平成29年度(第112回)医師国家試験問題|午後-19問〜午後0問

第112回国家試験 B26

86歳の男性。誤嚥性肺炎のために1週間入院し、経過は順調である。入院前から高血圧症で薬物療法を受けているが、それ以外の基礎疾患はない。認知機能は問題ない。日常生活動作は介助を必要としないが、筋力低下によって歩行が不安定で屋外は見守りが必要である。入院中はきざみ食にとろみをつけて提供し、嚥下訓練を施している。要介護度は要支援2である。82 歳の妻と2人暮らしだが、息子夫婦が隣接する市に住んでおり入院前から週に2、3回は様子を見に通っていた。 自宅への退院にあたり必要なのはどれか。

第112回国家試験 B27

28歳の女性。年前から口唇ヘルペスで3回の治療を受けた。歩行時の息苦しさを主訴に受診し、ニューモシスチス肺炎と診断された。ニューモシスチス肺炎の治療と同時に基礎疾患が検索され、HIV感染症と診断された。性交渉のパートナーは男性のみで特定の3人である。喫煙は 22 歳から10本/日。飲酒はビール350mL/日。 血液所見:赤血球468万、Hb14.7g/dL、白血球7,600(好中球60%、好酸球3%、好塩基球1%、単球8%、リンパ球28%)、CD4陽性細胞数180/mm3(基準800〜1,200)、血小板15万。血液生化学所見:総ビリルビン0.7mg/dL、AST68U/L、ALT128U/L、LD305U/L(基準176〜353)、尿素窒素15mg/dL、クレアチニン1.0mg/dL。免疫血清学所見:HBs抗原陽性、HBs抗体陰性、HBV-DNA陽性、HCV抗体陰性。 この患者の抗HIV治療薬の選択において最も重要なのはどれか。

第112回国家試験 B28

68歳の男性。複視を主訴に来院した。昨日の夕方、自動車を運転中に突然対向車が二重に見えるようになり、今朝になっても改善しないため受診した。 7年前から糖尿病の治療を受けている。眼位は、左眼は正中位、右眼は内転位をとっている。複視は正面視で自覚し、右方視で増強するが、左方視では消失する。 最も考えられるのはどれか。

第112回国家試験 B29

1歳10か月の男児。咳と喘鳴とを主訴に母親に連れられて来院した。昨日歩きながらピーナッツの入った菓子を食べていた時に、急にむせ込んで咳をし始めた。本日も咳が持続し喘鳴が出現したため受診した。体温 36.7 ℃。脈拍 108/分、整。呼吸数 30/分。SpO2 98 %(room air)。吸気時と呼気時の胸部エックス線写真を示す。 この患児にまず行う処置として正しいのはどれか。

第112回国家試験 B30

31歳の1回経産婦。妊娠 32 週日。性器出血を主訴に妊婦健康診査を受けている周産期母子医療センターに来院した。10 日ほど前にも少量の性器出血があり、3日間の自宅安静で軽快したという。本日自宅で夕食作りをしていたとき、突然、性器出血があり、慌てて受診した。第1子を妊娠 38 週で正常分娩している。 体温36.5 ℃。脈拍 88/分、整。血圧 102/62 mmHg。来院時、ナプキンに付着した血液は約 50 mL だった。腟鏡診で計 250 mL の血液および凝血塊の貯留を認め、子宮口から血液流出が続いているのが観察された。腹部超音波検査で胎児推定体重は1,850 g、羊水量は正常。胎児心拍数陣痛図で子宮収縮はなく、胎児心拍数波形に異常を認めない。経腟超音波像を示す。 対応として正しいのはどれか。

第112回国家試験 B31

83歳の女性。右大腿骨頸部骨折のため手術を受けた。手術当日の夜は意識清明であったが、手術翌日の夜間に、死別した夫の食事を作るために帰宅したいなど、つじつまの合わない言動が出現した。これまで認知症を指摘されたことはない。 この病態について正しいのはどれか。

第112回国家試験 B32

救急外来に日本語を話せない40歳の外国人女性が来院した。病院に勤務している外国人医師が英語で医療面接と身体診察とを行い、記載した診療録の一部を示す。 可能性の高い疾患はどれか。

第112回国家試験 B33

59歳の男性。左腎細胞癌の診断で腎部分切除術を受け入院中である。手術2時間後にドレーンから血性の排液があり、意識レベルが低下した。 JCSⅡ-20。脈拍152/分、整。血圧 56/42 mmHg。呼吸数 16/分。SpO2は測定できなかった。腹部は軽度膨満している。血液所見:赤血球 218 万、Hb 5.0 g/dL、Ht 18 %、白血球9,300、血小板 15 万。 次に行うべき処置として誤っているのはどれか。

第112回国家試験 B34

35歳の男性。黄疸を主訴に来院した。1週間前から全身倦怠感を自覚していたが、2日前に家族から眼の黄染を指摘されたため受診した。1か月前にシカ肉を焼いて食べたが一部生焼けであったという。 意識は清明。身長 174 cm、体重 70 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 76/分、整。血圧 128/76 mmHg。呼吸数 18/分。眼瞼結膜に貧血を認めない。眼球結膜に黄染を認める。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、圧痛を認めない。肝を右季肋部に2cm触知する。脾を触知しない。 血液所見:赤血球 451 万、Hb 13.8 g/dL、Ht 44 %、白血球 4,600、血小板 21万、PT-INR 1.0(基準 0.9〜1.1)。血液生化学所見:総蛋白 7.8 g/dL、アルブミン4.3 g/dL、総ビリルビン 4.5 mg/dL、直接ビリルビン 2.2 mg/dL、AST 406 U/L、ALT 498 U/L、LD 426 U/L(基準 176〜353)、ALP 486 U/L (基準 115〜359)、γ-GTP 134 U/L(基準8〜50)。免疫血清学所見:CRP 1.0 mg/dL、HBs 抗原陰性、HCV抗体陰性。腹部超音波検査で肝は腫大し胆囊は萎縮しているが、胆管の拡張はみられない。 対応として正しいのはどれか。

第112回国家試験 B35

65歳の男性。会社役員。間質性肺炎のために入院している。看護師から担当医へ、患者が咳で眠れないと訴えていることに加え、態度が威圧的であるという連絡があった。 患者へ治療方針を説明するにあたり担当医として適切でないのはどれか。

第112回国家試験 B36

36歳の女性。悪心と嘔吐とを主訴に来院した。1週間前から微熱、悪心および全身倦怠感を自覚していた。今朝一回嘔吐した。既往歴に特記すべきことはない。月経周期 30〜60 日、不整。最終月経は記憶していない。3週間前に市販のキットで実施した妊娠反応は陰性であったという。母親は糖尿病で治療を受けている。 身長 159 cm、体重 49 kg。体温 37.0 ℃。脈拍 72/分、整。血圧 102/58 mmHg。皮膚は乾燥している。腹部は平坦で、圧痛を認めない。 まず行うべきなのはどれか。

第112回国家試験 B37

21歳の男性。左示指の切創を主訴に来院した。飲食店のアルバイトをしている際に受傷した。 適用となる保険はどれか。

第112回国家試験 B38

50歳の男性。咳嗽を主訴に来院した。2か月前から咳嗽があり、他院で肺炎と診断され抗菌薬を処方されたが改善しないため受診した。喫煙は 40 本/日を 30年間。 意識は清明。身長 175 cm、体重 78 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 88/分、整。血圧126/80 mmHg。呼吸数 15/分。SpO2 96 %(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。 血液所見:赤血球 508 万、Hb 14.8 g/dL、白血球 5,600、血小板 25 万。血液生化学所見:総ビリルビン 0.6 mg/dL、AST 10 U/L、ALT 21 U/L、LD 425U/L(基準 176〜353)、尿素窒素 14 mg/dL、クレアチニン 1.2 mg/dL、CEA 2.9ng/mL(基準 5.0 以下)、SCC 1.2 ng/mL(基準 1.5 以下)、ProGRP 350 pg/mL(基準 81 以下)。CRP 0.3 mg/dL。胸部エックス線写真と胸部CTとを示す。気管支鏡下生検で肺癌と診断された。 肺癌の組織型として最も可能性が高いのはどれか。

第112回国家試験 B39

2歳の男児。発熱と呼吸困難のため救急車で搬入された。本日朝、38.8 ℃の発熱と呼吸困難とに両親が気付き救急車を要請した。 来院時の体温 39.8 ℃。心拍数120/分、整。呼吸数 28/分。SpO2 96 %(リザーバー付マスク5L/分 酸素投与下)。毛細血管再充満時間は1秒と正常である。呼吸困難は仰臥位で増悪し、座位でやや軽快する。下顎を上げた姿勢で努力呼吸を認める。嚥下が困難で唾液を飲み込むことができない。心音に異常を認めない。呼吸音では、吸気時に喘鳴と肋間窩の陥入とを認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。 最も優先すべきなのはどれか。

第112回国家試験 B40

22歳の女性。腹痛、嘔吐および発熱を主訴に来院した。 現病歴:午前6時ごろから心窩部痛を自覚した。痛み徐々に右下腹部に移動し、悪心、嘔吐および発熱が出現したため午前9時に救急外来を受診した。 既往歴:特記すべきことはない。 生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない。 現症:意識は清明。身長 153 cm、体重 48 kg。体温 37.6 ℃。脈拍 100/分、整。血圧 118/62 mmHg。呼吸数 24/分。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、右下腹部に圧痛を認める。下腿に浮腫を認めない。 検査所見:血液所見:赤血球 368 万、Hb 11.9 g/dL、Ht 36 %、白血球 9,800、血小板 23 万。血液生化学所見:尿素窒素 22 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL。CRP 5.2 mg/dL。腹部超音波検査と腹部単純 CT とで虫垂の腫大を認める。

直ちに手術は必要ないと判断し、入院して抗菌薬による治療を開始することにした。 ①抗菌薬投与の指示を出す際に、適切な溶解液が分からず薬剤部に問い合わせた。②末梢静脈へのカテーテルの刺入を2回失敗し、3回目で成功した。③抗菌薬投与前に、点滴ボトルに別の患者の名前が記してあることに気が付いた。④正しい抗菌薬の投与を午前11時に開始したところ、30 分後に患者が全身の痒みを訴え全身に紅斑が出現した。⑤抗菌薬を中止し様子をみたところ、午後2時までに紅斑は消退した。 インシデントレポートの作成が必要なのは下線のどれか。

第112回国家試験 B41

22歳の女性。腹痛、嘔吐および発熱を主訴に来院した。 現病歴:午前6時ごろから心窩部痛を自覚した。痛み徐々に右下腹部に移動し、悪心、嘔吐および発熱が出現したため午前9時に救急外来を受診した。 既往歴:特記すべきことはない。 生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない。 現症:意識は清明。身長 153 cm、体重 48 kg。体温 37.6 ℃。脈拍 100/分、整。血圧 118/62 mmHg。呼吸数 24/分。頸静脈の怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦で、右下腹部に圧痛を認める。下腿に浮腫を認めない。 検査所見:血液所見:赤血球 368 万、Hb 11.9 g/dL、Ht 36 %、白血球 9,800、血小板 23 万。血液生化学所見:尿素窒素 22 mg/dL、クレアチニン 0.9 mg/dL。CRP 5.2 mg/dL。腹部超音波検査と腹部単純 CT とで虫垂の腫大を認める。

その後の経過:腹痛は持続し、午後5時ごろから体温がさらに上昇し、悪寒を訴えた。体温39.3℃。脈拍124/分、整。血圧80mmHg (触診)。 この時点で直ちに行うべき治療はどれか。

第112回国家試験 B42

76歳の女性。息切れを主訴に来院した。 現病歴:1年前から息切れを自覚するようになり、3か月前から10 分程度歩くと息切れがするようになった。3日前に風邪をひいてから息切れが増悪して動けなくなったため、同居の娘に伴われて総合病院の呼吸器内科外来を受診した。 既往歴:糖尿病、高血圧症、慢性心不全(NYHAⅡ)、変形性膝関節症、骨粗鬆症および不眠で複数の医療機関に通院していた。半年前からこれらの医療機関の受診が滞りがちになっていた。 生活歴:娘と2人暮らし。日中、娘は仕事に出ている。摂食、排泄および更衣は自分でできるが、家事や外出は困難で、入浴は娘が介助している。喫煙は 15 本/日を 45 年間。飲酒歴はない。 現症:意識は清明。身長 158 cm、体重 42 kg。体温 36.6 ℃。脈拍 104/分、整。血圧 120/76 mmHg。呼吸数 28/分。SpO2 93 (room air)。皮膚は正常。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸部に甲状腺腫大やリンパ節を触知せず、頸静脈の怒張を認めない。呼吸補助筋が目立つ。心音に異常を認めない。呼吸音は両側の胸部に wheezes を聴取するが、crackles は聴取しない。腹部は平坦、軟。四肢に浮腫を認めない。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは 27 点(30 点満点)。 検査所見:胸部エックス線写真で肺の過膨張を認めるが、浸潤影や肺うっ血を認めない。心胸郭比は 53 %。胸部 CT で全肺野に低吸収域(low attenuation area)を認める。

副腎皮質ステロイドの内服と β アゴニスト吸入の外来治療を4日間行い、呼吸器の急性症状は改善し SpO2 は 96 %(room air)となった。しかし、看護師から「これからも禁煙するつもりはないけど、病院には通わないといけないのかね」と患者が話していると聞いた。 この時点での患者への対応として最も適切なのはどれか。

第112回国家試験 B43

76歳の女性。息切れを主訴に来院した。 現病歴:1年前から息切れを自覚するようになり、3か月前から10 分程度歩くと息切れがするようになった。3日前に風邪をひいてから息切れが増悪して動けなくなったため、同居の娘に伴われて総合病院の呼吸器内科外来を受診した。 既往歴:糖尿病、高血圧症、慢性心不全(NYHAⅡ)、変形性膝関節症、骨粗鬆症および不眠で複数の医療機関に通院していた。半年前からこれらの医療機関の受診が滞りがちになっていた。 生活歴:娘と2人暮らし。日中、娘は仕事に出ている。摂食、排泄および更衣は自分でできるが、家事や外出は困難で、入浴は娘が介助している。喫煙は 15 本/日を 45 年間。飲酒歴はない。 現症:意識は清明。身長 158 cm、体重 42 kg。体温 36.6 ℃。脈拍 104/分、整。血圧 120/76 mmHg。呼吸数 28/分。SpO2 93 (room air)。皮膚は正常。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。頸部に甲状腺腫大やリンパ節を触知せず、頸静脈の怒張を認めない。呼吸補助筋が目立つ。心音に異常を認めない。呼吸音は両側の胸部に wheezes を聴取するが、crackles は聴取しない。腹部は平坦、軟。四肢に浮腫を認めない。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは 27 点(30 点満点)。 検査所見:胸部エックス線写真で肺の過膨張を認めるが、浸潤影や肺うっ血を認めない。心胸郭比は 53 %。胸部 CT で全肺野に低吸収域(low attenuation area)を認める。

この患者の療養を支援していくために重要性が低いのはどれか。

第112回国家試験 B44

74歳の女性。持続する前胸部痛のため来院した。 現病歴:本日午前7時45分、朝食の準備中に突然、咽頭部に放散する前胸部全体の痛みと冷汗とを自覚した。意識消失、呼吸性の痛みの変動および胸部の圧痛はなかったという。ソファに横になっていたが症状が持続するため、家族に連れられて自家用車で午前8時15分に来院した。症状を聞いた看護師が重篤な状態と判断し、直ちに救急室に搬入した。 既往歴:特記すべきことはない。 生活歴:特記すべきことはない。 家族歴:父親が 80 歳時に脳出血で死亡。母親が 84 歳時に胃癌で死亡。 現症:意識は清明。身長 158 cm、体重 56 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 92/分、整。血圧 120/80 mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 99 %(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。直ちに施行した心電図を別に示す。

最も可能性が高いのはどれか。

第112回国家試験 B45

74歳の女性。持続する前胸部痛のため来院した。 現病歴:本日午前7時45分、朝食の準備中に突然、咽頭部に放散する前胸部全体の痛みと冷汗とを自覚した。意識消失、呼吸性の痛みの変動および胸部の圧痛はなかったという。ソファに横になっていたが症状が持続するため、家族に連れられて自家用車で午前8時15分に来院した。症状を聞いた看護師が重篤な状態と判断し、直ちに救急室に搬入した。 既往歴:特記すべきことはない。 生活歴:特記すべきことはない。 家族歴:父親が 80 歳時に脳出血で死亡。母親が 84 歳時に胃癌で死亡。 現症:意識は清明。身長 158 cm、体重 56 kg。体温 36.5 ℃。脈拍 92/分、整。血圧 120/80 mmHg。呼吸数 18/分。SpO2 99 %(room air)。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。直ちに施行した心電図を別に示す。

検査所見(午前時 25 分の採血):血液所見:赤血球 416 万、Hb 12.6 g/dL、Ht36 %、白血球 9,800、血小板 20 万、D ダイマー 0.7 μg/mL(基準 1.0 以下)。血液生化学所見:AST 26 U/L、ALT 30 U/L、LD 254 U/L (基準 176〜353)、CK 118U/L (基準 30〜140)、尿素窒素 16 mg/dL、クレアチニン 1.6 mg/dL、血糖 98mg/dL、心筋トロポニン T 陰性。胸部エックス線写真で異常を認めない。 緊急処置の準備中、突然、うめき声とともに意識消失した。呼吸は停止しており脈を触れない。胸骨圧迫とバッグバルブマスクによる換気を開始した。このときのモニター心電図を別に示す。 この患者に直ちに行うべきなのはどれか。