令和2年度(第115回)医師国家試験問題|午後-79問〜午後-60問
第115回国家試験 A41
52歳の女性。労作時の息切れを主訴に来院した。半年前から息切れを自覚し、徐々に増悪したため受診した。既往歴と家族歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。 意識は清明。体温 36.2 ℃。脈拍 76/分、整。血圧 140/76 mmHg。呼吸数 16/分。SpO₂ 95% (room ajr)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心雑音を認めない。Ⅱ音肺動脈成分の亢進を認める。呼吸音に異常を認めない。肝・脾を触知しない。血液所見: Hb 12.6 g/dL、白血球 6,400、血小板 36万。心電図で右室肥大所見を認める。胸部エックス線写真で肺野に異常を認めないが、肺動脈主幹部の拡張による左第2弓の突出を認める。胸部造影CTでは肺血栓塞栓を認めない。心エコー検査では推定肺動脈収縮期圧は 50 mmHgであった。 治療方針を決定するために必要な検査はどれか。
第115回国家試験 A42
58歳の男性。残便感を主訴に来院した。半年前から残便感を自覚し、持続するため受診した。便は兎糞状であり、排便回数は3日に1回程度である。毎回強くいきんで排便しているが、排便後も残便感が持続する。既往歴に特記すべきことはない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。直腸指診で異常を認めない。下部消化管内視鏡検査で異常を認めない。 対応として適切なのはどれか。
第115回国家試験 A43
5歳の女児。急性リンパ性白血病で入院中であり寛解導入療法を行っている。 体温 36.4 ℃ 。眼瞼結膜は貧血様である。下腿に紫斑を認める。 血液所見:赤血球 288万、Hb 8.8g/dL、Ht 26%、網赤血球 0.1%、白血球 800(分葉核好中球 19%、単球 0%、リンパ球 81%)、血小板 1.0万、PT-INR 1.0(基準 0.9~1.1)、APTT 29.2 秒(基準対象 32.2)、血漿フィブリノゲン 170 mg/dL (基準 200~400)。 対応として適切なのはどれか。
第115回国家試験 A44
42歳の女性。関節痛を主訴に来院した。1年ほど前から眼の乾燥感を自覚していた。自宅近くの眼科を受診し、ドライアイと診断され点眼薬の処方を受けている。3か月前から手のこわばりと両側手指の関節痛を自覚し、症状が改善しないため受診した。 体温 36.5℃。脈拍 72/分、整。血圧 124/82 mmHg。眼球結膜に充血を認める。舌の乾燥を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。右中指近位指節間関節と両側手関節に圧痛を認める。 尿所見:蛋白(-)、潜血(-)。血液所見:赤血球 410万、Hb 13.7 g/dL、Ht 38%、白血球 3,400(好中球 72%、好酸球 2%、好塩基球 1%、単球 12%、リンパ球 13%)、血小板 17万。血液生化学所見:総蛋白 7.0 g/dL、AST 23 U/L、ALT 25 U/L、γ-GT 34 U/L(基準 8~50)、尿素窒素 17 mg/dL、クレアチニン 0.6 mg/dL、血糖 96 mg/dL、HbA1c 5.4%(基準 4.6~6.2)。免疫血清学所見:CRP 0.3 mg/dL、リウマトイド因子〈RF〉128 IU/mL(基準 20未満)、抗核抗体 640倍(基準 20以下)。 診断に最も有用な自己抗体はどれか。
第115回国家試験 A45
54歳の女性。倦怠感を主訴に来院した。進行卵巣癌のため10日前に外来で薬物による抗癌治療を受けた。その後、水分は多めに摂取するようにしていたという。3日前から倦怠感が出現したため受診した。 意識は清明。脈拍 60/分、血圧 131/86 mmHg。皮膚のツルゴールの低下を認めない。下腹部に径 11cmの腫瘤を触知する。腹水はない。 血液生化学所見:クレアチニン 0.8 mg/dL、尿酸 3.2 mg/dL、Na 124 mEq/L、Cl 102 mEq/L、コルチゾール 6.6 μg/dL(基準 5.2~12.6)。血漿浸透圧は 250 mOsm/L(基準 275~288)で低値、尿浸透圧は 390 mOsmで高値、尿中Naは 45 mEq/Lで高値であった。胸部エックス線写真で心拡大を認めない。 血清浸透圧の低下に対してまず行うのはどれか。
第115回国家試験 A46
54歳の女性。咳嗽と喀痰を主訴に来院した。喀痰は白色であり、発熱はなかった。自宅近くの診療所を受診し、胸部エックス線写真で異常陰影を指摘され、細菌性肺炎として抗菌薬の投与を受けたが陰影は増強したため紹介され受診した。3か月前にも胸部エックス線写真で異常陰影を指摘されたが、症状が軽かったため経過観察したところ自然軽快したエピソードがあった。 気管支鏡検査を施行し、気管支肺胞洗浄液中の好酸球は37%で、経気管支肺生検では好酸球浸潤を伴った肺胞隔壁の線維化病変を認めた。 この疾患について正しいのはどれか。
第115回国家試験 A47
49歳の男性。胃もたれを主訴に来院した。半年前から2日に1回くらい、食後に不快なもたれ感が出現した。胸やけはないが、満腹感のため食事を残すことがある。既往歴に特記すべきことはなく、現在服用している薬はない。喫煙歴と飲酒歴はない。 身長 165 cm、体重 60 kg。ここ半年間で体重の増減を認めない。2週前に受診した健康診断では異常はなかった。上部消化管内視鏡検査および腹部超音波検査で異常を認めず、血中Helicobacter Pylori抗体は陰性であった。 最も考えられる疾患はどれか。
第115回国家試験 A48
生後3時間の女児。在胎 40週、体重 3,125 g、Apgarスコア 7点(1分)、8点(5分)で出生した。看護師がチアノーゼに気付き医師に報告した。 体温 37 ℃。心拍数 120/分。呼吸数 40/分。SpO₂(room air) 96%(上肢)、88%(下肢)。心雑音は認めない。皮膚色は上半身より下半身で暗い色調である。 最も考えられる疾患はどれか。
第115回国家試験 A49
31歳の女性。左母趾痛と同部の変形を主訴に来院した。3年前に誘因なく左母趾痛が出現したがそのままにしていた。最近になり、痛みが増悪し変形も目立ってきたので受診した。左足部エックス線写真を別に示す。 治療として適切でないのはどれか。
第115回国家試験 A50
48歳の女性。胸やけを主訴に来院した。3か月前から胸やけが出現し、食事に気を付け経過をみていたが改善しないため受診した。既往歴と家族歴に特記すべきことはない。喫煙歴はない。飲酒は機会飲酒。半年前に勤務異動があり仕事が忙しくなった。 意識は清明。脈拍 68/分、整。血圧 112/70 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。上部消化管内視鏡像を別に示す。 考えられるのはどれか。
第115回国家試験 A51
76歳の女性。血圧上昇を主訴に来院した。血圧自己測定を行っていたが、最近、血圧が徐々に上昇してきており、生活習慣に気を付けても改善しないため受診した。 意識は清明。身長 163 cm、体重 51 kg。体温 35.9 ℃。脈拍 86/分、整。血圧 162/98 mmHg。呼吸数 20/分。SpO₂ 95%(room air)。 尿所見:蛋白1+、糖(−)、潜血(−)、血液所見:赤血球 343万、Hb 11.0 g/dL、Ht 33%、白血球 3,700、血小板 17万。血液生化学所見:尿素窒素 20 mg/dL、クレアチニン1.0 mg/dL。 内科外来における研修医と指導医の会話を示す。 指導医「高齢の高血圧症の患者さんなので、若年や中年の患者さんと比べて注意すべき点もあると思います。塩分制限についてはどうですか」 研修医「①高齢者にも減塩は有効ですが低栄養には注意が必要です」 指導医「静脈還流量が低下した時の血圧維持が弱い可能性もありますね」 研修医「②起立性低血圧をきたしやすい理由の一つです」 指導医「生活上の注意点はありますか」 研修医「③食後の低血圧に注意します」 指導医「降圧薬の選択はどうですか」 研修医「④サイアザイド系の利尿薬は第一選択にできません」 指導医「アンジオテンシン変換酵素〈ACE〉阻害薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の併用はどうですか」 研修医「⑤推奨されません」 下線部のうち誤っているのはどれか。
第115回国家試験 A52
8か月の女児。3時間前に紙巻たばこの先端を2cm食べたことを主訴に両親に連れられて来院した。症状はなく、血色は良好で機嫌はよい。身長 70.1 cm、体重 8,000 g。体温 36.8 ℃。脈拍 120/分、整。呼吸数 30/分。SpO₂ 98 % (room air)。 心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟。 対応として適切なのはどれか。
第115回国家試験 A53
58歳の男性。空腹時血糖の高値を主訴に来院した。20年前に2型糖尿病を指摘され、15年前からインスリン自己注射を開始した。現在は超速効型ヒトインスリンを各食前に6単位、就寝前に持効型溶解インスリンを12単位自己注射している。内服薬は服用していない。最近の自己血糖測定値を下記に示す。睡眠中に著明な発汗を伴い目覚めることがある。 身長 173 cm、体重 62 kg。脈拍 68/分。血圧 126/82 mmHg。身体所見に異常を認めない。尿所見:蛋白(−)、糖 2+、ケトン体(−)。血液所見:赤血球 343万、Hb 11.0 g/dL、Ht 33%、白血球 3,700、血小板 17万。血液生化学所見:随時血糖 178 mg/dL、HbA1c 6.4%(基準 4.6〜6.2)。 まず行うべきなのはどれか。
第115回国家試験 A54
6歳の男児。首を左右に振る動作を主訴に、母親に連れられて来院した。昼食後テレビをみているときに首を左右に振る動作が5分程度続いたため受診した。7か月前から素早い瞬目を繰り返すことに気付かれ、2か月程度で一旦治まった。4か月前から瞬目が再びみられるようになり、突発的、非律動的に顔をしかめたり、首を左右に振ったりするようになった。いずれの症状も睡眠中にはみられず、リラックスしている時に多く出現する。短時間であれば自分で抑制することができる。神経診察で異常を認めない。 最も考えられるのはどれか。
第115回国家試験 A55
28歳の男性。両耳の耳鳴を主訴に来院した。1年前から高音の耳鳴と軽い難聴を自覚していたが、会話に支障はなかった。 耳鳴が徐々に増悪してきたので受診した。小児期から現在まで耳痛、耳漏の自覚はない。片道2時間の高校・大学の通学時には、大きな音量で音楽をイヤーフォンで聴いていた。社会人になった後も、通勤時には毎日3時間はイヤーフォンで音楽を聴いている。両側の鼓膜は正常で、側頭骨CTでも異常を認めなかった。 別に示すオージオグラムの中でこの患者のオージオグラムとして最も適切なのはどれか。
第115回国家試験 A56
25歳の男性。咳嗽を主訴に来院した。数か月前から腰背部痛を自覚し、2週前から咳嗽が持続したため受診した。既往歴に特記すべきことはない。 身長176cm、体重 68 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 68/分、整。血圧 110/72 mmHg。尿所見に異常を認めない。血液所見:赤血球 456万、Hb 15.1 g/dL、白血球 8,300、血小板 26万。 血液生化学所見:総蛋白 6.8 g/dL、アルブミン 3.9 g/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、AST 40 U/L、ALT 38 U/L、LD 410 U/L (基準 120〜245)、hCG 40mIU/mL(基準 0.7以下)、α-フェトプロテイン〈AFP〉200 ng/mL(基準20以下)、CEA 3.8 ng/mL(基準 5以下)、CA19-9 10 U/mL(基準 37以下)。胸腹部単純CTで両肺に各々4〜5個の肺腫瘤と、最大径8cmの後腹膜リンパ節腫大を認めた。 原発巣の可能性が高い臓器はどれか。
第115回国家試験 A57
36歳の初産婦(1妊0産)。妊娠40週0日に陣痛発来のため入院した。続発性微弱陣痛で分娩が遷延したため、オキシトシンで陣痛促進後、吸引分娩となった。児は、3,800 g、女児で、Apgarスコアは8点(1分)、9点(5分)であった。児娩出後30分経過したが、胎盤が自然に娩出されず、出血が持続するため、用手剥離を行った。胎盤娩出後も子宮からの出血が持続しているため、子宮を双手圧迫している。 母体は顔面蒼白で冷や汗をかいているが、意識レベルは正常である。体温 36.9 ℃。心拍数 120/分、整。血圧 80/40 mmHg。 ここまでの出血量の推定値はどれか。
第115回国家試験 A58
78歳の女性。意識障害と左片麻痺のため救急車で搬入された。長男夫婦と同居、日常生活は自立していた。昨夜午後9時まで同居の家族とテレビを見ていた。その後、自室に戻り就寝したようだが、起床時間の午前6時になっても起きてこないことを心配した家族が布団のそばで倒れているところを発見し、家族が救急車を要請した。75歳時に心房細動を指摘され、経口抗凝固薬を服用中であった。 意識レベルはJCSⅠ-1。体温 36.8 ℃ 。心拍数 92/分、不整。血圧 140/88 mmHg。呼吸数 16/分。会話は可能で口頭命令への理解は良好である。視野は正常で、半側空間無視は認めない。左上下肢に不全片麻痺を認める。感覚障害を認めない。 血液生化学検査に異常を認めない。午前8時に撮像した頭部MRIの拡散強調像、FLAIR像、T2*強調像、MRAを別に示す。 正しいのはどれか。
第115回国家試験 A59
47歳の男性。右下腿の痛みを主訴に来院した。5週前にバイク事故で右腔骨の開放骨折を起こし、受傷6時間後に洗浄、デブリドマン及び創外固定術を受けた。受傷後1週で創外固定を抜去し、プレートによる内固定術を受けた。内固定術後は右下肢免荷で歩行していた。昨日、右下腿内側に安静時痛と腫脹が出現したため受診した。 体温 38.8 ℃。脈拍 80/分、整。血圧 144/62 mmHg。右下腿に発赤、熱感および腫脹があり、手術創が一部離開している。 血液所見:赤血球 422万、Hb 12.4 g/dL、白血球 19,200。血液生化学所見:総蛋白 6.8 g/dL、アルブミン 3.6 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、直接ビリルビン 0.2 mg/dL、AST 24 U/L、ALT 18 U/L、LD 182 U/L(基準 120-245)、ALP 334 U/L(基準 115〜359)、尿素窒素 17 mg/dL、クレアチニン 0.4 mg/dL、血糖 112 mg/dL、HbA1c 5.3%(基準 4.6-6.2)、Na 141 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Cl 98 mEq/L。CRP 21 mg/dL。右下腿の写真及び右下腿エックス線写真を別に示す。 治療として適切なのはどれか。
第115回国家試験 A60
64歳の男性。股関節痛を自覚し、会社の診療所で処方された鎮痛薬を不定期に内服していたが痛みが改善しないため受診した。 心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝.脾を触知しない。表在リンパ節は触知しない。 血液所見:赤血球 353万、Hb 11.5 g/dL、Ht 34%、白血球 3,200、血小板 16万。血液生化学所見: 総蛋白 10.5 g/dL、アルブミン 3.9 g/dL、IgG 5,425 mg/dL(基準 960〜1,960)、IgA <20 mg/dL(基準 110〜410)、IgM <10 mg/ dL(基準 65〜350)、総ビリルビン 0.7 mg/dL、AST 19 U/L、ALT 10 U/L、LD 178 U/L(基準 120〜245)、尿素窒素 11 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL、尿酸 4.7 mg/dL、Na 141 mEq/L、K 4.2 mEq/L、Cl 108 mEq/L、Ca 9.8 mg/dL。エックス線写真で両股、胸椎および腰椎に多発する溶骨性病変を認める。両股関節エックス線写真、骨髄血塗抹May-Giemsa染色標本、血清蛋白分画、免疫電気泳動検査写真を別に示す。 この患者の治療として適切でないのはどれか。