 ℃。脈拍 180/分、整。血圧 88/52 mmHg。呼吸数 50/分。SpO2 86 %room air。咽頭は発赤を認めないが、口腔粘膜に鵞口瘡を認める。心音に異常を認めない。両側の胸部にびまん性に fine crackles を聴取する。 血液所見:赤血球 403 万、Hb 10.4 g/dL、Ht 31 %、白血球 2,300 (好中球 64 %、好酸球 1 %、好塩基球 1 %、単球 7 %、リンパ球 27 %)、血小板 37 万。血液生化学所見:総蛋白 6.1 g/dL、IgG 152 mg/dL(基準 440〜880)、IgA 5 mg/dL(基準 31〜77)、IgM 13 mg/dL(基準 19〜55)。免疫血清学所見:CRP 0.1 mg/dL、β-D-グルカン 26 pg/mL(基準 10 以下)。人工呼吸管理を開始し、胃管と中心静脈カテーテルを挿入した。胸部エックス線写真と肺野条件の胸部 CTとを別に示す。 考えられる原因微生物はどれか。

第111回国家試験 D33

34 歳の女性。労作時の息切れと動悸とを主訴に来院した。2か月前から症状が出現していたが、次第に呼吸苦が強くなってきたため受診した。 体温 37.8 ℃。脈拍 108/分、整。右上肢血圧 130/50 mmHg、左上肢血圧 86/42 mmHg。左頸部から左鎖骨上窩にかけて血管雑音を聴取する。胸骨左縁第3肋間を最強点とするⅢ/Ⅵの拡張期雑音を聴取する。 胸部エックス線写真で心胸郭比 58 %、少量の胸水を認める。赤沈 110 mm/1時間。血液所見:赤血球 410 万、Hb 12.2 g/dL、白血球 12,600(桿状核好中球 13%、分葉核好中球 69%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 3%、リンパ球 12%)、血小板 23万。血液生化学所見:AST 48 U/L、ALT 42 U/L、LD 368 U/L(基準 176〜353)。CRP 9.3 mg/dL。心エコー検査で左室拡張末期径 58 mm、左室駆出率 60 %、中等度の大動脈弁逆流を認める。胸部造影CT で上行大動脈壁の肥厚を認める。大動脈弓部と頸部血管の再構築画像を別に示す。入院後、利尿薬の投与を開始したところ息切れは速やかに改善した。 次に行うべき治療はどれか。

第111回国家試験 D34

72 歳の女性。意識障害のため救急車で搬入された。10 日前から 38 ℃台の発熱が出現し、4 日前から健忘が目立つようになった。今朝、呼びかけに反応が悪いため家族が救急車を要請した。60 歳台から糖尿病で内服治療中である。 意識レベルは JCSⅡ-10。体温 38.4 ℃。心拍数 96/分、整。血圧 142/88 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 98 %(リザーバー付マスク 10 L/分 酸素投与下)。胸部聴診で両肺に rhonchiを聴取する。項部硬直を軽度に認める。腱反射は全般に低下しており、Babinski徴候は陰性である。 血液所見:赤血球 398 万、白血球 6,500。血液生化学所見:血糖 179 mg/dL、HbA1c 8.2 %(基準 4.6〜6.2)。免疫血清学所見:CRP 4.3 mg/dL、Tリンパ球 CD4/CD8 比 1.9(基準 0.6〜2.9)、β-D-グルカン 5.0 pg/mL(基準 10以下)。ツベルクリン反応陰性。脳脊髄液所見:初圧 320 mmH2O 基準 70〜170)、細胞数 86/mm3 (基準0〜2) (単核球 58、多形核球 28)、蛋白 195 mg/dL(基準15〜45)、糖 3 mg/dL(基準 50〜75)。脳脊髄液の細胞診は陰性。脳脊髄液の染色標本、肺野条件の胸部CT及び頭部MRI の拡散強調像を別に示す。 治療薬はどれか。

第111回国家試験 D35

69 歳の女性。血便を主訴に来院した。既往歴に特記すべきことはない。下部消化管内視鏡検査で肛門から 20 cm 口側に病変を認める。下部消化管内視鏡像を別に示す。 根治手術の際に根部で結紮切離するのはどれか。

第111回国家試験 D36

27 歳の女性。発熱と顔面の紅斑との精密検査のため4日前から入院中である。3か月前から手指の関節痛を自覚していた。1か月前から顔面の紅斑と 37 ℃台の発熱も出現したため受診した。 来院時、意識は清明。体温 37.5 ℃。脈拍 84/分、整。血圧 106/72 mmHg。両側頰部に浮腫状の紅斑を認めた。心音と呼吸音とに異常を認めなかった。両側の手関節と肘関節とに圧痛を認めた。 尿所見:蛋白(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 405 万、Hb 11.1 g/dL、Ht 34 %、白血球 2,500(好中球 70 %、好酸球 1 %、好塩基球 1 %、単球 4 %、リンパ球 24 %)、血小板 15 万、PT-INR 1.3(基準 0.9〜1.1)、APTT 38.9 秒(基準対照 32.2)。血液生化学所見:尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.5 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 108 mEq/L。免疫血清学所見:CRP 0.3 mg/dL、リウマトイド因子<RF>陰性、抗核抗体 1,280 倍(基準 20 以下)、抗 DNA 抗体 60 IU/mL(基準 7以下)、CH50 U/mL(基準 30〜40)、C3 32 mg/dL(基準 52〜112)、C4 3 mg/dL(基準 16〜51)。本日から頭痛、めまい及び嘔吐が出現し、7% 重炭酸ナトリウムを静脈投与されたが改善しない。意識は清明。水平眼振を認める。頭部 CTと頭部 MRI の FLAIR 像とを別に示す。脳脊髄液所見に異常を認めない。 次に行う治療はどれか。

第111回国家試験 D37

35 歳の女性。血痰と発熱とを主訴に来院した。約2週間前から咳嗽と発熱とが出現し、昨日から血痰と呼吸困難とを自覚するようになった。6年前から甲状腺機能亢進症でプロピルチオウラシルを内服している。 体温 38.3 ℃。脈拍 104/分、整。血圧 128/72 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 93 %(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。背部 に fine crackles を聴取する。 血液所見:Hb 6.2 g/dL。CRP 3.6 mg/dL。胸部エックス線写真と肺野条件の胸部CTとを別に示す。喀痰の塗抹、培養検査は一般細菌、抗酸菌ともに陰性で、結核菌の PCR 検査も陰性である。気管支肺胞洗浄液は鮮紅色で、ヘモジデリン貪食マクロファージを認める。 現在の症状に最も関連するのはどれか。

第111回国家試験 D38

38 歳の初産婦。妊娠 34 週の妊婦健康診査のため来院した。腹部超音波検査で胎児推定体重は 1,500 g、羊水ポケットは 5cm、胎児の小脳低形成、心室中隔欠損、手関節屈曲および手指の重なりを認める。 この児に疑うべき疾患はどれか。

第111回国家試験 D39

22 歳の男性。まとまらない言動を主訴に家族に連れられて来院した。2か月前に大学卒業後就職して普通に働いていたが、1か月前から突然、言動がまとまらなくなった。「何か大変なことが起こりそうな不気味な感じがあり、不安で落ち着かない」「命令する声が聴こえ、誰かに操られている」などと言うようになり自宅で療養していた。診察には素直に応じるが「自分は病気ではない」と言う。身体所見に異常を認めない。 まず導入すべきなのはどれか。

第111回国家試験 D40

12 歳の男児。サッカーの練習をすると頭が痛くなることを主訴に父親に連れられて来院した。安静時は体位にかかわらず頭痛はない。 意識は清明。脈拍 76/分、整。血圧 126/74 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経学的所見に異常を認めない。血液所見と血液生化学所見とに異常を認めない。頭部 MRI の T2 強調矢状断像を別に示す。 今後、発症する可能性が最も高いのはどれか。

第111回国家試験 D41

6 歳の女児。時々、会話が途切れることがあるため母親に連れられて来院した。これまでに2回の単純型熱性けいれんの既往があるが、成長や発達に異常を認めない。身体所見に異常を認めない。過呼吸時の脳波を別に示す。 この所見が出現したときの症状はどれか。

第111回国家試験 D42

77歳の男性。食欲不振と腎機能低下のため紹介されて来院した。2週間前から食欲不振が持続している。1か月前の血清クレアチニン値は 1.7 mg/dL であったが、3.0 mg/dL へ上昇したため紹介されて受診した。15 年前から高血圧症、脂質異常症および高尿酸血症のため内服治療中である。10 年前、3年前および1か月前にそれぞれ冠動脈にステント留置術が行われた。 身長 166 cm、体重 68 kg。体温 36.0 ℃。脈拍 64/分、整。血圧 128/70 mmHg。下腿に浮腫と把握痛とを認めない。足背動脈の触知は良好である。左第4、第5趾が暗紫色である。 足関節上腕血圧比の低下を認めない。尿所見:蛋白1+、糖(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 321 万、Hb 10.0 g/dL、Ht 31 %、白血球 11,300 (好中球 70 %、好酸球 12 %、好塩基球 5%、リンパ球 13 %)、血小板 24 万。血液生化学所見:総蛋白 6.0 g/dL、アルブミン 3.2 g/dL、AST 9 U/L、ALT 19 U/L、LD 175 U/L (基準176〜353)、尿素窒素 42 mg/dL、クレアチニン 3.2 mg/dL、尿酸 6.8 mg/dL、HbA1c 6.2 %(基準 4.6〜6.2)、総コレステロール 162 mg/dL、トリグリセリド 150 mg/dL、HDL コレステロール 38 mg/dL。左足の写真及び腹部単純 MRI の水平断像と冠状断像とを別に示す。 診断に最も有用な検査はどれか。

第111回国家試験 D43

5歳の男児。幼稚園で他の児と遊べないことを主訴に両親に連れられて来院した。運動や言語の発達に問題はないが、視線が合いにくく呼びかけにも反応が乏しい。電車の図鑑に熱中しており、多くの車名を覚えている。幼稚園では1人でいることが多い。診察室では会話はできるが落ち着いて座っていることはできず、自分が興味のあることを一方的に話す。身体所見に異常を認めない。 この患児について正しいのはどれか。

第111回国家試験 D44

34 歳の女性。前胸部不快感、呼吸困難および悪心のため救急車で搬入された。10 日前から感冒様症状に続き、37 ℃台の発熱、悪心およびふらつきが出現していた。3日前から前胸部の不快感と呼吸困難とが出現し、増悪してきたため救急車を要請した。 体温 36.9 ℃。心拍数 112/分、整。血圧 74/40 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 98 %(鼻カニューラ1L/分 酸素投与下)。Ⅲ音とⅣ音とを聴取する。両下胸部に coarse crackles を聴取する。四肢末梢の冷感を認める。 血液所見:赤血球 418 万、Hb 12.7 g/dL、白血球 11,300、血小板 20 万。血液生化学所見:AST 186 U/L、ALT 64 U/L、LD 995 U/L (基準 176〜353)、CK 352 U/L (基準 30〜140)、CK-MB 42 U/L(基準 20 以下)。CRP 11 mg/dL。心筋トロポニン T 迅速検査は陽性。胸部エックス線写真で心拡大と肺うっ血とを認める。来院時の心電図と心エコー図及び入院 14 日目の心エコー図を別に示す。 最も可能性の高い疾患はどれか。

第111回国家試験 D45

45 歳の男性。喀痰を主訴に来院した。1年前から茶褐色の細長い粘稠な痰をしばしば喀出するようになった。小児期から喘息で治療中である。胸部エックス線写真の正面像と側面像及び肺野条件の胸部 CTを別に示す。 この疾患について誤っているのはどれか。

第111回国家試験 D46

83 歳の女性。全身の衰弱のため、心配した介護施設の職員に伴われて来院した。2か月前から介助がないと立ち上がれなくなった。1か月前からさらに活気がなくなり、1週間前から食事量も減少してきた。脳梗塞後遺症の左不全片麻痺、高血圧症、脂質異常症、骨粗鬆症および便秘のため、アスピリン、カルシウム拮抗薬、スタチン<HMG-CoA 還元酵素阻害薬>、活性型ビタミンD、酸化マグネシウム及びプロトンポンプ阻害薬を内服している。 意識レベルは JCSⅠ-2。血圧 126/62 mmHg。 尿所見:蛋白(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 302 万、Hb 9.7 g/dL、Ht 30 %、白血球 5,700、血小板 14 万。血液生化学所見:総蛋白 6.3 g/dL、アルブミン 3.3 g/dL、AST 11 U/L、ALT 16 U/L、CK 97 U/L(基準 30〜140)、尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン 2.8 mg/dL、LDL コレステロール 120 mg/dL、Na 134 mEq/L、 K 4.5 mEq/L、Cl 100 mEq/L、Ca 12.5 mg/dL、P 3.1 mg/dL、Mg 2.5 mg/dL(基準 1.8〜2.5)。 この患者の衰弱の原因として最も考えられる薬剤はどれか。

第111回国家試験 D47

36 歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。夏季に作業のため穀物貯蔵タンク内に入ったところ、間もなく意識を消失して倒れた。作業前に普段と変わったところはなく、所持品に不審なものもなかった。救急隊接触時、全身にチアノーゼを認め、SpO2 88 % であった。 来院時の意識レベルは JCSⅢ-300。体温 37.2 ℃。心拍数 108/分、整。血圧 132/90 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 100 %(リザーバー付マスク 10 L/分 酸素投与下)。心音と呼吸音とに異常を認めない。皮膚は湿潤しており、血管拡張は認めない。 血液所見:赤血球 530 万、Hb 16.0 g/dL、白血球 6,000。血液生化学所見:総蛋白 6.8 g/dL、AST 30 U/L、ALT 32 U/L、CK 22 U/L (基準 30〜140)、尿素窒素 16 mg/dL、クレアチニン 1.1 mg/dL、Na 142 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Cl 102 mEq/L。心電図と胸部エックス線写真とに異常を認めない。 最も考えられる病態はどれか。