平成28年度(第111回)医師国家試験問題|午後-79問〜午後-60問

第111回国家試験 A41

50 歳の男性。健康診断で高血糖を指摘されて来院した。7年前の健康診断から指摘されていたが、仕事が忙しく医療機関は受診していなかった。仕事はデスクワークが主体である。 身長 175 cm、体重 75 kg。脈拍 72/分、整。血圧 162/92 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。下腿に浮腫を認めない。 尿所見:蛋白2+、糖1+、潜血(-)。血液所見:赤血球 550万、Hb 14.0 g/dL、Ht 43 %、白血球 6,800、血小板 30 万。血液生化学所見:総蛋白 7.8 g/dL、アルブミン 4.0 g/dL、尿素窒素 18 mg/dL、クレアチニン 0.8mg/dL、尿酸 7.0 mg/dL、血糖 220 mg/dL、HbA1c 7.8 %(基準 4.6〜6.2)、トリグリセリド 190 mg/dL、HDL コレステロール 40 mg/dL、LDL コレステロール160 mg/dL。 治療方針として適切なのはどれか。

第111回国家試験 A42

67 歳の男性。歩行時の両下肢痛を主訴に来院した。15 年前から高血圧症と脂質異常症とで内服治療中である。最近、10 分程度の歩行で両下肢痛が出現するようになった。安静にしていると軽快するという。 体温 36.5 ℃。脈拍 64/分、整。右上腕血圧 134/72 mmHg、足関節上腕血圧比は右 0.67、左 0.50(基準 0.9 以上)。入院後、下肢血管に対してステント留置術が行われた。左下肢の治療前、ガイドワイヤ通過後及び治療後の血管造影写真を別に示す。 ステントが留置された矢印で示す血管はどれか。

第111回国家試験 A43

69 歳の男性。膵腫瘤の増大を指摘されて来院した。4年前の人間ドックで初めて径 15 mm の膵腫瘤を指摘され、経過観察とされていたが、その後医療機関を受診していなかった。今回、人間ドックで腫瘤の増大を指摘され紹介されて受診した。 体温 36.2 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 132/80 mmHg。呼吸数 12/分。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知せず、圧痛を認めない。 血液所見:赤血球 402 万、Hb 14.0 g/dL、Ht 43 %、白血球 6,800、血小板 19 万。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dL、アルブミン 4.0 g/dL、総ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 23 U/L、ALT 22 U/L、ALP 213 U/L(基準 115〜359)、γ-GTP 17 U/L(基準8〜50)、アミラーゼ 42 U/L(基準 37〜160)、血糖 98 mg/dL。CRP 0.2 mg/dL。腹部造影CTと MRCPとを別に示す。腹部造影 CT で腫瘤の最大径は 35 mmである。 適切な手術はどれか。

第111回国家試験 A44

80 歳の男性。右胸部の疼痛を伴う皮疹を主訴に来院した。2日前から症状を自覚していた。昨日から次第に悪化し、今朝衣服に浸出液が付着していることに気付いたため受診した。右胸部の写真を別に示す。 適切な治療薬はどれか。

第111回国家試験 A45

72 歳の女性。右手が使いにくいことを主訴に来院した。3年前から料理のときに右手で炒めものをかき混ぜづらく、歩行時に右足を引きずると感じていたが、症状の進行は自覚しなかった。半年前、物を持って平地を歩いているときに小走りになって転倒した。そのころから徐々に右足の引きずりが強くなっているように感じている。10 年前から便秘で5年前から嗅覚の低下を自覚している。3年前に夫と死別してから抑うつ傾向となり、選択的セロトニン再取り込み阻害薬<SSRI>を服用している。半年前に娘と旅行をしたとき、睡眠中に寝言を言いながら手足をバタバタさせていたという。 表情は乏しいが、眼球運動は正常で眼振は認めない。右優位の筋強剛と無動を認めるが、振戦を認めない。四肢の腱反射は正常で、Babinski徴候は認めない。ドパミントランスポーター SPECTを別に示す。 最も考えられるのはどれか。

第111回国家試験 A46

75 歳の男性。コミュニケーションが取れないため家族に連れられて来院した。2年前から会話が指示代名詞ばかりとなり、次第に言葉数が少なくなった。周囲に対して関心を示さず、部屋に閉じこもるようになり、最近は目的もなく毎日決まった時刻に全く同じルートを徘徊し、制止しても言うことをきかないという。神経学的所見に異常を認めない。改訂長谷川式簡易知能検査は協力が得られない。 考えられるのはどれか。

第111回国家試験 A47

55 歳の女性。0回経妊0回経産婦。閉経48歳。不正性器出血を主訴に来院した。2か月前から断続的な性器出血がある。 身長 148 cm、体重 60 kg。体温 36.5℃。脈拍 76/分、整。内診で子宮は 10 cm に腫大、可動性は良好。付属器に異常を認めない。腟鏡診で外子宮口からの出血を認める。 行うべき検査として適切でないのはどれか。

第111回国家試験 A48

61 歳の女性。腹痛を主訴に来院した。1日前から上腹部の鈍痛を自覚し、次第に増悪してきたため受診した。腹痛は持続性であり、心窩部から臍周囲まで広範囲に認め、限局していないがやや右側に強い。悪心はあるが嘔吐はない。 体温 37.4℃。脈拍 72/分、整。血圧 120/72 mmHg。呼吸数 16/分。同部位に圧痛と軽度の反跳痛を認めるが筋性防御を認めない。便は軟便であるが水様下痢ではなく、血液は混じっていない。腸雑音はやや低下し、金属音は聴取しない。 血液所見:赤血球432 万、Hb 13.1 g/dL、Ht 39 %、白血球 15,500(桿状核好中球 32 %、分葉核好中球 58 %、好酸球1%、好塩基球1%、リンパ球8%)、血小板 29 万。血液生化学所見:尿素窒素 10 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL。CRP 5.7 mg/dL。腹部超音波検査で肝臓と胆囊とに異常を認めない。腹部 CT の水平断像と冠状断像とを別に示す。 治療として適切なのはどれか。

第111回国家試験 A49

53 歳の女性。2日前に発症した嗄声を主訴に来院した。喫煙歴はなく、飲酒は機会飲酒。50 歳ごろから高血圧症で内服治療中。 身長 156 cm、体重 57 kg。体温36.4 ℃。脈拍 84/分、整。血圧 148/86 mmHg。尿検査と血液検査とに異常を認めない。喉頭内視鏡像を別に示す。 最も考えられるのはどれか。。

第111回国家試験 A50

42 歳の男性。自力で動けなくなったため救急車で搬入された。2週間前から腰痛が増悪し、今朝から動けなくなった。2年前から定職に就かず路上生活を送っているという。 意識は清明。体温 37.2 ℃。心拍数 88/分、整。血圧 130/78 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 98 %(room air)。疼痛のため、左股関節を伸展できず、仰臥位になることもできない。両下肢に明らかな筋力低下を認めない。腱反射に異常を認めない。 赤沈 45 mm/1 時間。血液所見:Hb 13.2 g/dL、白血球 9,000。CRP3.4 mg/dL。搬入時の腰椎エックス線写真と右半側臥位での腰椎造影 MRI及び入院3日目の仰臥位での腰椎 MRI の T2 強調像とを別に示す。 治療方針を決定するために有用なのはどれか。

第111回国家試験 A51

65 歳の男性。咳嗽を主訴に来院した。1か月前から乾性咳嗽が続いている。既往歴に特記すべきことはない。喫煙は 20 本/日を 40 年間。 胸部エックス線写真で異常陰影を認める。喀痰細胞診で腺癌細胞を認める。胸部CT で縦隔リンパ節の腫大を認めない。頭部MRI で脳転移を認めない。肺野条件の胸部CTと FDG-PET の全身像とを別に示す。 適切な治療法はどれか。

第111回国家試験 A52

87 歳の男性。意識障害のため施設の職員に連れられて来院した。2日前から38℃台の発熱があり、今朝から意識レベルの低下が認められている。5年前から脳梗塞の後遺症で常時介護が必要な状態であり、1年前から家族による介護が困難となったため、特別養護老人ホームに入所している。胸部エックス線写真で右下肺野に浸潤影を認める。 この患者の肺炎の分類として正しいのはどれか。2つ選べ。

第111回国家試験 A53

40 歳の男性。発熱、右膝関節痛、左股関節痛および左足関節痛を主訴に来院した。4日前から左股関節痛が出現し、2日前には右膝関節痛と左足関節痛が出現した。関節痛は徐々に増悪し、立っていることができなくなったため受診した。2週間前に異性と性交渉をもったという。 体温 38.1 ℃。脈拍 80/分、整。血圧 130/60mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めず、肝・脾を触知しない。表在リンパ節は触知しない。 血液所見:赤血球 475 万、Hb14.2 g/dL、Ht 45 %、白血球 11,000、血小板 38 万。血液生化学所見:AST 20U/L、ALT 22 U/L、LD 202 U/L(基準 176〜353)、CK 45 U/L(基準 30〜140)、クレアチニン 0.7 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.0 mEq/L、Cl 103 mEq/L。免疫血清学検査:CRP 5.6 mg/dL、リウマトイド因子<RF>陰性。尿中クラミジア抗原陽性。 この患者で認められる可能性が高いのはどれか。2つ選べ。

第111回国家試験 A54

5歳の男児。咳嗽と呼吸困難とを主訴に両親に連れられて来院した。3日前から発熱、咳嗽および喘鳴が出現したため、かかりつけ医を受診し β2 刺激薬の吸入と経口副腎皮質ステロイドが処方された。昨夜から解熱したが呼吸困難のため夜間眠れなくなり、再度かかりつけ医を受診したところ喘鳴と鎖骨上窩の皮膚の握雪感とを認めたため紹介された。来院時、会話ができない状態であった。 この患児の胸部エックス線写真で予想される所見はどれか。2つ選べ。

第111回国家試験 A55

82 歳の女性。傾眠状態のため家族に連れられて来院した。生来健康だったが先月から血尿、口渇、便秘、悪心および食欲不振が出現していた。昨日から傾眠傾向となり増悪するため同居する息子夫婦が自家用車に乗せて連れてきた。 身長 152cm、体重 40 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 80/分、整。血圧 142/56 mmHg。呼びかけると開眼するが、すぐに閉眼する。眼瞼結膜は貧血様である。口腔内は著明に乾燥している。頸部と腋窩のリンパ節を触知しない。心尖部を最強点とするⅢ/Ⅵの収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟。右鼠径部に径約4cm、弾性硬、可動性不良の腫瘤を触知する。 尿所見:赤色調、蛋白1+、糖(-)、潜血3+、沈渣に赤血球多数/1 視野、異型性の強い上皮細胞多数/1 視野。血液所見:赤血球 380 万、Hb 10.8 g/dL、白血球 8,100、血小板 13 万。血液生化学所見:総蛋白 5.1 g/dL、アルブミン 3.2 g/dL、総ビリルビン 0.7 mg/dL、AST 29 U/L、LD 283 U/L (基準 176〜353)、ALP 146 U/L (基準 115〜359)、尿素窒素 23 mg/dL、クレアチニン 1.3 mg/dL、尿酸 11.1 mg/dL、血糖 198 mg/dL、HbA1c 6.4 % (基準 4.6〜6.2)、Na 140 mEq/L、K 3.5 mEq/L、Cl 99 mEq/L、Ca 15.0 mg/dL、P 2.5 mg/dL。 輸液とともに投与すべきなのはどれか。2つ選べ。

第111回国家試験 A56

50 歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。農業用の共同管理小屋の近くで倒れているのを近所の人が発見し、救急車を要請した。最近、うつ傾向のため自宅近くの医療機関を受診していたという。農作業に従事しており、一人暮らしである。 意識レベルは JCSⅡ-20。身長 165 cm、体重 60 kg。体温 36.0 ℃。心拍数 44/分、整。血圧 98/56 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 96 %(room air)。縮瞳を認める。皮膚は湿潤していて発赤を認めない。骨格筋の線維束攣縮を認める。腹部に異常を認めない。 尿所見:淡黄色透明、蛋白(-)、糖(-)。血液所見:赤血球 480 万、白血球 6,200、血小板 30 万。血液生化学所見:アルブミン 4.6 g/dL、総ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 28 U/L、ALT 35 U/L、LD 310 U/L(基準 176〜353)、ALP200 U/L(基準 115〜359)、γ-GTP 25 U/L(基準 8〜50)、コリンエステラーゼ 0 U/L(基準 400〜800)、アミラーゼ 45 U/L(基準 37〜160)、CK 20 U/L (基準 30〜140)、クレアチニン 1.0 mg/dL。動脈血ガス分析(room air):PaCO2 40 Torr、PaO2 98 Torr、HCO3- 24 mEq/L。 治療薬として適切なのはどれか。2つ選べ。

第111回国家試験 A57

50 歳の男性。頭痛と動悸とを主訴に来院した。半年前ごろから時々排便時や運動中に突然、頭痛と動悸とを感じることがあった。15分程度安静にしていると症状は自然に治まるが少し脱力感を感じるという。職場の産業医に勧められて血圧を測定したところ、発作時は 200/100 mmHg を超えるが治まった後は 110/60 mmHg程度に下がるという。 身長 175 cm、体重 60 kg。脈拍 96/分、整。血圧 150/92 mmHg。身体所見に異常を認めない。 尿所見:蛋白(±)、糖(-)、ケトン体(-)、潜血(±)。血液生化学所見:尿素窒素 20 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、空腹時血糖 118 mg/dL、HbA1c 5.9 % (基準 4.6〜6.2)、Na 141 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 104 mEq/L。胸部エックス線写真と安静時の心電図とに異常を認めない。 次に行うべき検査はどれか。2つ選べ。

第111回国家試験 A58

45 歳の男性。スポーツジムで運動中に突然の胸やけと吐き気が出現したため救急車で搬入された。 意識は清明。身長 170 cm、体重 70 kg。体温 36.2 ℃。心拍数88/分。血圧 136/96 mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 99 %(鼻カニューラ 2 L/分 酸素投与下)。心音と呼吸音とに異常を認めない。 血液所見:白血球 7,700。血液生化学所見:AST 75 U/L、ALT 50 U/L、LD 361 U/L(基準 176〜353)、尿素窒素 17 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、尿酸 6.4 mg/dL、血糖 115 mg/dL、Na 135 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Cl 102 mEq/L、トロポニンT陰性。心電図と胸部エックス線写真とを別に示す。モニター装着や静脈路確保などの処置を行った。 この患者を専門医に引き継ぐまでの間に、特に注意すべき合併症はどれか。3つ選べ。

第111回国家試験 A59

68 歳の女性。喀血を主訴に来院した。気管支内視鏡像を別に示す。 図の①〜④について、正しいのはどれか。3つ選べ。

第111回国家試験 A60

64 歳の女性。右肋骨痛を主訴に来院した。1か月前から、右側の胸部に痛みを感じるようになり、改善しないため受診した。既往歴に特記すべきことはない。 右第肋骨と右鎖骨内側部とに圧痛を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。浮腫を認めない。 血液所見:赤血球 278万、Hb 8.2 g/dL、白血球 3,800、血小板 15万。血液生化学所見:総蛋白 11.2 g/dL、アルブミン 2.4 g/dL、IgG 5,428 mg/dL(基準 960〜1,960)、IgA 19 mg/dL (基準 110〜410)、IgM 11 mg/dL(基準 65〜350)、総ビリルビン 0.5 mg/dL、AST 16 U/L、ALT 18 U/L、LD 185 U/L (基準 176〜353)、ALP 395 U/L (基準 115〜359)、尿素窒素 20 mg/dL、クレアチニン 1.8 mg/dL、尿酸 7.6 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 3.9 mEq/L、Cl 105 mEq/L。胸部エックス線写真と骨髄血塗抹 May-Giemsa 染色標本とを別に示す。 この患者の検査所見として考えられるのはどれか。3つ選べ。