平成27年度(第110回)医師国家試験問題|午後-79問〜午後-60問
第110回国家試験 A41
70歳の女性。労作時の息切れと下腿の浮腫とを主訴に来院した。6か月前から階段昇降時に息切れ、5か月前から下腿の浮腫を自覚し、前と比べて体重が5kg増加した。その後、息切れが増強するため受診した。 身長 160 cm、体重 56 kg。体温 36.8 ℃。脈拍 84/分、整。血圧 104/60 mmHg。呼吸数 24/分。SpO2 96%(room air)。顔面に浮腫を認める。眼瞼結膜は貧血様である。巨大舌を認める。心音でⅠ音とⅡ音の減弱があり、Ⅲ音とⅣ音とを聴取する。呼吸音に異常を認めない。脛骨前面に圧痕を残す浮腫を認める。 尿所見:蛋白 3+、糖(-)、潜血 2+、沈渣に赤血球 5~10/1視野、尿蛋白 4.5 g/日。血液所見:赤血球 400万、Hb 12.0 g/dL、Ht 36%、白血球5,400、血小板 27万。血液生化学所見:総蛋白 4.7 g/dL、アルブミン 2.0 g/dL、IgG 574 mg/dL(基準 960~1,960)、IgA 269 mg/dL(基準 110~410)、IgM 126 mg/dL(基準 65~350)、総ビリルビン1.0mg/dL、AST 35 U/L、ALT 40 U/L、LD 220 U/L(基準 176~353)、ALP 280 U/L (基準 115~359)、γ-GTP 48 U/L(基準 8~50)、尿素窒素 14 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、尿酸 6.2 mg/dL、HbA1c 5.6 %(基準 4.6~6.2)、総コレステロール 300 mg/dL、トリグリセリド 320 mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.1 mg/dL、抗核抗体陰性。心電図は低電位である。胸部エックス線写真で心胸郭比 54%、肺野に異常を認めない。診断のため腎生検を行った。腎生検のCongo-Red染色標本を別に示す。 この患者の生命予後の判断に有用な検査はどれか。
第110回国家試験 A42
3歳の男児。言葉が出ないことを主訴に両親に連れられて来院した。運動発達に問題はなかったが、言葉が出てこなかった。診察室では、視線は合わず動き回り、体を前後に揺らし、回転することが多い。積み木を見つけて遊び始めると、集中して1列に並べ始め、親の呼びかけにも振り向かない。運動発達に遅れはなく、聴覚障害の所見は認めない。この疾患について正しいのはどれか。
第110回国家試験 A43
45歳の女性。急激な体重増加を主訴に来院した。生来健康で、健康維持のために週2回スポーツジムに通っている。1か月前から突然、顔面と下腿とに浮腫が出現し、現在までに12kgの急激な体重増加を認め受診した。身長162cm、体重66kg。脈拍72/分、整。血圧100/78mmHg。顔面と下腿とに浮腫を認める。尿所見:蛋白 4+、糖(-)、潜血(-)、沈渣に卵円形脂肪体1~ 4/1視野、尿蛋白9.8g/日。血液生化学所見:総蛋白4.6g/dL、アルブミン1.0g/dL、CK 148IU/L(基準30~140)、尿素窒素38mg/dL、クレアチニン1.3mg/dL、尿酸7.3mg/dL、総コレステロール334mg/dL。CRP0.1mg/dL。超音波検査で腎の萎縮と水腎症とを認めない。 この患者の血清クレアチニン高値の原因として最も可能性が高いのはどれか。
第110回国家試験 A44
32歳の初妊婦。甲状腺機能の検査を希望して来院した。妊娠10週ころから動悸を感じ、妊娠12週で甲状腺機能異常を認めたため紹介されて受診した。甲状腺はびまん性に軽度腫大し、TSH 0.02μU/mL(基準0.2~4.0)、FT4 3.2ng/dL(基準0.8~2.2)であった。またヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は200,000 mIU/mL(基準16,000~160,000)であった。次に測定すべき検査項目はどれか。
第110回国家試験 A45
57歳の女性。半年前から続く左難聴と左耳閉感とを主訴に来院した。発症初期に38 ℃前後の発熱が続き3kgの体重減少があった。1か月前に自宅近くの診療所で抗菌薬投与と左鼓膜穿刺とを施行されるも症状は変わらなかった。拍動性の耳鳴はない。血液所見:赤血球410万、Hb 11.8g/dL、Ht 35%、白血球10,800(桿状核好中球2%、分葉核好中球70%、好酸球3%、好塩基球1%、単球4%、リンパ球20%)、血小板27万。血液生化学所見:尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.5mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.2mEq/L、Cl 106mEq/L。免疫血清学所見:CRP 4.5mg/dL、MPO-ANCA陰性、PR3-ANCA陽性であった。胸部エックス線写真で異常を認めない。左鼓膜写真と左側頭骨CTの水平断像とを別に示す。考えられる疾患はどれか。
第110回国家試験 A46
3歳の男児。顔色不良を主訴に来院した。2日前に38℃台の発熱があったが1日で解熱した。昨日の夕方からぐずることが多くなった。今朝になり顔色不良に気付かれ受診した。保育園で伝染性紅斑が流行しているとのことであった。意識は清明。体温37.8 ℃。脈拍148/分、整。血圧94/56 mmHg。皮膚は蒼白。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に軽度黄染を認める。口腔内粘膜は蒼白である。咽頭に発赤を認めない。頸部リンパ節を触知しない。胸部の聴診で胸骨左縁にⅡ/Ⅵの収縮期雑音を認める。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝を触知しない。脾を左肋骨弓下に3cm触知する。血液所見:赤血球120万、Hb 3.6g/dL、Ht 12%、網赤血球0%、白血球3,800、血小板18万、PT 72%(基準80~120)。血液生化学所見:総蛋白6.4g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリルビン3.9mg/dL、直接ビリルビン0.8 mg/dL、AST 29IU/L、ALT 14IU/L、LD 432IU/L(基準176~353)、尿酸4.2mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.3mg/dL、直接Coombs試験陰性。胸部エックス線写真で明らかな浸潤影はなく、心胸郭比52%である。考えられる疾患はどれか。 3歳の男児。顔色不良を主訴に来院した。2日前に 38 ℃台の発熱があったが1日で解熱した。昨日の夕方からぐずることが多くなった。今朝になり顔色不良に気付かれ受診した。保育園で伝染性紅斑が流行しているとのことであった。 意識は清明。体温 37.8 ℃。脈拍 148/分、整。血圧 94/56 mmHg。皮膚は蒼白。眼瞼結膜は貧血様である。眼球結膜に軽度黄染を認める。口腔内粘膜は蒼白である。咽頭に発赤を認めない。頸部リンパ節を触知しない。胸部の聴診で胸骨左縁にⅡ/Ⅵの収縮期雑音を認める。呼吸音に異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝を触知しない。脾を左肋骨弓下に 3cm触知する。 血液所見:赤血球 120万、Hb 3.6 g/dL、Ht 12%、網赤血球 0%、白血球 3,800、血小板 18万、PT 72%(基準 80~120)。血液生化学所見:総蛋白6.4 g/dL、アルブミン 4.0 g/dL、総ビリルビン 3.9 mg/dL、直接ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 29 U/L、ALT 14 U/L、LD 432 U/L(基準 176~353)、尿酸 4.2 mg/dL。免疫血清学所見:CRP 0.3 mg/dL、直接Coombs試験陰性。胸部エックス線写真で明らかな浸潤影はなく、心胸郭比52%である。 考えられる疾患はどれか。
第110回国家試験 A47
6歳の女児。けいれん発作の原因精査のため母親に連れられて来院した。昨夕、急に口から唾液を流して右の口角が引きつった後、全身けいれんへと進展する発作が起きた。発作は3分ほどで自然に止まったが、母親が救急車を要請した。搬入時には意識は清明で、神経学的異常を認めなかったため、特に検査や治療を受けずに帰宅した。本日経過観察のため受診した。3か月前にも同じような発作を起こしたことがあるという。それ以外の既往歴と家族歴とに特記すべきことはない。神経学的所見を含め身体所見に異常を認めない。本日施行した脳波(双極誘導)を別に示す。この患児で正しいのはどれか。
第110回国家試験 A48
62歳の女性。腹痛と血便とを主訴に来院した。糖尿病と高血圧症とで自宅近くの診療所を定期受診していた。今朝から突然の左下腹部痛があり、その後、鮮血便を認めるようになったため救急外来を受診した。身長150cm、体重48kg。体温37.2 ℃。脈拍84/分、整。血圧132/88mmHg。呼吸数20/分。腹部は平坦、軟で、左下腹部に圧痛を認める。血液所見:赤血球384万、Hb 12.2g/dL、Ht 35%、白血球9,900、血小板25万。CRP 2.3mg/dL。下部消化管内視鏡像を別に示す。最も考えられるのはどれか。
第110回国家試験 A49
37歳の女性。1回経妊0回経産婦。不正性器出血を主訴に来院した。内診で子宮は小児頭大、付属器と子宮傍組織とに異常を認めない。子宮頸部と内膜の細胞診で異常を認めない。骨盤部MRIのT2 強調矢状断像を別に示す。 この患者の子宮体部に認められる病変と関連しないのはどれか。
第110回国家試験 A50
67歳の男性。全身倦怠感と微熱とを主訴に来院した。1か月前から全身倦怠感を自覚し、1週前から37℃台前半の微熱が持続していた。数日前から、歯肉からの出血もみられた。 体温37.4 ℃。眼瞼結膜は貧血様だが眼球結膜に黄染を認めない。口腔粘膜に点状出血と咽頭に軽度の発赤とを認める。表在リンパ節は触知しない。心基部を最強点とするⅡ/Ⅵの収縮期駆出性雑音を聴取する。腹部は平坦、軟で、肝・脾は触知しない。両側下腿に紫斑を認める。 血液所見:赤血球 157万、Hb 5.7 g/dL、Ht 15%、網赤血球 0.3%、白血球 1,800(桿状核好中球 5%、分葉核好中球 13%、好酸球 3%、好塩基球 1%、単球 6%、リンパ球 72%)、血小板 1.3万、PT 99%(基準80~120)、APTT 29秒(基準対照 32.2)、血漿フィブリノゲン 286 mg/dL(基準 200~400)、血清FDP 10 μg/mL以下(基準 10以下)。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dL、アルブミン 4.2 g/dL、ハプトグロビン 74 mg/dL(基準19~170)、総ビリルビン 0.6 mg/dL、AST 28 U/L、ALT 22 U/L、LD 287 U/L(基準 176~353)、尿素窒素 18 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、尿酸3.6mg/dL、Fe 325 μg/dL。CRP 1.3 mg/dL。骨髄生検のH-E染色標本を別に示す。 対応として最も適切なのはどれか。
第110回国家試験 A51
22歳の男性。友人に勧められて禁煙外来を受診した。喫煙歴は20歳から毎日10本程度。自分で禁煙を何度か試みたがうまくいかないという。現在、大学に通っており、既往歴に特記すべきことはない。 次に実施すべきなのはどれか。
第110回国家試験 A52
25歳の男性。下腿の浮腫を主訴に来院した。2か月前に下腿に靴下のゴムの痕が付くことに気付いた。徐々にその程度が強くなってきたため受診した。身長170cm、体重65kg。体温36.0 ℃。脈拍72/分、整。血圧140/86mmHg。顔面と下腿とに浮腫を認める。尿所見:蛋白3+、潜血1+、沈渣に赤血球5~10/1視野、顆粒円柱1個/数視野、卵円形脂肪体1~4/1視野、尿蛋白4.8g/日。血液生化学所見:総蛋白4.5g/dL、アルブミン1.8g/dL、IgG 547mg/dL (基準960~1,960)、IgA 250mg/dL(基準110~410)、IgM 67mg/dL(基準65~350)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン1.1mg/dL、トリグリセリド240mg/dL、LDLコレステロール220mg/dL。ASO 180単位(基準250以下)。腎生検のPAS染色標本を別に示す。この患者で正しいのはどれか。
第110回国家試験 A53
21歳の男性。海外渡航前の健康相談を目的として来院した。大学のサークル活動で学校建設を支援するため、1か月後から2週間アフリカ東部に滞在する予定という。生来健康であるが予防接種歴や感染症の既往歴については良く覚えていない。 医師のアドバイスとして適切なのはどれか。2つ選べ。
第110回国家試験 A54
6か月の乳児。嘔吐と下痢とを主訴に母親に連れられて来院した。昨日の昼から頻回の嘔吐があり、本日の昼に水様下痢も出現したため受診した。母乳はほとんど飲まず、わずかに飲んでも嘔吐してしまう。患児はぐったりしており、目は落ちくぼんでいる。昨日の夕方から排尿を認めない。1週前に乳児健康診査で測定した体重は7.7kgであったが、本日は7.0kgであった。この児に適した初期輸液の組成はどれか。2つ選べ。
第110回国家試験 A55
2歳の女児。発熱を主訴に母親に連れられて来院した。4日前から発熱があり、食欲が低下してきたため受診した。体温38.8℃。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。咽頭に発赤を認める。両側の頸部に径1.5cmのリンパ節を数個触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝を右季肋下に2cm、脾を左季肋下に4cm触知する。血液所見:赤血球425万、Hb 11.3g/dL、Ht 33%、白血球21,800(好中球20%、好酸球1%、好塩基球0%、単球5%、リンパ球74%、血小板19万。血液生化学所見:AST 78IU/L、ALT 66IU/L、LD 477IU/L(基準176~353)、尿酸4.7mg/dL。CRP 1.0mg/dL。胸部エックス線写真で心胸郭比50%。抹消血塗抹May-Giemsa染色標本を別に示す。考えられる原因はどれか。2つ選べ。
第110回国家試験 A56
52歳の男性。起床時に回転性めまい、左難聴および耳鳴りを自覚したため来院した。これまで同様の症状をきたしたことはなかった。身長170cm、体重72kg。体温36.5℃。尿検査と血液検査とに異常を認めない。これまで耳漏と顔面神経麻痺が出現したことはない。両側鼓膜に異常を認めない。オージオグラムを別に示す。考えられる疾患はどれか。2つ選べ。
第110回国家試験 A57
55歳の男性。左眼の飛蚊症と視野異常とを主訴に来院した。1週前から多数の黒いものが飛んでいるのが見え、昨日から下鼻側視野の欠損を自覚した。矯正視力は右1.2、左0.9、眼圧は右14mmHg、左11mmHg。眼底写真(合成による広角撮影像)を別に示す。治療法はどれか。2つ選べ。
第110回国家試験 A58
35歳の男性。2週前からの悪寒、発熱および下痢を主訴に来院した。6か月前と2か月前に自宅近くの診療所で発熱を伴う気管支炎に対し抗菌薬投与を受け、1週程度で軽快していた。体重が6か月で10kg減少している。意識は清明。身長168cm、体重50kg。皮膚、口唇および口腔粘膜は乾燥し、舌と口腔粘膜とに白苔を広汎に認める。腹部は平坦で、全体に軽度の圧痛を認めるが、筋性防御は認めない。血液所見:赤血球560万、Hb 16.0g/dL、Ht 48%、白血球12,200(好中球77%、好酸球5%、好塩基球1%、単球12%、リンパ球5%、血小板34万。CRP 12mg/dL。初期の対応として適切なのはどれか。3つ選べ。
第110回国家試験 A59
50歳の男性。2か月前から続く下痢と粘血便とを主訴に来院した。1週前から1日に6、7回の粘血便を認めている。海外渡航歴はない。身長164cm、体重54kg。体温37.8℃。脈拍88/分、整。血圧120/60mmHg。眼瞼結膜は軽度貧血様である。内視鏡検査では結腸に多発性のびらんと潰瘍とを認める。採取された結腸粘膜生検組織のH-E染色標本を別に示す。本標本に認められる所見はどれか。3つ選べ。
第110回国家試験 A60
40歳の男性。自力で動けなくなったとのことで救急車で搬入された。37歳から「ホルモンか何かの病気」のため自宅近くの医療機関で治療を受けているとのことであるが、通院も内服も不規則だったため病名も含めて詳細は分からないという。以前から時に動けなくなることがあったが、数時間で軽快するためそのままにしていた。本日は起床時に体が動かず起き上がれなくなり、その後もなかなか改善しないため家族が救急車を要請した。身長167cm、体重64kg。脈拍96/分、整。血圧122/70mmHg。呼吸数16/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。甲状腺は軽度に腫大している。胸腹部に異常を認めない。四肢に弛緩性で左右対称性の麻痺があり、徒手筋力テストで2程度である。臥位の状態から自力では動けない。感覚障害を認めない。血液生化学所見:Na 140mEq/L、K 1.8mEq/L、Cl 103mEq/L。動脈血ガス分析(room air):pH 7.42、PaCO2 38Torr、PaO2 87Torr、HCO3- 24mEq/L。カリウム含有の補液治療を受け、動けるようになった。検索すべき検体検査と予想される異常パターンはどれか。