令和2年度(第115回)医師国家試験問題|午後-99問〜午後-80問

第115回国家試験 A21

35歳の男性。発熱と全身の皮疹を主訴に来院し、8年前に尋常性乾癬と診断され副腎皮質ステロイド外用薬を塗布していた。 7日前から39℃台の発熱とともに、急速に紅斑が全身に拡大したため受診した。 受診時紅斑上に径 5mmまでの小膿疱が多発し、集簇する。地図状舌を認める。 血液所見:白血球 16,000 (桿状核好中球 15%、分葉核好中球 70%、好酸球 3%、単球 5%、リンパ球 7%)。血液生化学所見:血清アルブミン 3.0 g/dL。CRP 15.0 mg/dL。膿疱からの細菌培養検査は陰性、真菌鏡検とTzanck試験はいずれも陰性であった。皮膚生検でKogoj海綿状膿疱を認める。体幹の写真を別に示す。 最も考えられるのはどれか。

第115回国家試験 A22

77歳の女性。肺がん検診の低線量CTで左乳房腫瘤を指摘されたため受診した。マンモグラム及び乳房超音波像を別に示す。 次に行うのはどれか。

第115回国家試験 A23

35歳の男性。テレビを見ている時に口をもぐもぐと動かす、舌を突き出すなどの動きがみられることを、家族に指摘されたと訴えて来院した。約6か月前からその動きがみられるという。30歳ころ、幻覚妄想状態を呈して抗精神病薬を投与され、以後、服薬を継続中である。 この動きについて正しいのはどれか。

第115回国家試験 A24

55歳の男性。夜中の記憶がないことを主訴に妻とともに来院した。数年前に不眠に対して睡眠薬を処方されて以来、継続して服用し、仕事を続けていた。経営していたレストランに2週前に泥棒が入り、ひどく落ち込んでいる様子であった。昨日、午後7時に帰宅して夕食を済ませ、午後11時に就床した。翌日の午前1時頃、少しでも本人を励まそうとする友人から、カラオケに誘う電話があり、カラオケ店にタクシーで行き宴会に参加し、午前4時頃帰宅した。帰宅後約8時間睡眠をとって午後勤務についたが、夜中のことを全く覚えていない。友人によると普通に歌い飲食したとのことであった。アルコールは全く飲めず、当日も飲酒していない。妻の話によると2か月前くらいから夜中に食事をしたり、コンビニエンスストアに行ったりしていることを、翌朝全く覚えてないことが3回あったという。 この患者で考えられる疾患はどれか。

第115回国家試験 A25

4か月の男児。鼻汁と咳嗽を主訴に両親に連れられて来院した。昨日から鼻汁、咳嗽および喘鳴が出現した。在胎36週1日、2,466 gで出生した。低出生体重児のためNICUに3週間入院した。3歳の兄が1週前から鼻汁を認めていた。母乳栄養で哺乳は普段と変わらない。 身長 64.3 cm、体重 7,220 g。体温 36.8 ℃。心拍数 120/分。呼吸数 50/分。SpO₂ 98% (room air)。心音に異常を認めない。呼吸音は喘鳴を認めるが陥没呼吸は認めない。腹部は軽度膨隆を認める。毛細血管再充満時間の延長はない。鼻腔RSウイルス迅速検査は陽性だった。 対応として正しいのはどれか。

第115回国家試験 A26

22歳の男性。むくみを主訴に来院した。2週前、急に顔面と下腿のむくみ及び排尿後の尿の細かい泡立ちに気付いた。むくみは次第に増悪し、この間に体重は約20kg増加した。5日前から食欲がなく食事量は半減し、下痢気味で、全身倦怠感が悪化している。一昨日から排尿回数が減少し、昨日は色が濃く泡立ちの強い尿が2回、いずれも少量出たのみで、本日は起床後10時間でまだ排尿がない。 意識は清明。身長176cm、体重92kg。血圧110/70mmHg。脈拍88/分、整。呼吸数16/分。顕著な両側眼瞼浮腫があり、四肢に左右差のない圧痕性浮腫を認める。 今後1週間以内に合併する可能性の高い病態はどれか。

第115回国家試験 A27

46歳の女性。息苦しさと全身倦怠感を主訴に来院した。半年前に手指と手首の関節痛および頬部の皮疹が出現し、全身性エリテマトーデス〈SLE〉の診断で副腎皮質ステロイドとヒドロキシクロロキンが導入された。その後、症状は軽快していたが、1週前から息苦しさ、全身倦怠感および前胸部の違和感が出現した。症状が増悪するため、本日夜8時に救急外来を受診した。 体温 37.8 ℃。脈拍 102/分、整。血圧 100/72 mmHg。SpO₂96 % (room air)。頬部に紅斑を認める。両側の中指近位指節間関節と手関節の腫脹を認める。頸静脈怒張は吸気時に顕著となる。心音ではⅠ音とⅡ音の減弱を認める。呼吸音には異常を認めない。下腿に軽度の浮腫を認める。 血液所見:赤血球 346万、Hb 10.8 g/dL、Ht 33%、白血球 7,200、血小板 15万。血液生化学所見: ALT 26 U/L、LD 160 U/L (基準 120~245)、クレアチニン 0.5 mg/dL、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉56 pg/mL(基準 18.4以下)。CRP 3.8 mg/dL。収縮期血圧は呼気時に比べ吸気時に18 mmHg低下する。胸部エックス線写真ではCTR 55%、肺野に異常を認めない。心電図では肢誘導に低電位を認める。心エコー図を別に示す。 この患者の呼吸困難感の原因として最も考えられる病態はどれか。

第115回国家試験 A28

72歳の女性。嗄声を主訴に来院した。20年前から声がかれて歌を歌えず、高い声を出せなかった。声質は悪化していないが、2か月前から階段を上る時に息苦しくなることが数回あったため受診した。既往歴に特記すべきことはない。喫煙は40歳から10本/日。飲酒は同時期から週1~2回、缶ビール(350mL)1本。 身長153cm、体重56kg。体温36.3℃。脈拍70/分、整。血圧136/66mmHg。呼吸数24/分。SpO₂ 97 %(room air)。頸部に腫瘤を触知しない。尿検査、血液検査および胸部エックス線検査に異常を認めない。 別に示す喉頭内視鏡像の中で、この患者の内視鏡像として適切なのはどれか。

第115回国家試験 A29

76歳の男性。3か月前から続く左手の母指から環指のしびれを主訴に来院した。 身長165cm、体重65kg。左母指から環指撓側にかけて感覚鈍麻を認める。握力は右26kg、左22kg。末梢神経伝導検査の結果を別に示す。 最も考えられるのはどれか。

第115回国家試験 A30

67歳の男性。陰茎の腫瘤を主訴に来院した。1年前から陰茎の腫瘤を自覚し、9か月前から右鼠径の腫脹があり、その後疼痛も出てきた。下着に膿が付着し悪臭も伴うようになったため受診した。既往歴に特記すべきことはない。独身。喫煙は 10本/日を40年間。飲酒は機会飲酒。 身長 170 cm、体重 59 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 76/分、整。腹部は平坦、軟で、肝 ・脾を触知しない。亀頭部に腫瘤および鼠径部に3cmの硬い腫瘤を認める。血液所見:赤血球 463万、Hb 13.4 g/dL、Ht 40%、白血球 19,700、血小板 59万。血液生化学所見:総蛋白 8.1 g/dL、アルブミン 3.7 g/dL、AST 15 U/L、ALT 11 U/L、尿素窒索 14 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、SCC 19. 9 ng/mL(基準 1.5以下) 。CRP 2.3 mg/dL。患部の写真及び骨盤MRIのT2強調像を別に示す。 最も考えられる疾患はどれか。 《陰部画像:掲載不可》亀頭部に潰瘍を伴う腫瘤

第115回国家試験 A31

72歳の女性。右眼の歪視と視力低下を主訴に来院した。約1か月前から右眼が見えにくく、線がゆがんで見える。左眼にも同様の症状があるが、右眼に比べると軽度である。視力は右0.1(0.2× -0.75 D)、左0.7(0.9× -0.50 D)。 最も考えられる疾患はどれか。

第115回国家試験 A32

26歳の女性。動悸と全身倦怠感を主訴に来院した。約1か月前から、少しの体動で脈が速く打つ感じを自覚していた。また、ここ数か月で体重が5kg減少していた。職場の配置換えによるストレスの影響かと考え、医療機関を受診していなかった。3日前から胸部違和感と全身倦怠感も伴うようになったため心配になって受診した。既往歴、家族歴に特記すべきことはない。 意識は清明。身長 158 cm、SpO₂ 98%(room air)。眼瞼結膜に貧血を認めない。心音では、Ⅰ音の強さが変化する。呼吸音に異常を認めない。神経診察で、両手に振戦を認める。徒手筋力テストに異常を認めない。心電図を別に示す。 診断に最も有用なのはどれか。

第115回国家試験 A33

18歳の女性。下腹部鈍痛を主訴に来院した。3か月前から腹満感が出現し、1か月前から下腹部鈍痛が出現した。初経12歳、月経周期28日型、整、持続5日間。性交経験はない。 身長 161 cm、体重 55 kg。体温 37.0 ℃。脈拍 92/分、整。血圧 124/74 mmHg。下腹部は軽度に膨隆し、直腸指診で圧痛を伴う可動性不良な腫瘤を触知する。直腸に異常を認めない。血液生化学所見: hCG< 0.5 IU/L(基準 1.0以下)、CEA1.6 ng/ml(基準4.9以下)、CA19-9 10 U/mL(基準 37以下) 、CA125 418 U/mL(基準 35以下)、 AFP 140000 ng/mL(基準 20以下)。骨盤部MRIのT2強調矢状断像を別に示す。 最も考えられる疾患はどれか。

第115回国家試験 A34

74歳の男性。左前腕の痛みとしびれを主訴に来院した。夕食中に突然、左前腕の痛みとしびれ感が出現して持続するために救急外来を受診した。健康診断で心房細動を指摘されたが、医療機関を受診していなかった。 来院時の意識は清明で。脈拍104/分、不整。心尖部領域にLevine2/6の拡張期雑音を聴取する。右上肢で測定した血圧は130/86 mmHg。左上肢は前腕から手指にかけて蒼白であり、橈骨動脈の拍動は微弱であった。 血液所見:赤血球 442万、Hb 13.9 g/dL、Ht 41%、白血球 4,400、血小板 26万、フィブリノゲン 419 mg/dL (基準 200~400)、FDP 8.0 μg/mL (基準 5以下)、Dダイマー 3.7 μg/mL (基準 1以下)。血液生化学所見:AST 21 U/L、ALT 18 U/L、LD 250 U/L (基準 120~245)、CK 122 U/L (基準 30~140)、尿素窒素 19 mg/dL、クレアチニン 1.2 mg/dL、脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉134 pg/mL (基準 18.4 以下)。CRP 0.4 mg/dL。 最も考えられるのはどれか。

第115回国家試験 A35

65歳の男性。蛇に指を咬まれたことを主訴に来院した。30分前、草刈り中に左示指をマムシに咬まれた。既往歴に特記すべきことはない。 意識は清明。脈拍 70/分、整。血圧 108/80 mmHg。SpO₂ 96% (room air)。 左示指の指腹に2か所の咬傷を認め、左前腕が腫脹している。 対応として誤っているのはどれか。

第115回国家試験 A36

52歳の男性。下腹部の緊満と排尿ができないことを主訴に受診した。今朝、自宅で脚立から足を踏みはずして会陰部を打撲した。受診時、外尿道口からの出血を認める。 意識は清明。身長 168 cm、体重 72 kg。体温 36.7 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 124/84 mmHg。呼吸数 20/分。会陰部の自発痛を訴え、皮下の膨隆と圧痛を認める。下腹部は緊満している。 血液所見:赤血球 400万、Hb 14.1 g/dL、Ht 42%、白血球 13,200、血小板 25万。血液生化学所見:総蛋白 7.5 g/dL、アルブミン 4.0 g/dL、総ビリルビン 1.2 mg/dL、AST 23 U/L、ALT 22 U/L、LD 179 U/L、(基準 120~245)、尿素窒素 16 mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、アルブミン 4.0 g/dL、総ビリルビン 1.2 mg/dL、AST 23U/L、ALT 22 U/L、LD 179 U/L (基準 120~245)、尿素窒素16mg/dL、クレアチニン 0.7 mg/dL、尿酸 5.5 mg/dL、血糖 96 mg/dL、Na 141 mEq/L、Cl 104 mEq/L、Ca 9.9 mg/dL。腹部エックス線写真では骨盤骨折を認めない。骨盤部CTでは会陰部に血腫を認める。進行性尿道造営では膜様部尿道で造影剤の尿道外の溢流を認め、膀胱は造営されない。 まず行う処置として適切なのはどれか。

第115回国家試験 A37

47歳の男性。乾性咳嗽を主訴に来院した。2週前から夜間の微熱があり、1週前から出現してきた乾性咳嗽が増悪したため受診した。1年半前に原発性骨髄線維症に対して同種造血幹細胞移植を受けた。 体温 36.4℃。脈拍 88/分、整。血圧 110/62 mmHg。呼吸数 20/分。心音と呼吸音とに異常を認めない。 血液所見:赤血球 319万、Hb 10.3 g/dL、Ht 31%、網赤血球 2.8%、白血球 5,700(桿状核好中球 3%、分葉核好中球 80%、好酸球 3%、好塩基球 1%、単球 8%、リンパ球 5%)、血小板 21万。血液生化学所見:IgG 480mg/dL(基準960~1,960)、IgA 21 mg/dL(基準 110~410)、IgM 28 mg/dL(基準 65~350)。CRP 3.2 mg/dL。動脈血ガス分析(room air):pH 7.39、PaCO₂ 44 Torr、PaO₂ 61 Torr、HCO₃⁻ 25 mEq/L。誘発喀痰のMay-Giemsa染色では栄養帯を、Grocott染色では黒く染まるシストをそれぞれ検出した。胸部エックス線写真及び胸部CTを別に示す。 検査所見として正しいのはどれか。

第115回国家試験 A38

11歳の男児。運動後の呼吸困難を主訴に救急車で搬入された。給食後、午後1時間目の体育で持久走中に症状が出現してきた。給食の主なメニューは、パン、エビグラタン、オニオンサラダ、キウイフルーツだった。気管支喘息の既往はあるが、現在常用薬はなく、最近1年間、発作はなかったという。その他既往歴に特記すべきことはない。 意識は清明。心拍数 90/分。血圧 96/62 mmHg。呼吸数 24/分。胸部聴診上、喘鳴を聴取する。腹部と下肢に紅斑と膨疹を認める。 直ちに行うべき対応として適切なのはどれか。

第115回国家試験 A39

48歳の女性。ふらつきと複視を主訴に来院した。10日前に38℃の発熱と咽頭痛が出現したため自宅近くの診療所を受診し、感冒として投薬を受け、7日前に症状が軽快した。2日前からテレビの画面が二重に見えることに気付いた。昨日から、歩行時にふらついて転びそうになることが増えてきた。これらの症状が徐々に進行してきたため受診した。 意識は清明。体温 36.5 ℃。脈拍 68/分、整。血圧 120/68 mmHg。心音と呼吸音とに異常を認めない。神経診察では、両眼とも垂直、水平方向の眼球運動制限を認め、正面視以外では複視を自覚する。眼振は認めない。四肢筋力は正常だが、四肢腱反射はすべて消失している。Babinski徴候は陰性。膝踵試験は両側とも拙劣で、歩行は可能だが歩幅は広く不安定である。感覚障害は認めない。 この患者と同様の発症機序と考えられるのはどれか。

第115回国家試験 A40

70歳の男性。肝腫瘍に対する肝切除術後、ICUに入室した。入室時の脈拍は 80/分、整、血圧は 150/84 mmHgであった。翌日、朝8時に胸部不快感と強い悪心を訴えた。その後不穏状態となり、顔色は不良、全身に発汗を認める。 体温 37.5 ℃。脈拍 68/分、整。血圧は 80/48 mmHg。SpO₂ 94%(マスク 5L/分酸素投与下)。心音にⅣ音を聴取し、呼吸音は両側でwheezeを聴取する。四肢末梢に冷感を認める。術前の心電図及び胸部症状出現時の心電図を別に示す。ベッドサイドの心エコー検査で左室前壁と下壁に壁運動低下を認めた。 速やかに行うべきなのはどれか。