平成30年度(第113回)医師国家試験問題|午後-19問〜午後0問

第113回国家試験 B26

80歳の男性。咳嗽を主訴に受診した。昨日の朝食後に咳嗽が出現し、同時に右臼歯の歯冠がないことに気付いたため来院した。 意識は清明。身長 162 cm、体重55 kg。体温 36.8 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 120/70 mmHg。呼吸数 18/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。胸部エックス線写真を別に示す。 まず行うべきなのはどれか。

第113回国家試験 B27

26歳の男性。胸痛を主訴に来院し入院した。出張で午前中に飛行機に乗っていたところ、右肩に軽い痛みが出現した。到着後の空港で歩行中に呼吸困難を自覚し、その後も症状が持続したため、近くの病院を受診した。精査の結果、自然気胸の診断で入院となり、胸腔ドレーンが挿入され持続吸引ドレナージが行われた。翌朝、担当医が診察したところ、胸腔ドレーンが前日より 20 cm 程度抜け、ドレーン先端から 5cm 程度が体内にとどまっている状態であった。患者は呼吸困難を訴えず、呼吸数 16/分、SpO2 99 %(room air)である。 まず行うべき対応はどれか。

第113回国家試験 B28

23歳の女性。左乳房にしこりを自覚したため受診した。穿刺吸引細胞診および組織診の結果、乳癌と診断した。担当医は本人と母親に対して、検査結果と診断および今後の治療について説明することとなった。 悪い知らせを伝える際の SPIKES モデルの「P」に相当するのはどれか。

第113回国家試験 B29

32歳の男性。左前胸部痛を主訴に来院した。4日前から38℃前後の発熱があり市販の総合感冒薬を服用していた。2日前から左前胸部に痛みを感じるようになったため心配になり受診した。痛みは持続性のじりじりする感じの痛みで、いつから症状があったかはっきりしないが、少しずつ症状が増悪してきており、現在は深く息を吸うとやや増強するという。心電図を別に示す。 最も予想される聴診所見はどれか。

第113回国家試験 B30

60歳の男性。妻に黄疸を指摘され来院した。45 歳時に糖尿病と診断され経口糖尿病薬を服用している。 意識は清明。体温 36.8 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 128/76 mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜は軽度貧血様で、眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、肝・脾を触知しない。右季肋部に軽度の圧痛を認める。下腿に浮腫を認めない。 血液所見:赤血球 356 万、Hb 10.8 g/dL、Ht 35 %、白血球 7,500、血小板 38 万。血液生化学所見:総蛋白 7.2 g/dL、アルブミン 4.2 g/dL、総ビリルビン 5.8 mg/dL、直接ビリルビン 3.7 mg/dL、AST 48 U/L、ALT 65 U/L、ALP 689 U/L(基準 115〜359)、γ-GTP 243 U/L(基準 8〜50)、尿素窒素 45 mg/dL、クレアチニン 3.5 mg/dL、血糖 153 mg/dL、HbA1c 7.4 %(基準 4.6〜6.2)。CRP 1.1 mg/dL。 まず行うべき検査はどれか。

第113回国家試験 B31

48歳の女性。転倒による大腿骨骨折のため、昨日入院した。昨晩は夜間に全く眠らない状態が続き、今朝から手指と上肢に粗大な振戦が出現した。既往歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。20歳から飲酒を開始し、32歳から夫の母親を自宅で介護するようになり、飲酒する頻度が増えた。38 歳から連日昼間も飲酒するようになり、45歳からは 1日に焼酎 500 mL 以上を飲酒していた。 体温 36.7 ℃。脈拍 68/分、整。血圧 140/88 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 血液所見:赤血球 392 万、Hb 13.0 g/dL、Ht 42 %、白血球 7,500、血小板 17 万。血液生化学所見:総蛋白 7.8 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、総ビリルビン 1.0 mg/dL、AST 140 U/L、ALT 80 U/L、γ-GTP 210 U/L(基準 8〜50)、総コレステロール 295 mg/dL、トリグリセリド 240 mg/dL。頭部CTで異常を認めない。 数日以内に出現する可能性の高い症状の予防に適切な薬剤はどれか。

第113回国家試験 B32

11歳の男児。下腿の皮疹を主訴に母親に連れられて来院した。2日前から下腿に皮疹が出現し、昨日から腹痛および膝関節痛を訴えている。 体重 37 kg。体温36.5 ℃。脈拍 80/分、整。呼吸数 20/分。両下腿に皮疹を認める。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。咽頭発赤なし。頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で臍周囲に軽度圧痛を認める。左下腿の写真を別に示す。 この患児で認められる皮膚所見はどれか。

第113回国家試験 B33

4か月の乳児。RSウイルス感染症による呼吸障害のため入院している。呼吸・心拍モニターのアラームが鳴ったため研修医、指導医および看護師で患児を診察に行ったところ全身にチアノーゼを認めた。気道確保をして呼吸を確認したが、自発呼吸を認めない。心電図モニターでは心静止である。末梢静脈路は確保されており、心肺蘇生の備品は病室に準備されている。 直ちに行うべきなのはどれか。

第113回国家試験 B34

A 25-year-old man comes to your clinic complaining of abdominal pain for the past two days. Yesterday, the pain was periodic and located around the periumbilical area. Today the pain is persistent and located in the right lower quadrant. He feels feverish. He does not smoke or drink alcohol. His body temperature is 37.7 ℃, blood pressure is 126/62 mmHg, and pulse rate is 94/min,regular. Which one of the following should be done next?

第113回国家試験 B35

37歳の初産婦(1妊0産)。妊娠30週に両下腿浮腫の増悪を主訴に来院した。これまでの妊娠経過は順調であったが、妊娠27週ころに両下腿浮腫を生じ、28週ころから浮腫の増悪を認めた。 意識は清明。脈拍 72/分、整。血圧 160/104 mmHg。尿検査で蛋白 2+である。ノンストレステスト<NST>は reactive で、子宮収縮は認めない。入院後安静にして血圧を再検査したところ、164/106 mmHg であった。 投与すべき薬剤はどれか。

第113回国家試験 B36

20歳の男性。右足関節の変形と疼痛のため救急車で搬入された。会社員で、サッカーのクラブチームに所属している。サッカーの試合中に他の選手と接触して受傷し、歩行困難となったため救急車を要請した。受傷時の足関節の肢位は不明であった。既往歴、生活歴、家族歴に特記すべきことはない。 搬入時(受傷2時間後)の意識は清明。体温 36.9 ℃、心拍数 100/分、整。血圧 124/76 mmHg。呼吸数 14/分。SpO2 100 %(鼻カニューラ 1L/分酸素投与下)。右足関節全体に腫脹と圧痛を認める。右足関節周囲に開放創はない。足背動脈は左右差なく触知可能であり、右足趾の自動屈曲伸展運動は可能で、感覚に異常を認めない。右足関節以外に異常を認めない。右足関節単純エックス線写真を別に示す。 初期対応として適切なのはどれか。

第113回国家試験 B37

21歳の男性。発熱と咳嗽を主訴に来院した。体温 39.2 ℃。脈拍 108/分、整。血圧 120/70 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 97 %(room air)。血液検査のため、右肘正中皮静脈に採血針を穿刺した直後に気分不快を訴えた。顔面蒼白となり、全身に発汗を認めたため、直ちに採血を中止した。 次に行うべき処置はどれか。

第113回国家試験 B38

75歳の男性。胃癌の手術後に在宅療養を行っている。3年前に胃癌で胃全摘術を受けた。1年前に腹膜播腫、肺および肝転移を診断されたが、抗癌化学療法は選択しなかった。訪問診療で経過は安定していたが、2週間前から食欲不振が出現し、在宅で1日 1,700 mL の維持輸液が開始された。その後徐々に床上で過ごすことが多くなり、昨日から呼吸困難を訴えるようになった。排尿は 1日 4、5回で、1回尿量 100 mL 程度である。妻と長男夫婦との4人暮らしで、患者本人と家族は自宅での療養の継続を希望している。 身長 165 cm、体重 43 kg。体温 36.2 ℃。脈拍 96/分、整。血圧 118/76 mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 96 %(room air)。両側胸部に coarse crackles と軽度の wheezes を聴取する。上腹部に径 3cm の腫瘤を触知するが圧痛はない。両下腿に著明な浮腫を認める。 血液所見 ( 2週間前):赤血球 308 万、Hb 7.4 g/dL、Ht 28 %、白血球 10,300、血小板 18 万。血液生化学所見 (2週間前):総蛋白 5.8 g/dL、アルブミン 2.3 g/dL、尿素窒素 26 mg/dL、クレアチニン 1.3 mg/dL、血糖 89 mg/dL、Na 134 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 95 mEq/L。 まず行うべきなのはどれか。

第113回国家試験 B39

5歳の男児。走るのが遅いことを心配した母親に連れられて来院した。1年前から転びやすいことに母親は気づいていた。先日の運動会で他の子どもに比べて走るのが著しく遅いことが心配になり来院した。周産期、乳児期には特記すべきことはない。母方叔父が心不全により 25 歳で死亡。 身長 104 cm、体重 17 kg。体温 36.8 ℃。咽頭に発赤を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。腱反射に異常を認めない。下腿の肥大を認める。 血液所見:赤血球 468 万、Hb 12.6 g/dL、Ht 37 %、白血球 9,800、血小板 21 万。血液生化学所見:総蛋白 6.2 g/dL、アルブミン 3.8 g/dL、AST 436 U/L、ALT 478 U/L、CK 12,300 IU/L (基準 46〜230)、尿素窒素 9 mg/dL、クレアチニン 0.4 mg/dL。 患児に認められる所見はどれか。

第113回国家試験 B40

40歳の女性。動悸を主訴に来院した。 現病歴:2か月前から動悸を自覚している。当初は、買い物などで荷物を持って5分ほど歩くと動悸を感じていた。10日前から①家事で少し動いても動悸を感じるようになった。友人に話したところ、②病院を受診した方が良いと言われた。③動悸の性状は、脈が速くなる感じである。症状は徐々に強くなっていて、このままだとさらに悪化するのではないかと思っている。④父が脳梗塞になり、心臓の病気が原因と聞いていた。⑤自分が寝たきりになると家事が十分できなくなるため、心臓の病気を心配している。その他、軟便がある。また、以前より暑がりになった。体重は最近2か月で3kg 減少した。 既往歴:特になし。職場の健診で心電図異常を指摘されたことはない。 生活歴:夫と小学生の娘との3人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は週1回ビール350 mL/日を10年間。仕事は事務職。 家族歴:父親が高血圧症、脳梗塞。母親が脂質異常症。 月経歴:初経 13 歳。周期 28 日型、整。

解釈モデルを示しているのは下線のうちどれか。

第113回国家試験 B41

40歳の女性。動悸を主訴に来院した。 現病歴:2か月前から動悸を自覚している。当初は、買い物などで荷物を持って5分ほど歩くと動悸を感じていた。10日前から①家事で少し動いても動悸を感じるようになった。友人に話したところ、②病院を受診した方が良いと言われた。③動悸の性状は、脈が速くなる感じである。症状は徐々に強くなっていて、このままだとさらに悪化するのではないかと思っている。④父が脳梗塞になり、心臓の病気が原因と聞いていた。⑤自分が寝たきりになると家事が十分できなくなるため、心臓の病気を心配している。その他、軟便がある。また、以前より暑がりになった。体重は最近2か月で3kg 減少した。 既往歴:特になし。職場の健診で心電図異常を指摘されたことはない。 生活歴:夫と小学生の娘との3人暮らし。喫煙歴はない。飲酒は週1回ビール350 mL/日を10年間。仕事は事務職。 家族歴:父親が高血圧症、脳梗塞。母親が脂質異常症。 月経歴:初経 13 歳。周期 28 日型、整。

現症:意識は清明。身長 160 cm、体重 52 kg。体温 37.1 ℃。脈拍 104/分、整。血圧 128/66 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 97 %(room air)。瞳孔径は両側 3.5mm で、対光反射に異常を認めない。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。びまん性の甲状腺腫大を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 身体診察で認められることが予想されるのはどれか。

第113回国家試験 B42

79歳の女性。上腕から背中の痛みとこわばりを主訴に来院した。 現病歴:2週間前に、両側上腕から背中にかけての痛みとこわばりが出現した。1週間前から右側の拍動性の頭痛を自覚している。また、夕方から夜にかけて 38℃台の発熱があった。起床時に背中のこわばりがひどく、寝返りができないため受診した。2週間で体重が 1.5 kg 減少した。悪心、嘔吐はなく、四肢のしびれや脱力はない。 既往歴:高血圧症で内服治療中。片頭痛の既往はない。 生活歴:独居生活。喫煙歴と飲酒歴はない。 現症:意識は清明。体温 38.9 ℃。脈拍 104/分、整。血圧 142/80 mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜は貧血様である。右側頭部に索状の腫脹と圧痛を認めるが、皮疹は認めない。項部硬直はなく、頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛や腫瘤を認めない。ばち指、Osler結節および下腿浮腫を認めない。両側の上腕に把握痛を認める。関節に腫脹と圧痛を認めない。

まず確認すべきなのはどれか。

第113回国家試験 B43

79歳の女性。上腕から背中の痛みとこわばりを主訴に来院した。 現病歴:2週間前に、両側上腕から背中にかけての痛みとこわばりが出現した。1週間前から右側の拍動性の頭痛を自覚している。また、夕方から夜にかけて 38℃台の発熱があった。起床時に背中のこわばりがひどく、寝返りができないため受診した。2週間で体重が 1.5 kg 減少した。悪心、嘔吐はなく、四肢のしびれや脱力はない。 既往歴:高血圧症で内服治療中。片頭痛の既往はない。 生活歴:独居生活。喫煙歴と飲酒歴はない。 現症:意識は清明。体温 38.9 ℃。脈拍 104/分、整。血圧 142/80 mmHg。呼吸数 14/分。眼瞼結膜は貧血様である。右側頭部に索状の腫脹と圧痛を認めるが、皮疹は認めない。項部硬直はなく、頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。圧痛や腫瘤を認めない。ばち指、Osler結節および下腿浮腫を認めない。両側の上腕に把握痛を認める。関節に腫脹と圧痛を認めない。

検査所見:赤沈 102 mm/ 時間。血液所見:赤血球 301 万、Hb 9.6 g/dL、Ht 29 %、白血球 9,800、血小板 47 万。血液生化学所見:総蛋白 5.9 g/dL、AST 29 U/L、ALT 28 U/L、LD 321 U/L(基準 176〜353)、CK 38 U/L(基準 30〜140)、尿素窒素 18 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、血糖 102 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 4.9 mEq/L、Cl 100 mEq/L。免疫血清学的所見:CRP 8.6 mg/dL、リウマトイド因子<RF>陰性、抗核抗体陰性、CH50 52 U/mL(基準 30〜40)。胸部エックス線写真で異常を認めない。 精査の結果、副腎皮質ステロイドの内服加療を行うこととした。治療に伴い注意すべき検査項目はどれか。

第113回国家試験 B44

67歳の男性。心停止の状態で救急車で搬入された。現病歴:今朝6時頃、妻が寝室に起こしに行った際には返答があったが、1時間経っても起きて来なかった。再度呼びに行くと目を閉じたままで反応がないため、午前7時に救急車を要請した。5分後に救急隊が到着し、心停止と判断した。かかりつけ医には連絡せず、心肺蘇生を行いながら救命救急センターに搬送した。

救命救急センターで pulseless electrical activity<PEA>と判断し、心肺蘇生を継続した。研修医が胸骨圧迫を継続する傍ら、指導医が薬物投与のため静脈路の確保を行うこととした。 静脈路確保で第一選択となる部位はどこか。

第113回国家試験 B45

67歳の男性。心停止の状態で救急車で搬入された。現病歴:今朝6時頃、妻が寝室に起こしに行った際には返答があったが、1時間経っても起きて来なかった。再度呼びに行くと目を閉じたままで反応がないため、午前7時に救急車を要請した。5分後に救急隊が到着し、心停止と判断した。かかりつけ医には連絡せず、心肺蘇生を行いながら救命救急センターに搬送した。

既往歴:20年前から糖尿病、高血圧症と診断され、内服治療を続けていた。 生活歴:喫煙歴は 65 歳まで 20 本/日を 45 年間。飲酒は焼酎2合/日を週3日。搬入時に行った静脈採血の結果は以下のとおりであった。 検査所見:血液所見:赤血球 322 万、Hb 10.1 g/dL、Ht 31 %、白血球 8,800、血小板 11 万。血液生化学所見:AST 92 U/L、ALT 78 U/L、尿素窒素 82 mg/dL、クレアチニン 9.8 mg/dL、血糖 228 mg/dL、Na 142 mEq/L、K 9.8 mEq/L、Cl 112 mEq/L、Ca 8.6 mg/dL。CRP 2.3 mg/dL。 院内救急コールで駆け付けた内科および外科病棟当直医が、救命救急センターの研修医、指導医とともに心肺蘇生を継続した。その後も心拍は再開せず、患者の死亡が確認された。かかりつけ医に連絡をとると、この患者は糖尿病腎症による慢性腎不全のため、近々人工透析の導入予定で、最終受診は1週間前であった。 死亡診断書を交付できないのはどれか。