令和2年度(第115回)医師国家試験問題|午後-19問〜午後0問
第115回国家試験 B26
82歳の男性。発熱、嘔吐および水様下痢を主訴に来院した。3日前から38℃前後の発熱、嘔吐および1日8回の水様下痢が持続しているという。経口水分摂取が困難であるため入院した。入院時検査で便中ノロウイルス抗原が陽性であった。 診察にあたり、①アルコール手指消毒を行ったのち、②ビニールガウンを着用し、③プラスチック手袋を着用した。その後腹部の聴診と触診を行った。診察後はプラスチック手袋とビニールガウンを外し、④聴診器を白衣のポケットにしまい、⑤石けんと流水での手洗いを行った。 下線部のうち感染対策として誤っているのはどれか。
第115回国家試験 B27
82歳の男性。気が遠くなることを主訴に来院した。日常の活動度は最大でも5分程度の杖歩行である。2か月前に行った健康診断で心房細動を初めて指摘されたが、症状に乏しいため医療機関を受診していなかった。昨日、家の中で一時的に意識が遠のき転倒するというエピソードが2回あった。心配になった家人に連れられて来院した。 来院時の意識は清明。脈拍96/分、不整。血圧136/78mmHg。呼吸数16/分。SpO₂97% (room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。 この時点で行う検査として適切でないのはどれか。
第115回国家試験 B28
63歳の男性。病院の待合室で倒れているところを医療スタッフが発見した。患者の意識と自発呼吸はなく、頸動脈は触知できなかった。心停止状態と判断し、心肺蘇生を開始した。すぐに心電図モニターを装着し、胸骨圧迫を一時中断してモニター画面を確認すると、心拍数20/分の波形がみられた。このとき、患者の意識はないままで、頸動脈も触知できなかった。 次に行うべき処置はどれか。
第115回国家試験 B29
60歳の男性。突然起こった激しい後頭部痛、悪心および嘔吐を主訴に来院した。症状出現後、後頭部痛は少しやわらいだが、市販の鎮痛薬を服薬しても継続したため受診した。 来院時、意識は清明で項部硬直は認めなかった。頭部CTを別に示す。 診断として最も考えられるのはどれか。
第115回国家試験 B30
2歳の男児。発熱、咳嗽および喘鳴を主訴に母親に連れられて来院した。数日前から鼻汁と咳嗽を認め、今朝から発熱が出現し、息苦しそうであったため受診した。 意識は清明。① 体温37.8℃。② 脈拍120/分、整。③呼吸数48/分。④SpO₂ 98 % (room air)。⑤毛細血管再充満時間1秒。呼気性喘鳴を聴取する。顔色はやや不良で、口唇チアノーゼは認めない。咽頭発赤を認める。胸骨上部と肋間に陥没呼吸を認める。 下線部のうち緊急性が高いことを示唆するのはどれか。
第115回国家試験 B31
42歳の男性。発熱と咳嗽を主訴に来院した。3日前から38℃台の発熱と咳嗽が出現した。昨日から黄色調の喀痰も伴い、症状が悪化してきたため受診した。3年前に高血圧症と診断され、降圧薬の内服治療を受けている。 意識は清明。体温38.2℃。脈拍98/分、整。血圧 126/68 mmHg。呼吸数 26/分。SpO₂ 93 % (room air)。眼瞼結膜は蒼白。心雑音を聴取しない。右下側胸部にcoarse cracklesを聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 血液所見:赤血球 290万、Hb 8.2 g/dL、Ht 26%、白血球 54,300(芽球 95%、分葉核好中球 1%、単球 1%、リンパ球 3%)、血小板 3.2万。血液生化学所見:総蛋白 7.8 g/dL、アルブミン 3.3 g/dL、AST 38 U/L、ALT 20 U/L、LD 1,863 U/L(基準120〜245)、ALP 288 U/L(基準 115〜359)、尿素窒素 35 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL。CRP 12 mg/dL。喀痰Gram染色でGram陽性双球菌を認める。尿中肺炎球菌迅速抗原検査が陽性である。胸部エックス線写真で右中下肺野に浸潤影を認める。 この患者の診療録を作成するにあたり、プロブレムリストにあげるプロブレムとして適切でないのはどれか。
第115回国家試験 B32
A 60-year-old man presented with sensory disturbance of his fingers and toes. He lived alone and drank alcohol every day. The amount of his alcohol intake was over 60 g/day. He had muscle weakness and burning sensation of his extremities.Examinations showed nystagmus and heart failure. Which one of the following vitamins is related to his symptoms?
第115回国家試験 B33
26歳の男性。研修医。診療中にHIV抗原・抗体陽性者の体液に曝露したことを指導医に報告してきた。オートバイの転倒事故による多発外傷で救急搬送された38歳の男性患者の診療をした。意識障害のため当初は患者の基本情報がなかったが、駆け付けた患者家族によりHIV感染者であることが判明した。事実が判明するまでに、研修医は気管挿管、末梢静脈路の確保、血液検体採取、尿道カテーテル留置を行った。いずれも標準予防策として手袋、サージカルマスク及びプラスチックエプロンを着用した。針刺しなどの受傷はないが、尿道カテーテル留置の際に腕の皮膚に患者の尿が飛散した。 研修医に対する指導医の対応として誤っているのはどれか。
第115回国家試験 B34
4 歳の男児。1 週間持続する咳嗽を主訴に母親に連れられて来院した。母親と診察医との会話を示す。医師:「今日はどうされましたか」 母親:「咳が1週間続いているのできました」 医師:「①症状について詳しく教えてください」 母親:「咳は夜寝ているときと明け方が多いです。日中はあまり出ていません。咳とともに胸のあたりがゼーゼーいっている感じがします」 医師:「②熱や鼻汁はありますか」 母親:「ありません」 医師:「③周囲に同じような症状の人はいますか」 母親:「いません」 医師:「④食べ物や薬のアレルギーはありますか」 母親:「卵アレルギーがあります」 医師:「⑤ご両親にアレルギーはありますか」 母親:「私がアトピー性皮膚炎です」 医師:「それでは診察しましょう」 下線部の質問の中で開放型質問はどれか。
第115回国家試験 B35
68歳の女性。黄疸を主訴に来院した。2 週前から倦怠感を自覚し、1 週前に感冒症状があり市販の総合感冒薬を服用した。昨日、家族から眼の黄染を指摘されたため受診した。50歳台から2型糖尿病で内服治療中である。 意識は清明。体温 36.7 ℃。脈拍 76/分、整。血圧 136/80 mmHg。呼吸数12/分。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、右季肋部に肝を1cm触知する。 血液所見:赤血球 413万、Hb 13.8 g/dL、Ht 41%、白血球 8,300、血小板 20万。血液生化学所見:総蛋白7.1 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、総ビリルビン 5.9 mg/dL、直接ビリルビン 4.7 mg/dL、AST 292 U/L、ALT 356 U/L、LD 577 U/L (基準 120〜245) 、ALP 693 U/L(基準 115~359)、γ-GT 352 U/L (基準 8〜50) 、アミラーゼ 95 U/L (基準 37~160) 、尿素窒素 34 mg/dL、クレアチニン 1.3 mg/dL、血糖 118 mg/dL、HbAlc 7.8%(基準 4.6〜6.2)、総コレステロール 226 mg/dL、トリグリセリド 160 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.3 mEq/L、Cl 101 mEq/L。免疫血清学所見: CRP 1.9 mg/dL、HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。 まず行うべきなのはどれか。
第115回国家試験 B36
38歳の女性。労作時の息切れを主訴に来院した。3日前から通勤のための最寄りの駅までの歩行で息切れを感じるようになった。昨日は歩行中に気が遠くなる感じも出現したため受診した。受診時の心電図を別に示す。 胸部の聴診で特徴的に聴取されるのはどれか。
第115回国家試験 B37
82歳の女性。肺炎球菌性髄膜炎のため入院中である。意識障害が遷延しているため、経鼻胃管による経管栄養を開始することになった。意識レベルはJCSⅠ-3からⅠ-10で経過している。 体温 36.8 ℃。脈拍 76/分。血圧 120/80 mmHg。呼吸数 12/分。SpO₂ 98 % (room air)。日中はベッド上で、半座位で過ごしている。 経管栄養のための経鼻胃管について誤っているのはどれか。
第115回国家試験 B38
59歳の女性。手指の腫脹を主訴に来院した。3週前から急に手指末節が腫脹し、爪甲が隆起し軽度の疼痛を伴うようになったため受診した。数日前から同様の症状が足趾にも生じてきた。関節痛はない。手指の写真を別に示す。 精査すべきなのはどれか。
第115回国家試験 B39
68歳の男性。左肩痛を主訴に来院した。2か月前に左肩痛が出現し、増悪したため受診した。喫煙歴は30本/日を40年間、2年前から禁煙している。 脈拍 60/分、整。血圧 120/88 mmHg。呼吸数 16/分。胸部エックス線写真及び胸部造影CTを別に示す。経気管支肺生検で肺腺癌と診断された。 認める可能性が高いのはどれか。
第115回国家試験 B40
20歳の女性。四肢の皮疹を主訴に来院した。2週前に手掌に皮疹が出現し、その後下肢に皮疹が広がったため受診した。発熱や盗汗、腹痛や体重減少はない。既往歴として2年前のクラミジアによる骨盤腹膜炎がある。 意識は清明。バイタルサインに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。両側頸部、腋裔および鼠径部にリンパ節腫脹を認める。手掌と足底の皮疹の写真を別に示す。血清RPRは陽性である。 病原体はどれか。
第115回国家試験 B41
59歳の男性。1時間持続する前胸部痛のために救急車で搬入された。 現病歴: 1か月前から階段昇降時に前胸部絞扼感を自覚していたが、安静にすると5分間ほどで消失した。本日早朝に前胸部絞扼感で覚醒した。しばらく我慢していたが次第に増強し、自力で歩けなくなったため救急搬送された。 既往歴: 5年前から高血圧症で降圧薬を服用している。 生活歴: 自営業。喫煙は20本/日を39年間。飲酒はビールを500mL/日。 現症: 意識は清明。身長 168 cm、体重 82 kg。体温 36.6 ℃。心拍数 104/分、整。血圧 160/94 mmHg。呼吸数 24/分。SpO₂ 96 % (room air)。冷汗を伴い、四肢は冷たい。心雑音はないが、奔馬調律を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認めない。 検査所見: 心電図では明らかなST-T変化を認めない。急性心筋梗塞を疑い、心筋トロポニンTを測定することとした。発症からの時間経過から感度は 60%、特異度は 90%であるとする。この患者の検査前確率を 80%と考えたが、結果は陰性であった。
陰性結果にもかかわらず急性心筋梗塞である確率はどれか。
第115回国家試験 B42
59歳の男性。1時間持続する前胸部痛のために救急車で搬入された。 現病歴: 1か月前から階段昇降時に前胸部絞扼感を自覚していたが、安静にすると5分間ほどで消失した。本日早朝に前胸部絞扼感で覚醒した。しばらく我慢していたが次第に増強し、自力で歩けなくなったため救急搬送された。 既往歴: 5年前から高血圧症で降圧薬を服用している。 生活歴: 自営業。喫煙は20本/日を39年間。飲酒はビールを500mL/日。 現症: 意識は清明。身長 168 cm、体重 82 kg。体温 36.6 ℃。心拍数 104/分、整。血圧 160/94 mmHg。呼吸数 24/分。SpO₂ 96 % (room air)。冷汗を伴い、四肢は冷たい。心雑音はないが、奔馬調律を聴取する。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。下肢に浮腫を認めない。 検査所見: 心電図では明らかなST-T変化を認めない。急性心筋梗塞を疑い、心筋トロポニンTを測定することとした。発症からの時間経過から感度は 60%、特異度は 90%であるとする。この患者の検査前確率を 80%と考えたが、結果は陰性であった。
検査の結果は陰性であったが、担当医は病歴や症状から急性冠症候群である可能性が否定できないと判断し、患者にここまでの状況を説明することとした。 担当医が患者にかける言葉の中で、説明内容に対する患者の理解を確認しているものはどれか。
第115回国家試験 B43
36歳の女性。頭痛を主訴に来院した。 現病歴:本日午前7時頃から視界にきらきらした点が現れ、その後に頭痛、悪心が出現したため、同日昼に病院を受診した。頭痛は徐々に出現し、増悪はしていない。21歳時から年に数回同様の頭痛を経験しており、頭痛は毎回1日で改善する。 今回よりも強い頭痛を経験したことがあるという。 既往歴: 5歳時に急性虫垂炎で手術。 生活歴: 喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。 家族歴: 母が頭痛持ちであった。 現症: 意識は清明。身長 160 cm、体重 50 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 72/分、整。 血圧 126/76 mmHg。呼吸数 12/分。SpO₂ 98% (room air)。眼瞼結膜に貧血を認めない。瞳孔は左右差なく、対光反射は迅速。眼球運動に異常は認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。項部硬直を認めない。四肢の筋力は保たれており、感覚障害も認めない。四肢の腱反射は正常であり、病的反射は認めない。 検査所見: 血液所見:赤血球 372万、Hb 12.2 g/dL、Ht 40%、白血球 6,800、血小板 16万。血液生化学所見:AST 29 U/L、ALT 21 U/L、LD 171 U/L(基準 120~245)、ALP 350 U/L(基準 115~359)、尿素窒素 10 mg/dL、クレアチニン 0.5 mg/dL、Na 135 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 98 mEq/L。CRP 0.1 mg/ dL。 頭痛に関する文献を調べると、「突然発症である」、「増悪している」、「これまで経験した中で最悪の頭痛である」の3項目について、該当項目数に応じた重篤な原因による頭痛の尤度比が以下のように掲載されていた。
この患者が重篤な原因による頭痛を起こしている可能性について、事前確率と比べた事後確率の変化として適切なのはどれか。
第115回国家試験 B44
36歳の女性。頭痛を主訴に来院した。 現病歴:本日午前7時頃から視界にきらきらした点が現れ、その後に頭痛、悪心が出現したため、同日昼に病院を受診した。頭痛は徐々に出現し、増悪はしていない。21歳時から年に数回同様の頭痛を経験しており、頭痛は毎回1日で改善する。 今回よりも強い頭痛を経験したことがあるという。 既往歴: 5歳時に急性虫垂炎で手術。 生活歴: 喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。 家族歴: 母が頭痛持ちであった。 現症: 意識は清明。身長 160 cm、体重 50 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 72/分、整。 血圧 126/76 mmHg。呼吸数 12/分。SpO₂ 98% (room air)。眼瞼結膜に貧血を認めない。瞳孔は左右差なく、対光反射は迅速。眼球運動に異常は認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。項部硬直を認めない。四肢の筋力は保たれており、感覚障害も認めない。四肢の腱反射は正常であり、病的反射は認めない。 検査所見: 血液所見:赤血球 372万、Hb 12.2 g/dL、Ht 40%、白血球 6,800、血小板 16万。血液生化学所見:AST 29 U/L、ALT 21 U/L、LD 171 U/L(基準 120~245)、ALP 350 U/L(基準 115~359)、尿素窒素 10 mg/dL、クレアチニン 0.5 mg/dL、Na 135 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 98 mEq/L。CRP 0.1 mg/ dL。 頭痛に関する文献を調べると、「突然発症である」、「増悪している」、「これまで経験した中で最悪の頭痛である」の3項目について、該当項目数に応じた重篤な原因による頭痛の尤度比が以下のように掲載されていた。
この頭痛の特徴はどれか。
第115回国家試験 B45
43歳の男性。熱傷のため救急車で搬入された。 現病歴: 揚げ物の調理中に着衣に着火し、職場の同僚が救急要請した。 既往歴: 高血圧症と脂質異常症について食事療法中。 生活歴: 飲食店の調理場で働いている。喫煙は10本/日を10年間、飲酒はビールを350mL/日。妻と2人暮らし。 家族歴: 両親が高血圧症。 現症: 意識レベルはJCSⅡ-10。身長 170 cm、体重 70 kg。体温 37.1 ℃。心拍数 90/分、整。血圧 90/60 mmHg。呼吸数 36/分。SpO₂ 93% (リザーバー付マスク 10L/分酸素投与下) 。頭髪の前面と眉毛が焦げている。顔面、両上肢および胸腹部に、38%TBSA〈totalbody surface area〉のⅡ~Ⅲ度熱傷を認める。口腔と咽頭の粘膜には煤が付着していた。嗄声が認められる。 検査所見: 血液所見:赤血球 550万、Hb 17.0 g/dL、Ht 49%、白血球 7,200、血小板 30万。血液生化学所見:総蛋白 6.1g/dL、AST 45U/L、ALT 17 U/L、LD 499 U/L (基準 120~245)、尿素窒素 22 mg/dL、クレアチニン 0.5 mg/dL、Na 132 mEq/L、K 4.4 mEq/L、CI 99 mEq/L。
搬入時の輸液として適切なのはどれか。