令和2年度(第115回)医師国家試験問題|午後101問〜午後120問
第115回国家試験 D21
11か月の男児。今朝、血便様の便があったため母親に連れられて来院した。それまで下痢や嘔吐はなく、ずっと機嫌はよい。食欲はあり水分摂取も良好である。昨日、初めてブドウ果汁入りジュースをたくさん飲んだとのことである 。浣腸を行い、便性を観察したところ赤紫色の軟便であった。 身長 75.1 cm、体重 9 kg。体温 37.0 ℃。脈拍 108/分、整。SpO₂ 98% (room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟。便潜血検査は陰性。腹部超音波検査で異常を認めない。 患者の家族への説明として正しいのはどれか。
第115回国家試験 D22
75歳の女性。左変形性膝関節症に対して、人工膝関節全置換術を受けた。翌朝、夜勤看護師から発熱していると報告された。 意識は清明。体温 37.4 ℃。脈拍 92/分、整。血圧 96/50 mmHg。呼吸数 20/分。SpO₂ 98%(room air)。 血液所見:赤血球 360万、Hb 10.1 g/dL、Ht 34%、白血球 9,800(桿状核好中球 5%、分葉核好中球 60%、好酸球 3%、好塩基球 2%、単球 3%、リンパ球 27%)、血小板 20万。血液生化学所見:総蛋白 8.0 g/dL、アルブミン 3.4 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、直接ビリルビン0.3mg/dL、AST 37 U/L、ALT 18 U/L、LD 208 U/L(基準 120~245)、ALP 320 U/L(基準 115~359)、γ-GT 9U/L(基準 8~50)、CK 350 U/L(基準30~140)、尿素窒素 28 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、血糖 120 mg/dL。CRP 8.7 mg/dL。創部に異常を認めない。 今後の対応として適切でないのはどれか。
第115回国家試験 D23
13歳の女子。発熱と咳嗽を主訴に母親に連れられて来院した。4日前から発熱と咳嗽が出現し持続したため受診した。 身長 154 cm、体重 69 kg。体温 38.6 ℃。脈拍 100/分、整。血圧 116/76 mmHg。呼吸数 20/分。SpO₂ 98 % (room air)。咽頭は軽度発赤を認める。心音に異常を認めない。左側の胸部中央部にcoarse cracklesを聴取する。 血液所見:赤血球 508万、Hb 14.3 g/dL、Ht 41 %、白血球 5,300(好中球 45 %、好酸球 2 %、好塩基球 1 %、単球 10 %、リンパ球 42 %)、血小板 30万。血液生化学所見:AST 22 U/L、ALT 24 U/L、LD 238 U/L(基準 120-245)。CRP 3.6 mg/dL。新型コロナウイルス〈SARS-CoV-2〉PCR検査は陰性であった。胸部エックス線写真及び肺野条件の胸部CTを別に示す。 次の中で最も疑う感染症はどれか。
第115回国家試験 D24
27歳の女性。下痢が持続することを主訴に来院した。インドに4か月間滞在し、10日前に帰国した。帰国する1週前から下痢が始まった。帰国後に受診した際にレボフロキサシンを処方された。その後 1週間服薬 しているが、下痢が持続しているという。便の顕微鏡写真を別に示す。 この患者の治療で最も適切なのはどれか。
第115回国家試験 D25
38歳の男性。 8か月前に高所から転落して頸髄損傷と診断された。退院に向けたリハビリテーションを施行している。自宅はバリアフリー改修工事を行った。 現在の筋力は徒手筋カテストで両側とも上腕二頭筋5、撓側手根伸筋5、上腕三頭筋4、深指屈筋0、小指外転筋0である 。体幹筋と下肢筋の随意運動は不可能である。両上肢尺側、体幹および両下肢の感覚は脱失している。 退院後の屋内での移動手段として考慮すべきなのはどれか。
第115回国家試験 D26
11か月の男児。出生時に外陰部の異常を指摘されていたが、転居を契機に母親に連れられて受診した。在胎36週、出生体重 2,640 g、Apgarスコア 7点(1分)、9点(5分)であった。 体重 9 kg。体温 36.5 ℃。心拍数 94 /分、整。SpO₂ 97% (room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・牌を触知しない。左精巣は陰嚢内に触れ、右精巣は陰嚢内に触知しない。陰嚢の写真を別に示す。 家族への説明として正しいのはどれか。
第115回国家試験 D27
74歳の女性。胸部エックス線で異常陰影を指摘され来院した。3年前に直腸癌に対する手術を施行され、経過観察中である。昨年は異常を指摘されていない。胸部エックス線写真及び胸部造影CTを別に示す。 診断確定のために最も有用な検査はどれか。
第115回国家試験 D28
25歳の女性。異性関係や職場の人間関係のトラブルがあるたびにリストカットを繰り返すため、母親に伴われて精神科を受診した。本人はイライラ感と不眠の治療のために来院したという 。最近まで勤めていた職場は、複数の男性同僚と性的関係をもっていたことが明らかとなり、居づらくなって退職した。親しい友人や元上司に深夜に何度も電話をかけるなどの行動があり、それを注意されると、怒鳴り散らす、相手を罵倒するなどの過激な反応がみられた。相手があきれて疎遠になると、SNSで自殺をほのめかし、自ら救急車を呼ぶなどした。一方、機嫌がよいと好意を持っている相手にプレゼントしたり、親密なメールを何度も出したりするなど感情の起伏が激しい。 この患者にみられることが予想される特徴はどれか。
第115回国家試験 D29
4か月の男児。健康診査で体重増加不良と定頸の遅れを指摘され両親とともに来院した。母親は35歳で2妊2産で本児出産の5年前に胃癌のため胃全摘術を受け貧血治療薬を服用していた。 3年前の第 1子妊娠を契機に服薬は自己中断した。今回の妊娠では妊娠前から妊娠 2か月まで、脊髄髄膜瘤予防のため栄蓑補助食品を摂取した。児は在胎39週6日、2,580 gで出生した。完全母乳栄養で育てられていた。 身長 62.0 cm(-0.9 SD)、体重 5,365 g(-2.0 SD)。心拍数 100/分、整。呼吸数 20 /分。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に異常は認めない。皮膚は蒼白だった。Moro反射は認めない。筋緊張は正常。 血液所見:赤血球 230万、Hb 8.2 g/dL、Ht 23 %、白血球 8,000、血小板 32万。 治療として正しいのはどれか。
第115回国家試験 D30
32歳の女性。流産を繰り返すことを主訴に来院した。これまでに3回妊娠したが、いずれも胎児心拍確認後、妊娠12週、21週、17週で心拍が消失し流産した。3年前に左下肢血栓症で治療を受けた。 子宮と卵巣とに異常を認めない。甲状腺ホルモンと下垂体ホルモンとに異常を認めない。月経周期は28日、基礎体温は2相性、高温相は14日間である。血液検査では、APTT 52.0 秒(基準対照 32.2)、抗リン脂質抗体陽性。夫婦の末梢血染色体は正常核型。 次回妊娠中に投与する薬として適切なのはどれか。
第115回国家試験 D31
19歳の男性。日中の耐えがたい眠気を主訴に来院した。約3年前から日中に突然の眠気に襲われ眠り込んでしまうことがあったが、アルバイトや授業で疲れているためと思っていた。先日、大学の講義中に教員に指名され質問に答えている最中に突然の眠気に襲われ、眠り込んでしまうことがあったため、心配した教員に勧められて受診した。突然の眠気以外にも、友人との会話で爆笑した時や驚いた時に急に脱力が生じて倒れこんでしまうことがあった。また、入眠時に人の気配を感じたり、金縛りにあって体の自由が利かなくなったりしたこともあったという。 神経診察で異常はなく、頭部MRIでも異常はみられなかった。特記すべき既往はない。 診断に有用な検査はどれか。
第115回国家試験 D32
78歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。約1か月前から全身倦怠感があり増悪するため受診した。 意識は清明。脈拍 88/分、整。血圧 130/84 mmHg。眼瞼結膜は貧血様であるが眼球結膜に黄染を認めない。胸骨右縁第2肋間を最強点とする収縮期駆出性雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 血液所見:赤血球 185万、Hb 6.5 g/dL、Ht 21%、白血球 2,600(骨髄芽球 0%、桿状核好中球 3%、分葉核好中球 50%、好酸球 1%、好塩基球 1%、単球 2%、リンパ球 43%)、血小板 9.2万。血液生化学所見:総蛋白6.7g/dL、アルブミン 3.4 g/dL、総ビリルビン 0.7 mg/dL、AST 21 U/L、ALT 11 U/L、LD 240 U/L(基準 120〜245) 、尿素窒素 17 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、尿酸 5.2 mg/dL、血清鉄 120 μg/dL(基準 80〜170)、TIBC 280 μg/dL(基準 290〜390)、フェリチン 120 ng/mL (基準 20〜120) 、エリスロポエチン 180 mIU/mL(基準 4.2〜23.7)。骨髄は正形成で骨髄塗抹標本では3系統の造血細胞に異形成を高頻度に認めた。骨髄細胞の染色体は正常核型であった。 この患者への対応で適切なのはどれか。
第115回国家試験 D33
58歳の女性。母指と前腕の皮疹を主訴に来院した。2か月前から右母指に紅色結節が出現し、2週前から手背と前腕にも同様の結節が多発してきたため受診した。水族館で飼育員として勤務している。 受診時、同部位に径15mmまでの発赤を伴う結節が多発し、表面は一部びらん、痂皮を伴う。局所熱感と圧痛とを認めない。皮膚生検で類上皮細胞肉芽腫と非特異的炎症像が混在する。胞子状菌要素を認めない。生検組織片の真菌培養は陰性、小川培地で7週後に白色コロニーを形成した。手と前腕の写真を別に示す。 考えられる疾患はどれか。
第115回国家試験 D34
65歳の女性。便秘を主訴に来院した。半年前から排便回数は2回/週程度であり、便の性状は兎糞様である。排便後、肛門を拭いたトイレッ トペーパーに赤い血液が付着することがある。腹部診察の後、直腸・肛門の診察を行うこととした。 診断のために確認する優先度が最も低いのはどれか。
第115回国家試験 D35
52歳の男性。心電図異常の精査目的で来院した。2週前、初めて受けた健康診断で心電図異常を指摘されたため受診した。毎日、血圧を自己測定しており、収縮期血圧は150〜170 mmHg程度で推移している。減塩や体重コントロールなどを自己判断で行っている。母親は22年前に死亡(詳細不明)。父親と妹には健康上の問題はない。喫煙は25本/日を20年間。 意識は清明。身長 179 cm、体重 82 kg。体温 36.0 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 152/90 mmHg。呼吸数 14/分。SpO₂ 98 % (room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 12誘導心電図では、健康診断と同様の異常所見を認めた。心エコー検査を行ったところ、生理検査室から左心室壁厚が20mmと肥厚を認めるとの連絡が入った。 この時点で鑑別すべき疾患に含まれないのはどれか。
第115回国家試験 D36
17歳の女子。無月経を主訴に来院した。これまでに一度も月経がなかったが、2歳上の姉も月経がないので心配していなかった。 身長 168 cm、体重 55 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 124/76 mmHg。呼吸数 20/分。乳房は発達している。腋毛はない。外性器は女性型で、陰毛を認めない。内診では腟は4cmの盲端で子宮腟部は認めない。右側鼠径部に径2cmの可動性のある腫瘤を触知する。 この患者にあてはまるのはどれか。
第115回国家試験 D37
76歳の女性。背部痛とふらつきを主訴に来院した。3か月前に自宅で転倒した後に背部痛があったという。自宅近くの診療所で腰椎圧迫骨折と診断され、コルセットと鎮痛薬の処方を受けた。その後疼痛は軽減していたが、2週前に背部痛が再発し、1週前から歩行時にふらつくようになった。5年前に乳癌の手術を受けてる。 身長 148 cm、体重 50 kg。歩容は杖使用で不安定、円背があり、胸腰椎部に圧痛と叩打痛を認める。上肢の神経診察で異常を認めない。感覚障害を認めない。徒手筋カテストで右腸腰筋3、右大腿四頭筋3、右前腔骨筋3の筋力低下を認めた。胸腰椎エックス線写真を別に示す。 まず行うべき検査はどれか。
第115回国家試験 D38
64歳の男性。両側顎下部の腫脹を主訴に来院した。1年前から家人に両まぶたが腫れていると指摘されるようになった。2週前から両側顎下部に痛みを伴わない腫脹が出現し、腫れが持続するため受診した。 体温 36.5 ℃。脈拍 64/分、整。血圧 110/76 mmHg。両側顎下部に径2cmの腫瘤を触知し、圧迫により唾液流出を認める。圧痛はない。咽頭、喉頭に腫瘤性病変を認めない。 血液所見:赤血球 445万、Hb 14.6 g/dL、Ht 44%、白血球 5,500、血小板 27万。血液生化学所見:総蛋白 7.8 g/dL、アルブミン 4.5 g/dL、IgG 1.714 mg/dL(基準 960〜1,960)、IgA 274 mg/dL(基準 110~410)、IgM 55 mg/dL(基準 65~350)、IgG4 515 mg/dL(基準4.8〜105)、総ビリルビン 2.1 mg/dL、AST 26 U/L、ALT 35 U/L、γ-GT 118 U/L(基準 8〜50)、アミラーゼ 170 U/L(基準37〜160)、尿素窒素 18 mg/dL、クレアチニン 1.0 mg/dL、血糖 124 mg/dL、HbA1c 6.3%(基準 4.6〜6.2)。免疫血清学所見: 抗核抗体陰性、リウマトイド因子〈RF〉陰性、CH₅₀ 20 U/mL(基準 30〜40)、C3 38 mg/dL(基準 52〜112)、C4 8 mg/dL(基準 16〜51)。頸部造影CTを別に示す。右顎下腺生検病理組織では、著明なリンパ球、形質細胞の浸潤と線維化を認めた。免疫染色ではIgG4/IgG陽性細胞比50%、IgG4陽性形質細胞50/HPFであった。 この患者で認める可能性が低い所見はどれか。
第115回国家試験 D39
74歳の男性。歩行障害、見当識障害および尿失禁を主訴に来院した。約3か月前から開脚で小刻みな歩行をする、ようになった。 2週前より動作が緩慢となり、日付を間違えるようになった。1週前から尿失禁をするようになったため受診した。 意識はJCSⅠ-2。体温 36.5 ℃。脈拍 86/分、整。血圧 142/88 mmHg。呼吸数 14/分。SpO₂ 97% (room air)。Mini-MentalState Examination〈MMSE〉23点(30点満点) 。頭部MRIのFLAIR水平断像及びT1強調冠状断像を別に示す。 確定診断と治療方針の決定に有用なのはどれか。
第115回国家試験 D40
60歳の男性。健康診断で赤血球増多を指摘され来院した。喫煙歴は20本/日を40年間。 身長 172 cm、体重 65 kg。眼瞼結膜は充血、眼球結膜に黄染を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 血液所見:赤血球 620万、Hb 19 g/dL、Ht 55%、白血球 8,800(桿状核好中球 4%、分葉核好中球 58%、好酸球 2%、単球 6%、リンパ球 30%)、血小板 57万。血液生化学所見:総蛋白 6.7 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、総ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 20 U/L、ALT 18 U/L、LD 220 U/L(基準 120〜245)、尿素窒素 16 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、尿酸 4.2 mg/dL、エリスロポエチン 4.0 mIU/mL(基準 4.2〜23.7)。 この患者で予想される検査所見はどれか。