令和元年度(第114回)医師国家試験問題|午後-59問〜午後-40問
第114回国家試験 A61
58歳の女性。健康診断で異常を指摘されたため来院した。自覚症状はない。飲酒歴はない。輸血歴はない。 身長 152 cm、体重 72 kg。血圧 152/84 mmHg。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。神経診察で異常を認めない。 血液所見:赤血球 385万、Hb 12.5 g/dL、Ht 38%、白血球 4,900、血小板 18万。血液生化学所見:アルブミン 4.4 g/dL、総ビリルビン 1.1 mg/dL、直接ビリルビン 0.8 mg/dL、AST 78 U/L、ALT 92 U/L、LD 293 U/L(基準 120〜245)、ALP 347 U/L(基準 115〜359)、γ-GTP 94 U/L(基準 8〜50)、アミラーゼ 79 U/L(基準 37〜160)、尿素窒素18 mg/dL、クレアチニン0.9 mg/dL、尿酸6.9 mg/dL、血糖158 mg/dL、HbA1c 7.6%(基準 4.6〜6.2)、総コレステロール 216 mg/dL、トリグリセリド 190 mg/dL、Na 139 mEq/L、K 4.4 mEq/L、Cl 103 mEq/L。免疫血清学所見:HBs抗原陰性、HCV抗体陰性、抗核抗体陰性、抗ミトコンドリア抗体陰性。 肝障害の原因として、最も考えられるのはどれか。
第114回国家試験 A62
23歳の女性。左下腹部痛を主訴に来院した。3日前の朝、通勤中の電車内で急に左下腹部痛を自覚した。痛みは2時間ほどで自然に軽快したという。2か月前にも同様の疼痛発作があったため心配して受診した。既往歴と家族歴に特記すべきことはない。 月経は周期28日型、整、持続5日間。身長158cm、体重48kg。体温36.6℃。脈拍72/分、整。血圧100/64mmHg。呼吸数18/分。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。恥骨上から臍上6cmにかけて腹部腫瘤を触知し、軽度の圧痛を認める。子宮は正常大で圧痛は認めない。 血液所見:赤血球380万、Hb 10.1g/dL、Ht 32%、白血球4,000、血小板19万。血液生化学所見:総蛋白7.0g/dL、AST 22U/L、ALT 20U/L、LD 190U/L(基準120〜245)、α-フェトプロテイン〈AFP〉5ng/mL(基準20以下)、CA19-9 35U/mL(基準37以下)、CA125 30U/mL(基準35以下)。下腹部MRIのT2強調像、T1強調像及び脂肪抑制T1強調像を別に示す。 治療として適切なのはどれか
第114回国家試験 A63
90歳の男性。散歩の途中で段差につまずいて転倒し歩行不能となり、救急車で搬入された。転倒前の歩行能力は自立し、歩行補助具は不要であった。 意識は清明。体温 36.9 ℃。心拍数 92/分、整。血圧 120/70 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 98%(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。頭部や四肢に創傷はない。右股関節に疼痛があり、右下肢を動かすことができない。麻痺はない。両側股関節正面エックス線写真を別に示す。 この段階で最も適切な対応はどれか。
第114回国家試験 A64
35歳の女性。性感染症治療後に病状を説明することになった。患者は帯下の増加と下腹部痛を主訴に4週前に来院した。付属器に圧痛を認め、子宮頸部の性器クラミジアDNA検査が陽性で抗菌薬を投与した。帯下は減少し下腹部痛と圧痛も消失し、性器クラミジアDNA検査も陰性となった。 患者に対する説明で適切なのはどれか。
第114回国家試験 A65
40歳の経産婦(6妊5産)。妊娠34週3日に胎動消失を主訴に来院した。妊娠経過は順調であったが、妊娠30週の妊婦健康診査後、多忙と経済的理由のため受診していなかった。これまで計5回の経腟自然分娩の既往がある。 身長 152 cm、体重 62 kg。体温 36.8 ℃。脈拍 84/分、整。血圧 116/72 mmHg。子宮収縮は認められなかった。腹部超音波検査を施行したところ、胎児心拍を認めなかった。推定胎児体重は 1,500 gで妊娠30週の妊婦健康診査時の推定体重とほぼ変わらなかった。胎盤に異常所見はなかった。 直ちに行う血液検査項目として適切なのはどれか。2つ選べ。
第114回国家試験 A66
48歳の女性。全身倦怠感を主訴に来院した。20年前からほぼ毎日、日本酒5合を飲酒している。6か月前に急性胃腸炎で入院した際にけいれんが生じたという。1週前から食欲不振、倦怠感と腹部膨満感が出現したため救急外来を受診し、入院した。 意識レベルはJCS I-3。身長 158 cm、体重 59 kg。体温 37.4 ℃。脈拍 108/分、整。血圧 122/78 mmHg。呼吸数20/分。SpO2 96%(room air)。眼瞼結膜は貧血様で、眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部はやや膨隆し波動を認める。全身に発汗を認める。 血液所見:赤血球 247万、Hb 9.6 g/dL、Ht 28%、白血球 15,000、血小板 5万、PT-INR 2.1(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白 6.2 g/dL、アルブミン 2.6 g/dL、総ビリルビン 6.1 mg/dL、直接ビリルビン 3.4 mg/dL、AST 136 U/L、ALT 45 U/L、LD 362 U/L(基準 120〜245)、ALP 384 U/L(基準 115〜359)、γ-GT 223 U/L(基準 8〜50)、アミラーゼ 68 U/L(基準 37〜160)、クレアチニン 1.6 mg/dL。HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。 対応として適切なのはどれか。2つ選べ。
第114回国家試験 A67
43歳の女性。強い動悸と頸部痛を主訴に来院した。1週前から夜間の発熱と咳嗽が出現し、自宅近くの診療所を受診して総合感冒薬を処方された。その後、感冒症状は改善したが頸部痛、動悸および両手指の振戦が出現したため受診した。 体温37.1℃。脈拍120/分、整。血圧118/60mmHg。甲状腺はびまん性に軽度腫大しており、触診では甲状腺右葉の腫脹部に圧痛を認める。 検査所見:赤沈65mm/1時間。血液所見:白血球9,800。血液生化学所見:TSH検出感度未満(基準0.2〜4.0)、FT4 5.86ng/dL(基準0.8〜2.2)。免疫血清学所見:CRP 5.0mg/dL、抗TSH受容体抗体陰性。心電図では洞性頻脈を認める。甲状腺超音波検査では疼痛部に一致した低エコー所見を認める。 行うべき治療はどれか。2つ選べ。
第114回国家試験 A68
78歳の女性。皮疹と食欲低下を主訴に来院した。高血圧症、狭心症および脂質異常症で自宅近くの医療機関に通院し、カルシウム拮抗薬、抗血小板薬およびスタチンの処方を受けていた。20日前の定期通院時の血清クレアチニンは0.7mg/dL、eGFR 61mL分/1.73m2であった。5日前から左背部から側腹部にかけて痛みを伴う皮疹が出現し市販のNSAIDを服用していたが改善せず、食事も摂れなくなったため受診した。 意識は清明。身長 152 cm、体重 41 kg。体温 37.2 ℃。脈拍 88/分、整。血圧 142/80 mmHg。左背部から側腹部にかけて紅斑と水疱を認め強い疼痛を伴っている。 血液所見:赤血球 341万、Hb 11.0 g/dL、Ht 33%、白血球 3,700、血小板 17万。血液生化学所見:尿素窒素 23 mg/dL、クレアチニン 1.4 mg/dL、eGFR 28mL/分/1.73m2、総コレステロール 210 mg/dL、Na 143 mEq/L、K 4.6 mEq/L、Cl 106 mEq/L。CRP 0.7 mg/dL。 帯状疱疹と診断され、強い痛みと食欲不振もあることから入院の上でアシクロビルによる帯状疱疹の治療を行うこととした。この患者で減量して投与すべきなのはどれか。2つ選べ。
第114回国家試験 A69
70歳の男性。発熱を主訴に来院した。2週前から38℃前後の発熱が出現し、解熱薬とセフェム系の抗菌薬を処方された。一時的に症状の改善がみられたが、投薬終了後に再び発熱したため、紹介され受診した。58歳時より高血圧症および脂質異常症に対して自宅近くの診療所から内服薬を処方されている。3年前に僧帽弁逆流症を指摘されたが手術適応はないと診断されていた。 意識は清明。体温 37.6 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 124/80 mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 94%(room air)。心音は心尖部にIII/VIの全収縮期雑音を聴取する。呼吸音に異常を認めない。尿所見:尿比重 1.016、蛋白(−)、糖(−)、潜血(−)、沈渣に赤血球、白血球を認めない。 血液所見:赤血球 452万、Hb 12.4 g/dL、Ht 36%、白血球12,400(桿状核好中球 55%、分葉核好中球 22%、好酸球 2%、好塩基球 1%、単球 5%、リンパ球 15%)、血小板 35万。血液生化学所見:AST 38 U/L、ALT 36 U/L、尿素窒素 20 mg/dL、クレアチニン 1.0 mg/dL、尿酸 7.1 mg/dL、Na 137 mEq/L、K 4.6 mEq/L、Cl 100 mEq/L。CRP 20 mg/dL。 現時点における対応で正しいのはどれか。2つ選べ。
第114回国家試験 A70
76歳の女性。物忘れが多くなり、何度も同じことを尋ねるようになったことを心配した家族に付き添われて来院した。約1年前から軽度の意欲低下がみられていたが、ここ3か月間は食事を作るものの同じ献立を何日も連続して作るようになってきたという。 身体所見に異常を認めない。Hamiltonうつ病評価尺度4点(0点〜7点:正常)、Mini-Mental State Examination〈MMSE〉16点(30点満点)。頭部MRIで海馬の軽度萎縮が認められた。 この患者の機能評価に有用な検査はどれか。2つ選べ。
第114回国家試験 A71
9歳の男児。左肘痛を主訴に母親とともに来院した。自転車乗車中に転倒し、左手をついて受傷した。左肘関節エックス線写真を別に示す。徒手整復を行う準備をしていたところ、左前腕部にも疼痛が出現し、左手指の自動運動が不能となった。 緊急筋膜切開術を判断する指標として適切なのはどれか。2つ選べ。
第114回国家試験 A72
61歳の男性。心窩部痛を主訴に救急車で搬入された。7日前に腰痛を自覚し自宅近くの診療所でNSAIDを処方されていた。今朝急に心窩部痛が出現し急速に増強するため救急車を要請した。 意識は清明。身長 173 cm、体重 67 kg。体温 36.0 ℃。心拍数 88/分、整。血圧 124/80 mmHg。呼吸数 20/分。SpO2 98%(鼻カニューラ3L/分酸素投与下)。腹部は平坦で、心窩部に圧痛と軽度の反跳痛とを認める。 血液所見:赤血球 483万、Hb 15.7 g/dL、Ht 47%、白血球 14,700、血小板 30万。血液生化学所見:総蛋白 7.3 g/dL、アルブミン 4.2 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、AST 20 U/L、ALT 15 U/L、LD 170 U/L(基準120〜245)、ALP 265 U/L(基準115〜359)、γ-GT 66 U/L(基準8〜50)、アミラーゼ 52 U/L(基準37〜160)、CK 85U/L(基準30〜140)、尿素窒素 17 mg/dL、クレアチニン1.0 mg/dL、血糖 103 mg/dL、Na 146 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Cl 106 mEq/L。CRP 2.2 mg/dL。腹部単純CTを別に示す。 まずは手術を実施せず、保存的治療を行うこととした。対応として適切なのはどれか。3つ選べ。
第114回国家試験 A73
41歳の女性。高血圧、頭痛および脱力を主訴に来院した。3年前から高血圧症に対して、自宅近くの診療所でカルシウム拮抗薬を投与されていたが、血圧は150/80mmHg前後の高値が持続していた。1年前から頭痛と脱力も自覚するようになったため受診した。 血液検査では血清カリウムが2.8mEq/Lと低下していた。二次性高血圧症を疑って施行した安静臥位30分後の採血では、血漿レニン活性0.1ng/mL/時間(基準1.2〜2.5)、血漿アルドステロン濃度231pg/mL(基準30〜159)であった。腹部単純CTでは異常所見を認めない。 診断のために行うべき検査はどれか。3つ選べ。
第114回国家試験 A74
34歳の男性。心窩部痛を主訴に来院した。本日、オートバイ運転中に併走する乗用車と接触し転倒した。意識障害はなく、四肢の擦過傷と右膝関節の打撲以外に大きな外傷はなかった。転倒3時間後に心窩部痛を自覚し、徐々に増強するため妻に付き添われて受診した。 意識は清明。体温 37.2 ℃。脈拍 104/分、整。血圧 96/58 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2 97%(room air)。眼瞼結膜はやや貧血様だが眼球結膜に異常を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は軽度膨隆し、腸雑音の減弱を認める。心窩部から右季肋下にかけての圧痛を認める。神経診察で異常を認めない。 血液所見:赤血球 327万、Hb 10.6g/dL、Ht 34%、白血球 11,200、血小板 16万。血液生化学所見:総蛋白 6.8 g/dL、アルブミン 3.7 g/dL、総ビリルビン 0.9 mg/dL、AST 142 U/L、ALT 78 U/L、LD 358 U/L(基準 120〜245)、γ-GT 57 U/L(基準 8〜50)、アミラーゼ 154 U/L(基準37〜160)、尿素窒素 18 mg/dL、クレアチニン 0.8 mg/dL、血糖 97 mg/dL、Na 140 mEq/L、K 4.3 mEq/L、Cl 100 mEq/L。CRP 1.0mg/dL。 現時点で行うべき検査として適切なのはどれか。3つ選べ。
第114回国家試験 A75
80歳の男性。夜間に大声をあげることを主訴に来院した。約10年前から時々はっきりした夢をみて、夜中に大声をあげるようになった。1年前から動作がのろくなり、歩行時に歩幅が小刻みとなって、つまずくことが増えてきた。2か月前から、カーテンが人の姿に見えることがあったという。さらに、夜中に大声をあげて手足を動かしてベッド周囲の物を落とすことが増えてきたため、心配した妻に勧められて受診した。既往歴に特記すべきことはなく、常用薬はない。 頭部MRIでは軽度の脳萎縮以外に異常は認めない。 診断に有用な検査はどれか。3つ選べ。
第114回国家試験 B1
市民への健康教育として適切な内容はどれか。
第114回国家試験 B2
緊急気管切開を考慮すべき疾患はどれか。
第114回国家試験 B3
尿素窒素 28 mg/dL、血糖 90 mg/dL、Na 125 mEq/L。 計算による血漿浸透圧(mOsm/kgH2O)の推定値はどれか。
第114回国家試験 B4
Lambert-Eaton 症候群を合併する腫瘍として最も頻度が高いのはどれか。
第114回国家試験 B5
虐待が疑われる小児を診察した際の対応として適切なのはどれか。