令和元年度(第114回)医師国家試験問題|午後-99問〜午後-80問

第114回国家試験 A21

78歳の男性。皮下出血を主訴に来院した。1週前に誘因なく左上肢に皮下出血が出現し、その2日後には右上肢、そして今朝目が覚めると両側大腿部にも広範な皮下出血が出現した。労作時息切れもあり家族に付き添われて受診した。 意識は清明。身長168cm、体重58kg。体温36.3℃。脈拍104/分、整。血圧130/80mmHg。呼吸数24/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜は貧血様である。表在リンパ節を触知しない。胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢と側腹部に広範な紫斑を認める。尿所見に異常を認めない。 血液所見:赤血球284万、Hb 8.6g/dL、Ht 25%、白血球4,200(分葉核好中球66%、好酸球5%、好塩基球1%、単球13%、リンパ球15%)、血小板32万。PT-INR 1.1(基準0.9〜1.1)、APTT 72.2秒(基準対照32.2)。 診断に有用な検査はどれか。

第114回国家試験 A22

32歳の女性。未経妊。挙児希望を主訴に来院した。29歳時に結婚し避妊はしていないが、これまでに妊娠したことはない。不正性器出血はない。初経12歳。月経周期40〜90日、不整。身長160cm、体重70kg。内診で子宮は正常大で付属器を触知しない。 不妊症の検査として有用でないのはどれか。

第114回国家試験 A23

48歳の女性。めまいを主訴に来院した。今朝、庭仕事中にしゃがんだ姿勢から立ち上がったところ、一瞬、気が遠くなるようなめまいが出現し転倒したため受診した。意識消失はなかった。このようなめまいは4、5日前から時々あり、すべて立ち上がる時に出現していたという。 診断のために確認する優先度が最も低いのはどれか。

第114回国家試験 A24

18歳の男性。発熱、嘔吐および下痢を主訴に来院した。1週前に自宅で熱湯により、前腕に水疱を伴う熱傷を負った。自宅近くの診療所で軟膏を処方され様子をみていたが、本日になり発熱、嘔吐および褐色でやや粘度のある下痢が出現したため、家族に付き添われて受診した。意識レベルはJCS I-2。 身長 165 cm、体重 56 kg。体温 39.0 ℃。脈拍数 112/分、整。血圧 80/40 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 99%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。全身に紅斑を認める。熱傷部はびらんとなっている。 血液所見:赤血球 420万、Hb 13.2 g/dL、Ht 42%、網赤血球 1.2%、白血球 9,300(桿状核好中球 30%、分葉核好中球 45%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 6%、リンパ球 17%)、血小板 25万。血液生化学所見:総蛋白 7.5 g/dL、アルブミン 3.9 g/dL、総ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 28 U/L、ALT 18 U/L、LD 178 U/L(基準 120〜245)、ALP 120 U/L(基準 115〜359)、γ-GT 9 U/L(基準 8〜50)、CK 46 U/L(基準 30〜140)、尿素窒素 40 mg/dL、クレアチニン 1.2 mg/dL、Na 131 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 97 mEq/L。CRP 4.4 mg/dL。 原因微生物として最も考えられるのはどれか。

第114回国家試験 A25

30歳の男性。このところ仕事に身が入らず遅刻が目立つようになったため、上司からの勧めで産業医面談を受けた。面談で精神科受診を勧められ来院した。入社以来、事務職に携わってきたが、3か月前に営業職に異動した。約1か月前から平日は食欲が低下し、なんとなく元気が出なくなった。休みの前日は熟睡できるが、それ以外の日はなかなか寝つけず、一旦寝ついても職場の夢をみて夜中に目が覚めることが多くなった。欠勤はなく、休日は趣味のサーフィンを以前と変わらず楽しめているという。 初診時の対応として適切なのはどれか。

第114回国家試験 A26

38歳の初妊婦(1妊0産)。発熱、悪寒および腹部緊満を主訴に来院した。妊娠30週。妊娠経過は順調で胎児の発育も問題ないと言われていた。既往歴に特記すべきことはない。 意識は清明。身長 161 cm、体重 60 kg。体温 38.8 ℃。脈拍 96/分、整。血圧 120/74 mmHg。呼吸数 20/分。胎児心拍数陣痛図で頻脈を認めるが基線細変動は中等度、一過性頻脈を認めるが一過性徐脈は認めなかった。 尿所見:色調は黄色、比重 1.010、pH 6.0、蛋白(−)、糖(−)、ケトン体(−)、潜血(−)、沈渣に赤血球0〜1/HPF、白血球10〜19/HPF。血液所見:赤血球 388万、Hb 12.0 g/dL、Ht 35%、白血球13,100(桿状核好中球 17%、分葉核好中球 61%、好酸球 2%、好塩基球0%、単球 10%、リンパ球 10%)、血小板 25万。血液生化学所見:総ビリルビン 1.0 mg/dL、AST 32 U/L、ALT 24 U/L、尿素窒素 12 mg/dL、クレアチニン 0.5 mg/dL、血糖 98 mg/dL、Na 136 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Cl 100 mEq/L。尿培養と血液培養の検体を採取した後にセフトリアキソンの経静脈投与を開始した。翌日、血液培養が2セットとも陽性になったと連絡を受けた。連絡を受けた時点で体温 38.5 ℃、腹部緊満は持続していた。血液培養ボトル内容の塗抹Gram染色写真を別に示す。 適切な抗菌薬治療の方針はどれか。

第114回国家試験 A27

3歳の女児。3歳児健康診査で眼位異常を指摘されて来院した。視力は右0.3(0.5×+3.0D)、左0.4(0.8×+3.5D)。眼位写真を別に示す。調節麻痺薬点眼後の矯正視力は右(0.5×+6.0D)、左(0.9×+6.0D)であった。 治療として適切なのはどれか。

第114回国家試験 A28

3歳1か月の男児。3歳児健康診査で低身長を指摘され両親に連れられて受診した。在胎35週3日、母体妊娠高血圧症候群のため緊急帝王切開で出生した。出生体重2,160g(>10パーセンタイル)、身長44.0cm(>10パーセンタイル)。早産と低出生体重児のため2週間NICUに入院した。NICU入院後2日間は哺乳不良を認めた。1歳6か月児健康診査で歩行可能であり、「ママ」などの有意語は数語認められた。低身長、低体重のため6か月ごとの受診を指示されていたが受診していなかった。偏食はなく保育園で他の同年齢の子どもと比較して食事量は変わらない。自分の年齢、氏名を答えることができる。 心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。外性器異常は認めない。父の身長は175cm、母の身長は160cm。患児の成長曲線を別に示す。 可能性が高い疾患はどれか。

第114回国家試験 A29

50歳の男性。糖尿病治療の目的で来院した。1か月前から両眼のかすみと視力低下を自覚して自宅近くの医療機関の眼科を受診したところ、両眼増殖糖尿病網膜症と診断され、内科を紹介されて受診した。これまで健康診断は受けていなかった。職業は自営業でデスクワークをしている。この1年間で体重は8kg減少している。 身長 170 cm、体重 62 kg。脈拍 72/分、整。血圧 182/102 mmHg。両側アキレス腱反射は消失している。両側足関節の振動覚は著明に低下。尿所見(空腹時):蛋白 3+、糖 3+、ケトン体 1+、潜血(−)。 血液生化学所見(空腹時):尿素窒素 38 mg/dL、クレアチニン 2.4 mg/dL、血糖 348 mg/dL、HbA1c 14.6%(基準 4.6〜6.2)、トリグリセリド 362 mg/dL、HDLコレステロール 28 mg/dL、LDLコレステロール 128 mg/dL、Na 136 mEq/L、K 5.2 mEq/L、Cl 98 mEq/L。 この患者の食事療法として正しいのはどれか。

第114回国家試験 A30

72歳の男性。左足のしびれ感と歩行困難を主訴に来院した。進行期肝癌の加療中で、6か月間で体重が5kg減少した。本日、自宅で足を組んだ状態で1時間程度テレビを見た後に歩こうとすると、床に左足のつま先が引っかかり、何度か転びそうになったため来院した。 意識は清明。身長162cm、体重49kg。体温36.3℃。脈拍68/分、整。血圧108/72mmHg。呼吸数16/分。SpO2 98%(room air)。左足背部に鈍いしびれ感がある。下腿に腫脹は認めず、足背動脈は両側とも触知良好。腱反射は両側上下肢とも正常。徒手筋力テストで、上肢は左右差なく正常、下肢(右/左)は股関節屈曲5/5、膝関節伸展5/5、足関節背屈5/1であった。 腰椎MRIで明らかな異常を認めない。 確定診断のため有用な検査はどれか。

第114回国家試験 A31

A 26-year-old woman presented to the emergency room with palpitations andshortness of breath that started suddenly while she was eating breakfast.Although the health-screening examination performed three weeks ago showeddelta waves in her ECG, echocardiography taken at a nearby hospital showed noabnormal findings. At presentation, she was slightly hypotensive with a bloodpressure of 96/68 mmHg. Her ECG on admission showed a narrow QRS-complextachycardia at a rate of 180/min. Neither ST elevation nor T wave abnormalitywas present. What is the most probable diagnosis of the arrhythmia?

第114回国家試験 A32

26歳の女性。NSAIDの追加処方を希望して来院した。15歳ころから月経時に下腹痛があり市販の鎮痛薬を常用していた。6か月前から月経痛が強くなり受診した。精査の結果、子宮と卵巣に異常がなく機能性月経困難症と診断され、NSAIDを処方された。その後も疼痛が続いたため、NSAIDを倍量にして連日服用していたという。本日、NSAIDのさらなる増量を希望して来院した。 追加処方にあたり注意すべき事項として誤っているのはどれか。

第114回国家試験 A33

23歳の男性。呼吸困難を主訴に来院した。2週前から続く咳嗽および喀痰、4日前から発熱がある。1か月前から喫煙を始めたという。 呼吸数22/分。SpO2 89%(room air)。心音に異常を認めない。両側背部にfine cracklesを聴取する。胸部エックス線写真で両側びまん性のすりガラス陰影および浸潤影を認める。 胸部CTでは、小葉間隔壁の肥厚を伴うすりガラス陰影、区域を超えた浸潤影を認めた。肺生検組織で著明な好酸球浸潤を認めた。気管支肺胞洗浄液中の好酸球は42%と増加を認めた。 本疾患の特徴として誤っているのはどれか。

第114回国家試験 A34

84歳の男性。全身倦怠感と尿量の減少を主訴に来院した。3年前に胃癌の診断で幽門側胃切除術を受けたが、2年前から受診を中断している。3週前から全身倦怠感が出現し、5日前から尿量が減少したため受診した。 意識は清明。体温 36.7 ℃。脈拍 80/分、整。血圧 140/84 mmHg。呼吸数 18/分。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、上腹部に手術痕を認める。両下肢に圧痕性浮腫を認める。 血液所見:赤血球 382万、Hb 11.1 g/dL、Ht 35%、血小板 10万。血液生化学所見:アルブミン 3.2 g/dL、総ビリルビン 1.3 mg/dL、AST 38 U/L、ALT 42 U/L、LD 230 U/L(基準 120〜245)、尿素窒素 40 mg/dL、クレアチニン 2.8 mg/dL、Na 132 mEq/L、K 5.6 mEq/L、Cl 98 mEq/L、CEA 7.8 ng/mL(基準 5以下)、CA19-9 69 U/mL(基準 37以下)。CRP 2.1 mg/dL。腹部超音波検査で膀胱内に尿を認めない。胸部エックス線写真で心胸郭比 56%。腹部単純CTを別に示す。 まず行う処置として適切なのはどれか。

第114回国家試験 A35

67歳の男性。意識障害のため救急車で搬入された。玄関先で倒れているところを妻が発見し、救急車を要請した。4日前にろれつの回らない状態が出現したが翌日には軽快していた。2日前の夕方から38℃台の発熱があった。昨日には再びろれつの回らない状態が出現した。脳梗塞の既往はない。意識レベルはGCS 11(E3V3M5)。 身長 170 cm、体重 68 kg。体温 38.2 ℃。心拍数 88/分、整。血圧 112/78 mmHg。眼瞼結膜は貧血様、眼球結膜に黄染を認める。四肢に紫斑を認める。 血液所見:赤血球214万、Hb 6.5 g/dL、Ht 20%、白血球 7,400、血小板 0.4万。血液生化学所見:総蛋白 7.5 g/dL、アルブミン 3.7 g/dL、総ビリルビン 3.9 mg/dL、直接ビリルビン 0.5 mg/dL、AST 59 U/L、ALT 29 U/L、LD 2,350 U/L(基準 120〜245)、ALP 216 U/L(基準 115〜359)、尿素窒素 40 mg/dL、クレアチニン 2.8 mg/dL、尿酸 19.2 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.1 mEq/L、Cl 101 mEq/L。頭部MRIでは急性期の微細な多発性脳梗塞を指摘された。末梢血塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。 この患者の診断を確定するために最も重要な検査項目はどれか。

第114回国家試験 A36

4歳の男児。体幹の白斑を主訴に父親に連れられて来院した。生後5か月で体幹に白斑があるのを父親が発見した。その後、増数してきたため受診した。1歳時にけいれんの既往がある。受診時、臀部と大腿部を中心に大小の白斑を認める。顔面では鼻部中心に丘疹が散在している。大腿部の写真を別に示す。 この患児で思春期以降に出現する可能性が高いのはどれか。

第114回国家試験 A37

68歳の男性。上前胸部痛を主訴に来院した。2年前から両手掌に皮疹が繰り返し出現していた。1年前から上前胸部痛を自覚していたという。1か月前から上前胸部の疼痛が増悪したため受診した。両手掌に膿疱性皮疹を多数認める。両側の近位指節間関節の腫脹と圧痛を認める。両側胸鎖関節の骨性肥厚と熱感および圧痛を認める。この患者の胸部エックス線写真を別に示す。 関節病変の原因として最も考えられるのはどれか。

第114回国家試験 A38

76歳の男性。肺癌治療のため入院中である。根治術として、右肺下葉切除およびリンパ節郭清術を施行された。胸腔ドレーンからの軽度の空気漏れが手術直後から観察されたが、胸部エックス線写真では肺の膨張に問題はなかった。術後3日目、胸腔ドレーンからは依然空気漏れを認めている。手術直後の胸部エックス線写真及び術後3日目の胸部エックス線写真を別に示す。 この患者で認められる所見はどれか。

第114回国家試験 A39

44歳の女性。左下肢の腫脹を主訴に来院した。1年前から発熱と口腔内や陰部に痛みを伴うびらんと潰瘍、移動性の関節痛、下腿から足部の頭尾方向に延びる発赤を伴う有痛性皮疹を繰り返していた。3週前から左下腿の腫脹、疼痛が出現し改善しないため受診した。 意識は清明。身長 158 cm、体重 45 kg。体温 39.9 ℃。脈拍 100/分、整。血圧 96/60 mmHg。口唇粘膜にアフタ性口内炎を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。表在リンパ節の腫大を認めない。左下腿から足関節部にかけて軽度の熱感を認める。四肢関節に腫脹や圧痛を認めない。 尿所見:蛋白(−)、潜血(−)、白血球3+。検査所見:赤沈 73mm/1時間。血液所見:赤血球 354万、Hb 9.1g/dL、Ht 28%、白血球 8,400(桿状核好中球 5%、分葉核好中球 67%、好酸球 1%、単球 10%、リンパ球 17%)、血小板 36万、PT-INR 1.2(基準 0.9〜1.1)、APTT 27.8秒(基準対照 32.2)、フィブリノゲン 525 mg/dL(基準 186〜355)、Dダイマー 4.1 μg/mL(基準1.0以下)。血液生化学所見:総蛋白7.3g/dL、アルブミン 2.3 g/dL、AST 14 U/L、ALT 11 U/L、LD 144 U/L(基準 120〜245)、尿素窒素 9.1 mg/dL、クレアチニン 0.4 mg/dL、CK 51 U/L(基準 30〜140)。CRP 12 mg/dL。両下肢の写真及び鼠径部の造影CTを別に示す。 最も考えられるのはどれか。

第114回国家試験 A40

33歳の男性。下痢を主訴に来院した。2週間東南アジアを観光旅行し、2日前に帰国した。帰国日から水様下痢が出現し、昨日から 38 ℃台の発熱が出現したため受診した。悪心はあるが、嘔吐はない。 体温 38.3 ℃。脈拍 92/分、整。血圧 120/78 mmHg。呼吸数 16/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腸雑音が亢進している。腹部全体に軽度の圧痛を認めるが、反跳痛は認めない。皮疹は認めない。 診断を確定するための検査で最も適切なのはどれか。