平成28年度(第111回)医師国家試験問題|午後-99問〜午後-80問

第111回国家試験 A21

31歳の女性。1回経妊0回経産婦。胞状奇胎の治療後に妊娠反応陽性が持続するため紹介されて来院した。1年前から不妊外来で排卵誘発薬の投与を受けていた。3か月前に妊娠反応陽性となったが、全胞状奇胎と診断され2回の子宮内容除去術を受けた。基礎体温は1相性である。 内診で子宮はやや腫大、軟。超音波検査で後壁筋層内に血流豊富な径 1.5 cm の腫瘤を認める。脳、肝、腎臓および腟に異常を認めない。血清 hCG の推移と肺野条件の胸部 CTとを別に示す。 治療として適切なのはどれか。

第111回国家試験 A22

80歳の女性。右利き。突然、会話ができなくなったため、家族に連れられて来院した。本日午前8時、朝食中に突然話している言葉が異常になり、内容を家族が理解できなくなった。問いかけには返答せず、しきりに何かを訴えていたという。手足の動きはいつもと変わりなく、歩くことも可能であったが、言葉が改善しないため受診した。 意識は清明。身長150cm、体重41kg。体温36.7℃。脈拍104/分、不整。血圧 164/88 mmHg。何かを話しかけてくるが、造語のため理解できない。開口や上肢挙上などの簡単な指示に従わない。顔面は左右対称で舌に麻痺はなく、発語時に表情筋の左右差はない。四肢に麻痺はなく、勝手に起き上がろうとする。腱反射は正常、Babinski徴候は陰性である。感覚系と小脳系とに異常を認めない。 胸部エックス線写真で心胸郭比58 %。心電図で心房細動を認める。頭部MRIの拡散強調像を別に示す。 この患者で他に予想される所見はどれか。

第111回国家試験 A23

38歳の男性。発熱と陰囊痛とを主訴に来院した。5日前から39℃台の発熱、悪寒、頭痛および耳前部の痛みを自覚していた。2日前から発熱と痛みは軽快していた。本日朝から左陰囊の腫大と疼痛、下腹部痛および悪心を自覚している。2週間前に6歳の息子が流行性耳下腺炎と診断されていた。流行性耳下腺炎のワクチン接種歴はない。その他の既往歴に特記すべきことはない。 身長172cm、体重68kg。体温36.8℃。脈拍76/分、整。血圧134/80mmHg。呼吸数16/分。頸部リンパ節は触知しないが両側顎下部に軽度の圧痛を認める。左陰囊に軽度発赤を認める。左精巣は腫大し強い自発痛を認める。 診断として考えられるのはどれか。

第111回国家試験 A24

76 歳の男性。左眼の視力低下を主訴に来院した。視力は右0.8(1.2× +1.0D)、左0.1(0.3× +0.5D)。眼圧は右15mmHg、左18mmHg。眼底写真と光干渉断層計<OCT>の結果とを別に示す。 治療法はどれか。

第111回国家試験 A25

40 歳の女性。下肢の浮腫を主訴に来院した。半年前に職場の健康診断で蛋白尿を指摘されたが、そのままにしていた。1か月前から両側下腿の浮腫が出現し、次第に増悪するため受診した。 身長160 cm、体重58 kg。脈拍 64/分、整。血圧132/90 mmHg。 尿所見:蛋白3+、糖(-)、潜血3+、沈渣に赤血球 10〜20/1視野、白血球0〜2/1視野、赤血球円柱と顆粒円柱とを認める。尿蛋白 4.0g/日。血液所見:赤血球 460 万、Hb 13.1 g/dL、Ht 42 %、白血球 3,800(桿状核好中球 40 %、分葉核好中球 26 %、好酸球 2%、好塩基球 0%、単球 7%、リンパ球 25%)、血小板 19 万。血液生化学所見:総蛋白 4.3 g/dL、アルブミン 1.9 g/dL、IgG 2,400 mg/dL (基準 960〜1,960)、IgA 486 mg/dL (基準 110〜410)、IgM 188mg/dL(基準 65〜350)、尿素窒素 31 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、尿酸 7.0mg/dL、血糖 116 mg/dL、HbA1c 6.3 %(基準 4.6〜6.2)、トリグリセリド 143mg/dL、LDLコレステロール 213 mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.1 mg/dL、抗核抗体 640倍(基準 20 以下)。腎生検の PAS 染色標本と蛍光抗体C1q染色標本とを別に示す。Congo-Red 染色は陰性である。 考えられるのはどれか。

第111回国家試験 A26

41 歳の初産婦。妊娠 39 週日に全身けいれんのため救急車で搬入された。来院時にはけいれんは消失していた。 意識レベルは JCSⅠ-1。心拍数 90/分、整。血圧 190/120 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 97 %(room air)。全身に浮腫を認める。尿所見:蛋白3+。硫酸マグネシウムの持続静注を開始した後に撮影された頭部MRI の FLAIR 像を別に示す。 適切な治療はどれか。

第111回国家試験 A27

38 歳の女性。眼が見えにくいことを主訴に来院した。2年前から左眼の見えにくさを自覚し、3か月前から右眼も見えにくくなっている。3年前から無月経になっている。 意識は清明。身長 164 cm、体重 67 kg。体温 36.1 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 132/76 mmHg。呼吸数 16/分。眼底は正常で、眼球運動に制限はなく、対光反射は正常である。 血液所見に異常を認めない。血液生化学所見:TSH 1.3μU/mL (基準 0.2〜4.0)、LH 2.4 mIU/mL(基準 1.8〜7.6)、ACTH 29.5 pg/mL(基準 60 以下)、FSH 6.5 mIU/mL(基準 5.2〜14.4)、GH 0.1 ng/mL (基準5以下)、プロラクチン 34.8 ng/mL(基準 15 以下)、FT4 0.9 ng/dL(基準 0.8〜2.2)、インスリン様成長因子-Ⅰ<IGF-Ⅰ> 178 ng/mL(基準 155〜588)、コルチゾール11.2 μg/dL(基準 5.2〜12.6)。矯正視力は右 0.1、左 0.08。視野検査の結果、頭部造影 MRI の冠状断像及び矢状断像を別に示す。 適切な治療はどれか。

第111回国家試験 A28

20歳の女性。外陰部の強い疼痛を主訴に来院した。最終月経は20日前から5日間。月経周期は28日型、整。7日前に初めて性交渉を経験した。2日前から38.1℃の発熱があり、外陰部の疼痛が出現した。本日は疼痛がさらに増強し、排尿も困難となったため来院した。排尿時に外陰部の疼痛が強くなるため、水分を摂取していないという。 皮膚と眼の所見に異常を認めない。口腔内アフタを認めない。両側の外鼠径リンパ節の腫大と圧痛とを認める。腹部は平坦、軟で、圧痛と自発痛とを認めない。外陰部両側に発赤を伴う小水疱が複数みられる。一部の水疱が破れて浅い潰瘍を形成している。外陰部の写真を別に示す。 この患者で考えられるのはどれか。 ≪画像公開不可:外陰部潰瘍の所見≫

第111回国家試験 A29

70歳の男性。高熱と全身に拡大する皮疹とで入院中である。12 日前に急性扁桃炎のため自宅近くの診療所でペニシリン系抗菌薬と非ステロイド性抗炎症薬を処方された。扁桃炎は軽快したが、5日前から39.0 ℃の発熱とともに口唇の発赤と全身の紅斑が出現した。その後、紅斑の上に水疱とびらんが急速に拡大した。背部の写真を別に示す。 症状が改善した後に行う原因薬の検査法として適切なのはどれか。 ≪画像公開なし≫

第111回国家試験 A30

78歳の男性。下腹部痛と血尿とを主訴に来院した。1か月前から血尿が出現し、昨日からは下腹部痛も伴っている。4年前から夜間頻尿と排尿までに時間がかかることに対して、自宅近くの診療所で治療を受けている。 身長 165 cm、体重 64 kg。体温 36.8 ℃。脈拍 80/分、整。血圧 132/84 mmHg。呼吸数 16/分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。直腸指診で小鶏卵大、弾性硬の前立腺を触知し、圧痛を認めない。 尿所見:蛋白2+、糖(-)、潜血3+、沈渣に赤血球多数/1 視野、白血球多数/1 視野。腹部エックス線写真と腹部CTとを別に示す。尿培養を提出して抗菌薬の投与を開始した。 次に行う治療として最も適切なのはどれか。

第111回国家試験 A31

82歳の女性。腹痛と血便とを主訴に来院した。以前から時々便秘になること以外に自覚症状はなかったが、昨夜突然、左下腹部痛が出現し、直後に排便したところ血便であった。腹痛は、排便後一時的に軽減したが今朝から増強し、悪心を伴うようになった。その後も血便が続いたため受診した。10年前から自宅近くの診療所で高血圧症に対する治療を受けている。 意識は清明。身長 153 cm、体重 54 kg。体温 37.2 ℃。脈拍 88/分、整。血圧 120/84 mmHg。呼吸数 14/分。SpO2 98 %(room air)。腹部は平坦で、左下腹部に圧痛を認めるが、Blumberg徴候と筋性防御とを認めない。腸雑音は低下し、金属音を聴取しない。 血液所見:赤血球 350万、Hb 11.0 g/dL、Ht 43 %、白血球 9,200、血小板 38 万。血液生化学所見:尿素窒素 19 mg/dL、クレアチニン 1.2 mg/dL。CRP 5.0 mg/dL。立位と臥位の腹部エックス線写真を別に示す。 入院後の対応として適切なのはどれか。

第111回国家試験 A32

64歳の男性。2週間前から持続する右大腿部痛を主訴に来院した。発症時、痛みは安静時にはなく歩行時のみであったが、3日前から安静時痛も出てきたという。既往歴に特記すべきことはない。 血液所見:赤血球 478 万、Hb 12.3 g/dL、Ht 41 %、白血球 4,300、血小板 19 万。血液生化学所見:総蛋白 6.5 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL。CRP 0.1 mg/dL。右大腿骨エックス線写真を別に示す。 初期対応として適切なのはどれか。

第111回国家試験 A33

20 歳の男性。左陰囊の腫瘤を主訴に来院した。1年前から陰囊上部の腫瘤に気付いていた。夕方になると時々左陰囊に鈍痛を自覚することがあった。 立位での左陰囊上部の写真を別に示す。破線で囲まれた部位に腫瘤を触知する。腫瘤は柔らかく、仰臥位で縮小し立位で腹圧を加えると腫大する。臥位での破線部の安静時超音波像と腹圧時カラードプラ超音波像とを別に示す。 この患者に生じる可能性が高いのはどれか。

第111回国家試験 A34

55 歳の男性。全身の皮疹を主訴に来院した。1か月前から頭部、顔面、頸部および体幹に皮疹が出現し、徐々に拡大してきた。胸部の写真と皮膚生検の H-E 染色標本とを別に示す。 診断として最も考えられるのはどれか。

第111回国家試験 A35

69 歳の女性。呼吸困難と胸痛とを主訴に来院した。1時間前から突然、呼吸困難と胸痛が出現した。様子をみていたが、30分以上症状が軽快しないため来院した。既往歴に特記すべきことはない。自宅の修繕のため、ここ数日は夜間に自家用車の中で睡眠をとっていた。 身長 155 cm、体重 76 kg。体温 36.0 ℃。脈拍 104/分、整。血圧 110/80 mmHg。呼吸数 22/分。SpO2 91 %(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。胸部に圧痛を認めない。症状の呼吸性変動を認めない。 胸部エックス線写真で異常を認めない。心電図で洞性頻脈を認めるが他に異常を認めない。 この患者の診断に有用性が低いのはどれか。

第111回国家試験 A36

62歳の男性。全身倦怠感と下腿浮腫とを主訴に来院した。半年前から症状を自覚していた。自宅近くの医療機関を受診したところ、高血圧症と耐糖能異常とを指摘され、カルシウム拮抗薬と利尿薬とを処方された。しかし、血圧も症状も改善しなかったため、ホルモン異常を疑われて紹介されて受診した。 身長 174 cm、体重81 kg。血圧 152/90 mmHg。下腿には浮腫があり近位筋優位の筋力低下を認める。 血液生化学所見:血糖 184 mg/dL、HbA1c 6.5 %(基準 4.6〜6.2)、ACTH 140.4pg/mL(基準 60 以下)、コルチゾール 39.8 μg/dL基準 (5.2〜12.6)。 この患者について正しいのはどれか。

第111回国家試験 A37

65歳の男性。健康診断で胸水の貯留を指摘されたため来院した。30年間、造船業に従事していた。胸部CT で右側の胸水貯留と胸膜肥厚とを認める。 次に行うべき検査はどれか。

第111回国家試験 A38

61歳の男性。頭痛を主訴に来院した。中小企業の経営者で、毎年6月には閉め切った部屋で資料作成をしているが、今年の夏は節電のため冷房を使わずに業務にあたっていた。1週間前から食欲が低下し、本日の昼から頭部全体が締め付けられるような頭痛と全身倦怠感とを自覚したため受診した。尿量は減少しているという。 意識は清明。体温37.4℃。脈拍 80/分、整。血圧 114/76 mmHg。呼吸数24/分。SpO2 97 %(room air)。口腔内は乾燥しているが皮膚は発汗のため湿潤している。頸静脈の怒張は認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経学的所見に異常を認めない。 血液所見:赤血球509 万、Hb 18.0 g/dL、Ht 53 %、白血球 8,800、血小板 25 万。血液生化学所見:CK 290 U/L(基準 30〜140)、尿素窒素 23 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、血糖97 mg/dL、Na 141 mEq/L、K 3.9 mEq/L、Cl 105 mEq/L。CRP 0.0 mg/dL。 治療として最も適切なのはどれか。

第111回国家試験 A39

18 歳の男子。胸痛と呼吸困難とを主訴に来院した。ランニングの途中に突然の右胸部痛と呼吸困難とが出現し、約10分様子をみていたが呼吸困難が更に悪化したため来院した。 脈拍 104/分、整。血圧 90/60 mHg。SpO2 92 %(room air)。頸静脈の怒張を認める。呼吸音は右側で減弱、右胸部の打診は鼓音を呈している。酸素投与を開始し、胸部エックス線写真を撮影したところ右肺の完全虚脱と左側への縦隔偏位を認めた。 直ちに行う処置はどれか。

第111回国家試験 A40

52 歳の男性。前胸部痛のため救急車で搬入された。排便時に突然、前胸部痛が出現し気分が悪くなったため救急車を要請した。高血圧を指摘されていたがそのままにしていた。 心拍数 84/分、整。血圧 80/50 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2は測定不能である。四肢末梢の著明な冷感を認める。胸部エックス線写真と胸部CTとを別に示す。 この患者の所見として考えにくいのはどれか。