平成29年度(第112回)医師国家試験問題|午後101問〜午後120問
第112回国家試験 D31
46 歳の男性。呼吸困難を主訴に来院した。1か月前から胸部違和感と労作時呼吸困難とを自覚していたが、徐々に増強するため来院した。1週間前までは胸部にヒューヒューという音がしていたが、現在は消失しているという。既往歴に特記すべきことはない。喫煙は 40 本/日を 26 年間。胸部エックス線写真を示す。 異常所見の原因として最も可能性が高いのはどれか。
第112回国家試験 D32
12 歳の女児。右大腿部から膝の痛みを主訴に来院した。1か月前に友人とぶつかって転倒した後から、痛みが出現した。様子をみていたが痛みが軽快しないため受診した。身長 148 cm、体重 50 kg。体温 36.3 ℃。右股関節前方に圧痛を認める。歩行は疼痛のため困難である。右股関節可動域は屈曲と内旋とに制限がある。血液生化学所見に異常を認めない。股関節のエックス線写真を示す。 初期対応として適切なのはどれか。
第112回国家試験 D33
8歳の男児。頭部の脱毛と疼痛とを主訴に来院した。2か月前から頭皮に痒みとともに脱毛斑が出現した。市販の副腎皮質ステロイド外用薬を塗布していたところ、2週間前から次第に発赤し、膿疱や痂皮を伴い疼痛も出現してきたため受診した。ネコを飼育している。痂皮を剝がすと少量の排膿があり圧痛を伴う。病変部に残存する毛は容易に抜毛される。後頸部に径2cmのリンパ節を個触知し圧痛を認める。後頭部の写真と抜毛の苛性カリ(KOH)直接鏡検標本とを示す。 治療薬として適切なのはどれか。
第112回国家試験 D34
36歳の男性。2日前に左眼の充血と流涙とを自覚したため来院した。ハードコンタクトレンズを使用している。会社の同僚が1週間前まで同様の症状で治療中であった。耳前リンパ節の腫大と圧痛とを認める。左眼の前眼部写真を示す。 この患者への生活指導として正しいのはどれか。
第112回国家試験 D35
21歳の男性。奇妙な行動をとるため両親に伴われて来院した。1週間前に大学院の入学試験を受けてから不眠が続いていた。本日朝から駅前のベンチの周りを独り言を言いながら約3時間ぐるぐると回っていたことで警察に保護されたため、両親に伴われて近くの総合病院を受診した。身振りや表情が乏しく、一点を凝視しており視線を合わせようとしない。急ににやにやするかと思うと、おびえたような表情に変わる。黙ったまま何かに聞き入ってうなずく様子がみられ、質問には全く返答することはないが、唐突に「なるほど」「だからか」などとあたかも対話するように短く独語する。これまでに発達や適応上の問題はない。血液生化学所見、頭部MRI 及び脳波で異常を認めない。 この疾患にみられる症状はどれか。
第112回国家試験 D36
47歳の女性。顔のほてりを主訴に来院した。7年前に子宮筋腫のため子宮全摘出術を受けた。両側卵巣は温存されている。2か月前から顔のほてりがあり、汗をかきやすくなったという。動悸と息切れも自覚している。 身長 160 cm、体重 56 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 76/分、整。血圧 112/64 mmHg。呼吸数 18/分。甲状腺の腫大を認めない。超音波検査で両側卵巣に卵胞を認めない。 まず確認すべき検査項目はどれか。
第112回国家試験 D37
56歳の男性。小腸切除術後のため入院中である。4日前に突然、腹部全体の疝痛が出現したため救急車で搬入された。上腸間膜動脈閉塞症と診断し緊急で小腸切除術を施行し、残存小腸は 40 cm であった。術後 48 時間までは循環動態の安定を目的に乳酸リンゲル液の輸液と昇圧薬の投与とを行った。術後 72 時間から高カロリー輸液の実施と経鼻胃管からの少量の経腸栄養剤の持続投与とを開始したところ、1日4、5回の下痢を認めた。 この患者への対応として適切でないのはどれか。
第112回国家試験 D38
出生直後の新生児。妊娠 36 週までの妊婦健康診査では児の発育は順調であったが、妊娠 37 週2日に母親に下腹部痛と性器出血が出現し、胎児心拍数陣痛図で遅発一過性徐脈を繰り返し認めたため緊急帝王切開で出生した。心拍数 60/分。出生時から自発呼吸がなく、全身にチアノーゼを認める。刺激をしても反応がなく、全身がだらりとしている。娩出後 30 秒の時点で自発呼吸を認めない。外表奇形を認めない。 この時点で開始する処置として適切なのはどれか。
第112回国家試験 D39
2歳の男児。発熱と左膝痛とを主訴に母親に連れられて来院した。2週間前から弛張熱、跛行および下腿の皮疹がみられるようになった。1週間前から左膝を痛がるようになった。抗菌薬を内服しても解熱しないため受診した。 身長 84.2 cm、体重 10.3 kg。体温 38.5 ℃。脈拍 168/分、整。血圧 126/62 mmHg。皮膚は両側の下腿に2cm大の淡紅色の紅斑を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内にアフタを認めない。咽頭に発赤はなく、扁桃に腫大を認めない。両側の頸部に径 1.5 cm のリンパ節を3個ずつ触知する。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝を右季肋下に2cm、脾を左季肋下に3cm触知する。左膝関節の腫脹と圧痛とを認めるが、可動域制限はない。 赤沈 90 mm/1時間。血液所見:赤血球 390 万、Hb 9.8 g/dL、Ht 32 %、白血球 10,400(桿状核好中球1%、分葉核好中球 77 %、好酸球1%、好塩基球1%、単球8%、リンパ球 12 %)、血小板 38 万、PT-INR 1.2(基準 0.9〜1.1)、血漿フィブリノゲン 469 mg/dL(基準 185〜370)、フィブリン分解産物 9.2 μg/mL(基準5未満)。血液生化学所見:総蛋白 5.8 g/dL、アルブミン 3.0 g/dL、AST 33 U/L、ALT6U/L、LD 374 U/L(基準 397〜734)、CK 57 U/L (基準 30〜140)、尿素窒素 6 mg/dL、クレアチニン0.2 mg/dL、Na 137 mEq/L、K4.3 mEq/L、Cl 100 mEq/L。免疫血清学所見:CRP 3.2 mg/dL、matrix metalloproteinase-3(MMP-3)196 ng/mL(基準 37〜121)、リウマトイド因子(RF)3 IU/mL(基準 15 未満)、抗核抗体陰性。両膝の造影 MRI 水平断像を示す。 考えられる疾患はどれか。
第112回国家試験 D40
85歳の男性。右利き。左上肢の感覚鈍麻を主訴に来院した。昨夜、入浴中に左上肢全体の感覚が鈍いことに気付いたが、そのまま就寝した。今朝になっても改善していなかったため、不安になり受診した。60歳台から高血圧症と糖尿病があり、降圧薬と経口糖尿病薬とを内服している。 意識は清明。脈拍 68/分、整。血圧 164/92 mmHg。脳神経に異常を認めない。上肢の Barré 徴候は陰性で、両下肢の筋力低下も認めない。腱反射は全般に軽度亢進しているが、左右差は認めない。左上肢に表在覚鈍麻があり、閉眼すると左母指を右手指でうまく摘めない。左下肢および右上下肢に感覚異常はない。 示す頭部 MRI の拡散強調像①〜⑤のうち、この患者のものと考えられるのはどれか。
第112回国家試験 D41
83歳の男性。咳嗽と喀痰とを主訴に来院した。約1か月前に咳嗽と喀痰が出現し、1週間前には血痰も出現したため受診した。 体温 36.5 ℃。脈拍 84/分、整。血圧 140/76 mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 92 %(room air)。心音に異常を認めないが、呼吸音は右背下部に crackles を聴取する。神経学的所見に異常を認めない。 尿所見:蛋白1+、糖(-)、潜血1+。血液所見:赤血球 284 万、Hb 7.8 g/dL、Ht 24 %、白血球 6,000(桿状核好中球 12 %、分葉核好中球 55 %、好酸球 3 %、単球 5 %、リンパ球 25 %)、血小板 29 万、PT-INR 1.0(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:AST 29 U/L、ALT 24 U/L、LD 189 U/L(基準 176〜353)、尿素窒素 19 mg/dL、クレアチニン 1.7 mg/dL。免疫血清学所見:CRP 9.2 mg/dL、MPO-ANCA 267 U/mL(基準 3.5 未満)、PR3-ANCA 3.5 U/mL 未満(基準 3.5 未満)、抗核抗体陰性、抗 GBM 抗体陰性。気管支鏡によって採取した気管支肺胞洗浄液は肉眼的に血性であった。腎機能障害が進行したため腎生検を施行した結果、壊死性半月体形成糸球体腎炎を認めた。胸部エックス線写真と胸部CTとを示す。 最も考えられる疾患はどれか。
第112回国家試験 D42
日齢 24 の新生児。嘔吐を主訴に両親に連れられて来院した。10 日前から哺乳後の嘔吐を時々認めていたが、2日前から哺乳のたびに噴水状の嘔吐を認めるようになった。 活気は不良である。体重 3,848 g(日齢9では 3,882 g)。体温 36.7 ℃。心拍数 128/分。血圧 94/58 mmHg。呼吸数 28/分。毛細血管再充満時間は3秒と延長している。四肢末梢に軽度冷感を認める。皮膚のツルゴールは低下している。大泉門はやや陥凹。咽頭発赤を認めない。胸部に異常を認めない。腹部は軽度膨満しており、右上腹部に径 1.5 cm の腫瘤を触知する。 患児の腹部超音波検査で認められる所見はどれか。
第112回国家試験 D43
47歳の女性。腹部膨満を主訴に来院した。20 歳台からアルコールの多飲歴があり、1週間前までワイン1本/日を飲んでいた。3日前から腹部膨満が出現し食事が摂れなくなったため受診した。 意識は清明。身長 156 cm、体重 49 kg。体温 36.3 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 106/60 mmHg。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に軽度黄染を認める。頸部から胸部にかけて赤い放射状の皮疹を多数認め、圧迫によって消退する。腹部は膨満しているが圧痛を認めない。下肢に浮腫を認める。 血液所見:赤血球 325 万、Hb 9.4 g/dL、Ht 31 %、白血球 4,000、血小板 7.0 万、PT-INR 1.4(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白 5.9 g/dL、アルブミン 2.5 g/dL、総ビリルビン 3.2 mg/dL、直接ビリルビン 0.9 mg/dL、AST 56 U/L、ALT 40 U/L、ALP 280 U/L(基準 115〜359)、γ-GTP 24 U/L(基準8〜50)、アンモニア 185 μg/dL(基準 18〜48)、尿素窒素 35 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、Na 131 mEq/L、K3.6 mEq/L、Cl 97 mEq/L、α-フェトプロテイン(AFP) 3.1 ng/mL(基準 20 以下)。免疫血清学所見:CRP 1.2 mg/dL、HBs 抗原陰性、HCV 抗体陰性。来院時の腹部CTを示す。経口摂取ができないため輸液を開始した。 初期輸液の Na+ 濃度(mEq/L)として適切なのはどれか。
第112回国家試験 D44
日齢4の新生児。在胎 39 週、出生体重 2,900 g で出生した。出生時に切れあがった目、低くて広い鼻根などの顔貌と心雑音、肝脾腫を認めた。血液所見:Hb9.8 g/dL、白血球 32,000(芽球様幼若細胞 70 %)、血小板 3.5 万。心エコー検査で心室中隔欠損症を認めた。その後、血液所見は日齢 10 で正常化した。 この患児に今後合併する可能性が高いのはどれか。
第112回国家試験 D45
34歳の女性。昨年受けた人間ドックで「リウマチの反応が出ている」と言われたが、自覚症状がなかったため精密検査は受けていなかった。近々結婚の予定で挙児を希望しているため、人間ドックでの指摘事項が気になり来院した。現在はドライアイのため眼科で点眼薬による治療を受けている。また、う歯のために頻繁に歯科を受診している。舌の写真を示す。 診断に有用な自己抗体はどれか。
第112回国家試験 D46
75歳の女性。抑うつ気分を訴えるのを心配した隣人に付き添われて来院した。約3年前から徐々に物忘れが進行し、2年前に Alzheimer 型認知症と診断され、ドネペジルを服用している。5か月前に長男が交通事故で死亡し、その直後から著明な抑うつ傾向を認め、「生きていても仕方がない」と頻繁に口にするようになった。夫は 10 年前に死亡し、現在は一人暮らしである。診察時、「死んだ長男のことばかり考えているだけなので、治療は受けなくていい。家族にも連絡しないで欲しい」と述べる。身体診察では異常所見を認めない。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは 19 点(30 点満点)。 対応として適切なのはどれか。
第112回国家試験 D47
18歳の女子。くしゃみと鼻汁とを主訴に来院した。幼少時から一年中くしゃみと水様性鼻汁があり、特に起床直後に症状が強い。血清特異的 IgE 検査でヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニのスコアが高値を示した。根治的な治療を希望して受診した。 根治が期待できる治療法はどれか。
第112回国家試験 D48
28歳の女性。健診で胸部の異常陰影を指摘されたため来院した。胸部エックス線写真と胸部CTとを示す。 診断のために必要性が低い検査項目はどれか。
第112回国家試験 D49
74歳の女性。左乳房のしこりを主訴に来院した。30 年前に左乳房にゴルフボール大のしこりがあるのに気付いていたが、大きさに変化がないためそのままにしていた。先日、入浴時にしこりの増大に気付き心配になり受診した。乳房に色調の変化やひきつれを認めない。表面平滑で弾性硬、可動性良好な径3cmの腫瘤を触知する。腋窩リンパ節を触知しない。左乳房のマンモグラムと胸部CTとを示す。 考えられる診断はどれか。
第112回国家試験 D50
66歳の男性。呼吸困難を主訴に来院した。3か月前から早歩きの際に呼吸困難を自覚するようになった。症状は急に始まり、そのまま歩行を続けることはできないが、立ち止まって安静にすると約3分で改善する。冷汗や眼前暗黒感、呼吸性の痛みの増強はないという。症状の頻度や程度は変わらなかったが、心配した家族に付き添われて受診した。 体温 36.6 ℃。脈拍 68/分、整。血圧 132/82 mmHg。呼吸数 14/分。SpO2 98 %(room air)。眼瞼結膜に貧血を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。胸部エックス線写真で異常を認めなかった。心電図をとって検査室から早足で外来に戻ってきたところ、いつもと同じ症状が出現してきたという訴えがあった。直ちに外来診察室でバイタルサインを確認し、心電図の再検査を行った。心拍数 98/分。血圧 172/92 mmHg。SpO2 99 %(room air)。症状は、いつもと同じ強さで出現から約2分続いている。本日受診時の心電図と診察室での発作時の心電図とを示す。 まず行うべきなのはどれか。